button eastern youth @ Shibuya Quattro (10th Sept. '99)

めろめろです


 いいバンドやミュージシャンや... アルバムは、たいてい、友人や仲間から伝わってくる。それはいつものことで、今回もそうだった。

 何度も言われていたんですよ。スマッシュの若者達に... 
「いいですよ、イースタン・ユースは。絶対に見てくださいね」
 そう言われて受け取ったのが、彼らの98年のアルバム「旅路ニ季節ガ燃エ落チル」というアルバムだった。

eastern youth  といって、そのアルバムを聴いて、衝撃を受けたわけでもない。これは、きわめて個人的なことなんだけど、毎日毎日送られてくるカセット・テープやCDに囲まれていると、落ち着いてアルバムなんぞ聴けなくなってしまうのだ。もちろん、一般的な音楽ファンにすれば、贅沢な話だとは思うし、こっちの姿勢が「不真面目だ」と言われても返す言葉はない。

 が、同時に、いい音楽との出会いは計算されて「ある」ものだとも思ってはいないし、本当に感動したり、人に伝えたりしたくなるものはどこかで必ず最もいい形で出会うということも信じている。おそらく、あのアルバムを受け取った時には、そのタイミングが合わなかったんだろう。

 それはフジ・ロックでも同じことだった。今回のフジ・ロックでナワンさんやロリー・マクロード、フィッシュといった素晴らしいミュージシャンとの出会いがあった。彼らの素晴らしい演奏に接し、アルバムを聴いて、どんどんその音楽にはまっていくようになっている。

 本当はあの時、見たいバンドはいっぱいあった。プライヴェートで、なぜか幾度も出会っているUAのライヴも見てみたかったし、レイ・デイヴィスも見たかった。ロンドン在住の友人で、ORBのヴォーカリストとして、「来日した」大森アキも見たかった。が、仕事で会場に行っていることもあり、結局、みたいと思ったバンドはほとんど見ることができなかったというのが実状だ。もちろん、その中にイースタン・ユースも含まれている。

eastern youth  あの時のレポートはインターネット班のバイリンガル・スタッフ、スコットが書いてくれている。彼の文章を読んでいても、その興奮が伝わってくるし、それは現場でも聞かせてくれたものだ。「もし、チャンスがあったら、絶対に見る」と心に決めたのはその頃じゃなかったろうか。そうして出かけたのが9月10日の渋谷クアトロだった。

「あれ、珍しいですね、日本のバンド見に来るなんて...」
 そう言ったのはスマッシュの誰だったよく覚えてはいないけど、日頃、洋楽を中心にチェックしているところからそんな言葉がでたんだろう。でも、実を言えば... というか、洋楽だろうが、邦楽だろうが... はたまた、宇宙の彼方からの音楽だろうが、いい音楽はいい音楽。それだけのこと。実際、日本のアーティストの音楽で人生を変えられたこともある。そのあたりは私の個人的なホームページ、The Voice Of Silenceをチェックしてもらえば一目瞭然だ。いずれにせよ、「頭と身体をガ〜ンとぶん殴られるような衝撃を求めている」ことには違いない。それを期待して出かけていったのだ。

 でも、これほど見事にはまるとは思っても見なかった。なにせ1曲目でKOなのだ。アルバムをほとんど聴いていないのに、初っ端の曲「夏の日の午後」で唖然としてしまうのだ。

eastern youth  常識的には考えられないかもしれないが、音楽雑誌も読まず、ラジオも聴かず、テレビの音楽番組なんてほとんど見ることもない... そんな生活をしているのに、この曲を覚えている。不思議だと思う。もし、聞いているとすれば、おそらく、いつだっけかに開かれたフジ・ロック・フェスティヴァルの打ち上げパーティで見たライヴの演奏だろう。WOWWOWで(確証はないけど、おそらくそのはずだ)放送されたライヴの模様がちらっと記憶に残っていたのだが、その時に演奏していた曲じゃなかっただろうか。

