buton Stereophonics @ Akasaka BLITZ (12th Jun. '99)

ステレオなフォニックス

「お久しぶりっす!」

 ステレオフォニックスとは、豊洲でのフジロック'98以来の再会だ。 「去年の10月に単独公演があったじゃん!」と言われるかもしれないが、自分の中では、フジロックの出演アーティストの記憶というものが鮮烈かつ鮮明に脳裏に刻み込まれすぎたため、その後のいずれのバンドの単独公演も、とても見に行く気になれなかった.。(・・・・ごめんなさいスマッシュさん (笑)) だから、このステレオフォニックスに面と向かって挨拶するのもあの暑い夏の日以来のことになる。

 あの日から間もなく1年になろうかというこの夜、自分はあの日と同様にまたしてもすべての瞬間を脳裏に刻もうと頑張った。 ライヴでもたまにしか着用しない近眼メガネもスタンばった。 やがて客電が落ちた。 胸板くっきりのケリーが出てきた。 メガネな自分は前へとじわじわ突き進んだ。 「Roll Up And Shine」が始まった。 ステュワートはドラムスティックをくるくる回していた。 ベースのリチャードは猫背でゆらゆらしていた。 「The Bartender And The Thief」で爆発する多くのオーディエンスの姿が見えた。

・・・・・・・がしかしこの夜の映像イメージはここですべて途絶えてしまっている。なぜならここで自分は、大事なメガネを自ら外してしまったからだ。よって極端に視力の下がってしまった自分の目には、ぼんやりとしかステージ上のメンバーの姿が映らなくなった。これはすべてのものを鮮明なイメージとして残すことに躍起になっていたフジロックのステージ中には考えられなかったことだ。

 でも自分はそんなリスクを犯してまでなぜにメガネを外そうとしたのか? それは今のステレオフォニックスの「音」をよりリアルに感じたかったからだ。 そしてさらにリアルなフォニックスを感じるために自分が採った方法・・・・・・・・・それは「ライヴ」であるにも関わらず、両目を閉じてしまうことだった。 つまり視覚をすべて犠牲にして、彼らの叩き出す音に全神経を傾けることであったのだ。 そしてそこに生まれたのは、暴れまくるオーディエンスが介在しない、「自分」と「ステレオフォニックス」という1対1の関係と、自分のためにこの音が捧げられているかのような最高級に贅沢な感覚。 まさにステレオフォニックスの音を独り占めにしているかのような、そんな大いなる勝手な勘違い。 しかし閉じられたまぶたのすぐ後ろ側には、ケリーが、ステュワートが、そしてリチャードが、歌い、叩き、掻き毟る姿がしっかりと浮かんでいる。 独り占めした音から自ら作り出す自分だけのライヴ空間はとてもダイレクトなグルーヴに溢れている。 周りはどうだったか知らないけれど、自分の為だけに届けられたその強靭な音に身を委ね、よりクリアに耳を捕らえるケリーのギターカッティングと、時々狂うリズムとに一喜一憂しながら、とにかくメガネをかけたままでは到底無理だったであろうぐらいに視界を閉じたまま踊りまくった。 目を開けるたびに隣のオーディエンスが違う人になっていることに気が付きながらも・・・・。

 後で聞いた話ではドラムスティックが自分の近くまで飛んできていたらしい。 そしてケリーが自分でギターを破壊しかけたらしい。 なおかつ興奮したオーディエンスが物も投げていたらしい。 でも今の自分にそんなことはどうでもいい。 フジロックでは「みんなのステレオフォニックス」だったものが、今夜だけは「自分だけのステレオフォニックス」になっただけで十分に満足だ。



report by 石崎勝広

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