Sandra Cross with Alan Weekes Band in London (6th Jun '99)
ロンドン初のジャズ・レゲエ・ライヴ、好調な滑り出し! - part1 -
これまでジャズとレゲエを融合しようとする試みはいくつかあった。ニーナ・シモンの「バルティモア」もそうだろうし、スタッフのギタリスト、エリック・ゲイルもジャズ・レゲエのアプローチを見せている。それにグローバー・ワシントン・ジュニアがマーカス・ミラーをベースにボブ・マーリーの「ジャミング」をカヴァーしていたり... おそらく、過去の音楽の歴史を厳密にチェックしていけば、その類がいっぱいでてくるだろう。
が、いずれにも感じるのはジャズをベースにレゲエのリズムを借りているといった感じで、両者を融合したものではなかったように思えるのだ。
ところが、レゲエの歴史をたどっていけば、実は、そのルーツ、スカが生まれたとき、それはなによりもジャマイカン・ジャズであり、その発展型であるレゲエがその本質にジャズ的な部分を多分に抱えていることに気がつく。いわば、そういった部分を再評価するような形で始まったのが10年ほど前に続々と生まれてきたスカのコンピレーション・アルバム。そして、それを受けるように生まれたのがロンドンをベースに活動する最強のバンド、Jazz Jamaicaだった。彼らこそがジャマイカ音楽が抱えるジャズ的な部分にスポットを当て、ルーツに根ざしながらスカやレゲエに新しいアプローチを試みようとした先駆者と言っていいだろう。
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その後、モンティ・アレキサンダーやアーネスト・ラングリン、あるいは、ディーン・フレイザーが、アイランド・レコードから同様の意図を持つアルバムを発表していくのだが、そのいずれもがインストゥルメンタルだったのに対し、ヴォーカルを中心にそんなアプローチを試みたのが、ジャズ・ジャマイカのギタリスト、アラン・ウィークスとドラマーのケンリック・ロウ。いわば、そんなプロジェクトのヴォーカリストとして選ばれたのがサンドラ・クロスだった。
そのプロジェクトの結果として生まれたのが96年のアルバム「Just A Dream」と98年の作品「Dreams Come True...」、そして、そのサイド・プロジェクトとして浮上したのが両アルバムから3曲ずつセレクトされて生まれたリミックス・アルバム「Dreamiz Vol.1」(99年)だった。
いずれも日本だけでのリリースだったのだが、やっとロンドンでもこのプロジェクトが日の目を見ることになった。そこで実現したのが今回のツアーだ。まず6月に発表されたのが「Just A Dream」。サンドラ自身の要望もあって、日本盤とはジャケットを異にしているのだが、アルバムの内容は全く同じだ。それに対してNew NationやVoiceといったアフロ・カリビアン系の大手の新聞が好意的な記事を掲載。前者は1ページのインタヴュー記事を取り上げ、後者は「Event Of The Week」として彼らのライヴを取り上げている。加えて、ロンドンの「ぴあ」と言えるTime Outはreggaeセクションではなく、Jazz&Latinセクションにこのイヴェントをピックアップし、「お勧め」の印である星マークがつけられている。すでに日本ではレゲエ不振の中にあって10000以上のセールスを記録しているのがサンドラの両アルバム。いわば、ある種ジャス・レゲエが「受け入れられている」という印象を受けるのだが、ヴォーカルを中心としたジャズ・レゲエのリリースは、イギリスではこれが初めてだ。
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今回のライヴのツアー・メンバーは、このサウンドの要ともなっているギタリスト、アラン・ウィークスとドラムスのケンリック・ロウ。いずれも、やはりジャズとカリビアン・ミュージックの接点を探るような活動を続けているバンド、ジャズ・ジャマイカの主要メンバーだ。そこに、やはりジャズ・ジャマイカのメンバーで、アスワドのホーン・セクションとして長い活動を続けていたサックス&フルートのマイケル・バミー・ローズがここに加わっている。ベースはDoradoレーベルなどで活動するピーター・マーティン、そして、ピアノはトレヴァー・ワトキス。ここにアート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズでも演奏していたこともあるレニー・エドワーズという布陣だ。
さて、ロンドンでのライヴの初日は6月4日。カリビアンのカーニヴァルで有名なノッティングヒル・エリアにあるTavernacle。インディ・レーベルからのアルバム発売ということもあり、また、ロンドンでは5年近くのブランクがあったということもあり、それほど多くのオーディエンスは期待できない。が、どれほど多くのオーディエンスが集まってきたかではなく、全く新しいコンセプトを持ったレゲエがいかに受け入れられるかということ重要なのだ。
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ミュージシャンたちがかなりナーヴァスになっていたのは確かだろう。なにせ、このサウンドがロンドンにお目見えするのはこれが最初。実際、「どんな反応がでるか... 気になっているんだ」と語っていたのがドラムスのケンリックだ。が、インストゥルメンタル・ナンバー、ジャズの古典「サンフラワー」で幕を開け、ラテン・ベースの「テキーラ」、そして、2枚目のアルバムの巻頭を飾る「ロンリー」と、演奏が進んでいくに従って固さもほぐれ、彼らがグルーヴに乗り出しているのがわかる。
そして、まるで流れるように「ロンリー」から「クライ・ミー・ア・リヴァー」のイントロに入り、ここでサンドラが登場する。いわば、ダイナミックでシャープなジャズ・レゲエのインストから、クラッシーでエレガントなジャズ・レゲエにここで雰囲気を変えるのだが、その流れの美しいこと。
もちろん、サンドラにも固さはある。なにせ5年ぶりのロンドンでのライヴ。しかも、以前とは全く違ったラヴァーズ・ロックのサウンドにチャレンジしているのだ。そのせいか、「枯葉」ではちょっとしたミスを犯してしまったりもしている。が、「ユー・アー・ライング」といったオリジナル・ナンバー、あるいは、マーヴィン・ゲイで知られる「I Want you」あたりで、彼女がのり始めているのがわかるのだ。後者では、突然「ベースだけにして!」と叫んで、「う〜ん、これよ、これ。昔のレゲエ!」といいながら、ベースだけでほぼ全曲を歌ってしまったこともある。こうなると完全にサンドラのペースだ。
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report and photos by hanasan
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The official site
Sandra Cross
unknown
The latest album

"Without Vertigo" (UK import)
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