ザ50回転ズ @ リキッドルーム恵比寿 (20th May. '10)
新しい季節への助走
ひとつの季節を終わらせて、次の章に入っていく……、2度目のアンコールを終えて、モット・ザ・フープルの「ロックンロール黄金時代」が会場に流れ、まだまだ帰らないお客さんたちと共に興奮が残るフロアで、そう感じた。
2009年1月以来、CDを出していないながらも、ツアーやフェス出演で、ステージでの存在感は発揮していたザ50回転ズにとって、久しぶりになる東京での単独公演である。会場の恵比寿リキッドルームには、着火したらすぐに燃え上がりそうなくらい熱いロックンロール好きたちが集まった。ライヴを重ねていたことで根強くいるファンたちの気合いも入り、バンドがいつものようにドクター・フィールグッドの"Riot in Cell Block No.9"が流れて登場すると、すぐに歓声が沸き上がる。
そして「ロックンロール・マジック」から始まった。「あいつはいつでも最高だぜ」と歌うように「あいつ=ロックンロール」への愛をストレートに表し、このライヴ全体が歌のように「いつでも最高」なロックンロールを浴びる場になっていたのだ。そして、これまでなかなか新作を出せない欲求不満がエネルギーとなったような迫力があった。またこの日は、珍しい選曲も多く、「ぬけがらロック」「夢ならいいのに」「無実の男」や「太陽のムハ」など、久しぶりか、初めて聴く曲もあった。特に「太陽のムハ」をライヴで演奏したのは2回目だとのこと。それとマミーズのカヴァーで"The Ballad Of Iron Eyes Cody"も演奏された。
途中でアコースティック・セットになり、ホラー風のSEが流れて「ゲゲゲの鬼太郎」。あえてオリジナルに忠実なアレンジで演奏してから、テンポアップさせる遊び心をみせる。「Oh! All Night Long(オー!オール・ナイト・ロング)」のアコースティック・ヴァージョン、バンジョーを持ち出して、「おおスザンナ」の早弾きに挑戦したり、「酔いどれマーチ」そして、西岡恭蔵の「プカプカ」をカヴァー。ヴォーカルはダニー、ドリー、ボギーの順にとる。以前も単独のライヴでは高田渡など70年代のフォークを好んで取り上げるところに、彼らのもうひとつのルーツを感じさせる。
アコースティックセットの最後はダニーが「大切な歌」という「故郷の海よ」だった。ダニーが素直に故郷の海、山、町をノスタルジックなメロディで歌い、そこにドリーがきれいにハモるところが、この日のハイライトだったかもしれない。
そしてエレキギターに戻って、「演歌は日本のブルースです」と「天王寺エレジー」。ささくれだったギターが耳に突き刺さるので響きは間違いなくパンクでありながら演歌として成り立ってしまう。逆境でも立ち向かっていくことを宣言した「グローリー、グローリー」がこのライヴに至るまでの彼らの姿と重ね合わせて泣けてしまった。
激しい曲からやさしいアコースティックな曲まで何でも揃えているのが彼らの強みで、思い切り暴れたり、じーんと泣ける場面もある。パンク、ロックンロールが切り口ではあるけど、音楽の豊かな鉱脈までつながっているのだ。単独のライヴだとこうした面がいかんなく発揮される。ライヴ終盤にかけては定番曲が続き、「Thank You For Ramones(サンキュー・フォー・ラモーンズ)」、勢いがありすぎてめちゃめちゃだった「50回転ズのテーマ」、そして「おさらばブギウギ」で本編を締める。
アンコールは「We Are The Kids(ウィー・アー・ザ・キッズ)」と「Youngers On The Road(ヤンガーズ・オン・ザ・ロード)」だった。後半からここまでモッシュが発生して、ダイヴァーが多数。最高潮に盛り上がっていった。そしてバンドが去っていき、客電が点いたにも関わらず、さらに演奏を要求する声が止まない。その拍手と歓声に応えるべく再びステージに戻り「Mr.1234man」。この一体感はこのバンドをしっかりと支えてきて、次につながっていくものだということが伝わったライヴだった。
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report by nob and photos by ryota
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