 いずれにせよ、写真を撮影しなければいけないのに、演奏が進むに従って、ステージ脇のフォトピットで呆然と立ちすくんでしまったというのか... なにか、得体の知れないとんでもないエネルギーが演奏している3人から発せられているという感じで、なにもできなくなってしまったというのが、本当のところだろう。

 そんなライヴの様子をどんな言葉で描けばいいんだろう... この原稿を書くまえに何度もそれを考えていたように思える。例えば、「もし、魂波... なんて言葉があるんだったら、それがステージから止めどもなく発せられていた...」なんて、浮かんだものだ。アルバムを見ると、ヴォーカルではなく、ヴォイスとクレジットされている吉野寿の発するとんでもないエネルギーが頭と身体をぶん殴るように襲いかかってくるのだ。その迫力と来たら... あれは、ハッキリ言って、両面びんたに等しい。具体的になにかはわからないのだが、「なにか」がヒシヒシと伝わってくる。

eastern youth  おそらく、若いファンには知られていないだろうけど、この時、三上寛なんてアーティストを思い出したりもしていた。青森県北津軽郡小泊村出身の... 小林旭を目指して歌い出したという... そんなアーティストだ。なにやらどろどろとした日本的な... 演歌にも通じる世界をペースに生ギターで歌い出していた彼の初期の姿が思い浮かんだり.... 特に「誰を恨めばいいんでございましょう」という、パンク・ジャズ・フォーク的な名曲が頭をかすめたりもしたものだ。

 でも、イースタン・ユースには、三上寛のどろどろした部分はない。というより、もっとドライで、第三者的な情景描写の方が主になっているような気がするけど... 当然ながら、こんなこと、ライヴを聞いているその瞬間に感じたものではない。あのあと、何度も何度も彼らのアルバムを(10月発売の新譜も含めて)聞いて感じたことなんだけど... それでいて、ライヴにはすごく「私」的な魂を感じる.... これっていったいなになんだろうか。

 それがなにであれ、それこそがいい音楽だけが持っている「なにか」なんだろう。彼らの発する言語としての言葉はまるで理解できなかった。が、その存在が、あるいは、その「ありよう」が伝える言葉は一字一句、全てが自分の体の中にしみこんでいったような気がする。だからこそ、彼らのアルバムをむさぼるように聴き、こうやってなにかを書こうとしているんだろう。ハッキリ言って、私、イースタン・ユースにめろめろになっている。

eastern youth  あと、忘れてはいけないのが、そんな彼らの演奏を目の当たりにしているオーディエンス。あの熱気は幾度も経験している。今からさかのぼること、15年前に経験したビリー・ブラッグに始まって、ウォーターボーイズからレヴェラーズ.... 最近ではベン・ハーパーといったところだろうか。音楽のジャンルはめちゃくちゃかもしれないが、こんなアーティストに共通するのが「いい音楽」だと思う。それを感じさせてくれたオーディエンスにも感謝したい、そんなライヴがあの日だったように思える。

 なんでも、この渋谷クアトロのライヴは数時間でソールド・アウトになったとか。あと、東京では12月の赤坂ブリッツでのライヴが控えているらしいが、おそらく、こっちもわずかの時間でソールド・アウトになるんだろう。でも、なにがなんでも、また、彼らのライヴを体験したい... と、そう思っている。

 ちなみに、この日(9月10日 渋谷クアトロ)のセット・リストは以下の通り。
  • 夏の日の午後
  • 徒手空拳
  • 泥濘に住む男
  • 男子畢生危機一髪
  • 葉桜並木
  • 雨曝しながら濡れるがいいさ
  • 何処吹く風
  • たとえば、ぼくが死んだら
  • 青すぎる空
  • ----アンコール----
  • 未ダ未ダヨ
  • いずこへ


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