button Mishka @ Shibuya Quattro (6th Aug. '99)

まったりヴァイブ...


Mishka  ひょっとして、ミシカの周りでは時間の流れ方が違うんじゃないだろうか...

 彼を見ていると、どうもそう思えてしまうのだ。グラストンバリーでもそうだったし、フジ・ロックでもそうだった。いつものんびり歩いて、周囲のことなんてあまり気にせずにゆっくりとギターをとって、ゆっくりと歌っている。客がのるとかのらないとか... そんなこともあまり気にはしていないようで、ともかくのんびりと歌い、のんびりと演奏を終えるといった感じなのだ。おそらく、それはバミューダという彼の育ったカリブ海の島、あるいは、ボートで生活していたという背景のなせる技なんだろう。

 8月6日の渋谷クアトロ... 聞けば、フジ・ロックが終わるまで、チケット・セールスはあまり芳しくなかったということだ。ところが、ふたを開けてみるとほぼ80%が埋まるという感じで始まったのがこのときのライヴだ。ちょっと観客をチェックしてみればわかるのだが、フジ・ロック・フェスティヴァルのリスト・バンドをつけた人の多いこと。どうやら、今年のフジ・ロックがあまりに楽しかったので、その余韻のなかでこのライヴを楽しもうという人が集まってきたんだろう。しかも、3500円という良心的なチケットの値段もそれに拍車をかけていたように思える。

Litle Tempo  サポート・アクトとして登場したのは2グループ。残念ながら、最初のグループは見逃したのだが、以前から気に入っていたリトル・テンポは見逃してはいない。スティール・ドラムやピアニカ、あるいはサックスあたりを使ったディープで、ちょっとアンビアントで、しかもアルファー波をそこはかとなく刺激するレイドバックしたレゲエ。これがいいのだ。オーガスタス・パブロあたりから、ちょいとジャズのエッセンスも覗かせながら、ルーツに根ざしたサウンドを作り上げている彼らは、まさしくオリジナルなレゲエ・ユニット。これほどまでにユニークなサウンドを作り出したバンドは世界中を旅してもなかなか見つからないだろう。

 このリトル・テンポのアルバムが発表されているので、そのあたりのサウンドに関しては実際にチェックすることをおすすめする。エディ・リーダーやLKJをフィーチュァーした今回のアルバムは、間違いなく、今年のレゲエ・アルバムで最高傑作の一枚になるはずだ。

Mishka  さて、そのリトル・テンポに対して、強力なレゲエ・ヴァイブを持ちながらもレゲエではないのがミシカ。見事なドレッドロックやステージに登場すると「ジャー、ラスタファーライ...」と叫ぶあたりに、レゲエがどれほど重要な要素を彼の音楽に与えているかはわかろうというものだし、レゲエの曲も数曲ある。が、それでもレゲエではない。その微妙な感触が彼の音楽の魅力といっていいだろう。

 聞けば、大阪でのライヴも成功し、かなり気分をよくしての東京公演。バンドのメンバーもリラックスしているようだ。例によってミシカ本人はステージに上がる前から宙を見つめるようなまなざしで、しきりに声にならない声で歌っている。これはフジ・ロックの時も同じで、突然言葉にならない叫びのような声で歌い出すのがミシカ。会ったこともない人とも気さくに話しかけ、吸い込まれるような彼の瞳がいつも穏やかにほほえんでいる。まるで仙人のような人だ。

 ライヴは例によって「ジャー・ラスタファーライ」と叫んででライヴが始まるのだが、誰もがまず最初に気づくのが彼の声のがあまりにボブ・マーリーに似ていること。その感触はボブがアクースティック・ギターで演奏していた「レデンプション・ソング」のタッチに似ている。実際、ミシカが最初の数曲を終えて、アクースティック・ギターで3曲ほど演奏しているのだが、このとき、かすかにボブ・マーリーの影を見た人もいたんじゃないだろうか。

Mishka  が、残念ながら、ミシカにはボブのようなカリスマは期待できないし、加えていえば、どんなミュージシャンであれ、ボブ・マーリーと比較するのはかわいそうだ。それに、ミシカが歌っている歌にはそれほどラディカルなエッジはない。それよりももっとレイドバックした、まったりとした音楽。それはそれで大きな魅力であり、もちろん、それを否定することはできない。

 逆に言えば、レゲエの曲よりもレゲエ的であって... ところが。微妙にレゲエでない曲の方が彼の魅力をうまく伝えているように思えたものだ。特にラジオを中心にちょっとしたヒットを記録していた「Give You All The Love」や「Happy」、それに「Out The Door」あたり... そんな歌の数々に心が和むという感じかな。

 まぁ、レコード会社の宣伝が「新しい時代のボブ・マーリー...」とかなんとか、そんなニュアンスで彼のことを打ち出していたように思えるのだが、ミシカはもっと地味な存在で、それよりも初期のジミー・バフェットからジェイムス・テイラーとかのラインに並ぶカリビアンのアーティストといった方が正解だろう。しかも、忘れてほしくないのは、あまりにレゲエの勢力が強かったせいで無視されているそういったアーティスト達。実際、ジャマイカにも奥底にレゲエのヴァイブを持ちながら、フォーキィなタッチの音楽を演奏しているシンガー&ソングライターが数多く存在する。できれば、ミシカがそういったアーティストに新たな扉を開けるような存在になってほしいと思う。そんな期待を持たせてくれたのがこの日の演奏じゃなかったろうか。

- setlist -
Lonely
One True
Stay In Time
Happy
Another Like You
Righteousness
Give You All The Love
Mystic Music
Out There
Bring A Man Down
Rain Comes Down
Girl You Know
-------
Grey & Hazy


report and photos by hanasan

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