バロネス @ 渋谷オーイースト (6th Mar. '10)
漢の熱
大阪、名古屋と堂々たるステージを披露した、アイシスとバロネスによるカップリング・ツアーもいよいよこの東京公演を持って幕を閉じる。今のロック界を独自の視点とサウンドで切り開いているこの2バンドのライヴは先に名古屋で体感したが、言葉で表すことが陳腐に思えるほど素晴らしいものであった。 最終公演となった東京の渋谷オーイーストは名古屋に比べると、5〜6倍ぐらいに達していそうなお客さんの数(しかも、それが一説によると野郎率95%とか)が最初に印象に残ったが、その観客を前にした両雄のパフォーマンスは各々の独自性を改めて突きつけると共に、圧巻の内容。会場に集まったすべての人の胸のうちに、確かな感動を刻み込んだのであった。
まず、この日も先手で仕掛けるバロネスが、遅れることなく(むしろ早かったような)定刻に登場。名古屋と同様に、咽び泣き叫ぶツインギターの掛け合いでボルテージを徐々に高める"ブルベッドズ・サーム"、爆音が奇怪にうねりながら怒涛の展開を綴っていく"ザ・スイーテスト・カース"の連撃をぶちかまし、ショウをスタートさせる。いきなり豪快に炸裂したその音塊に、静まり返っていた会場は、早くも熱い歓喜を覚えることになった。野生的な雄叫び、力強く刻まれる勇壮なリフ、的確でありながらも獰猛なリズム・・・。バロネスの迸る熱波がステージから客席へ届くたびに、異様な興奮が体中を血走っていく。まるで物凄い濁流に体を押し流されているかのように。また、名古屋と比べると、ハードコアっぽい強面な彼等の風貌もさらに精悍さを増しており、随分と気合が入っている印象を受けた。
その後も、心地よい昂揚感が駆け抜ける"ジェイク・レグ"、原始から未知へと時計の針を進めて行くかのような展開が記憶に刻まれる"イーサック"、激しいテンポチェンジで獰猛に畳み掛ける"ザ・バーシング"と激性と知性を同居させた曲が立て続けに披露され、ショウは猛烈にヒートアップ。ストイックに鍛え上げた"ライヴ力"はこの日も当然ながらに健在で、彼等の魅力が余すところ無く伝わっていた。生々しい気迫が聴き手の精神を駆り立てたことによる、あの凄まじい盛り上がり具合は、その何よりの証拠だろう。
時には地を揺らす重低音を掻き鳴らしながら攻め、時にはメロウなグルーヴで琴線を揺らし、時にはキャッチーに盛り立てる。そのどれもが核として機能する質の高さはさすがの一言だが、ストーナー張りの砂埃にまみれたリフも、70年代辺りのサイケデリック感も、男の哀愁や泣きも、摩訶不思議な幻想性すらも用意されている。ここまで多彩なジャンルの横断と性能の良いフックが用意されていることにも驚きを隠せない。バックグラウンドの豊富さもさることながら、それをまたコンパクトにまとめ、聴かせてしまうサウンドのデザイン力は本当に見事だ。名古屋のレポでも記述したが、"ヘヴィロック+プログレ"という凡庸な例えでは到底辿り着けない、独自の美学が貫かれている。それがまた、アート・メタルとも評される崇高さをも漂わせる要因になっている。
アメリカの土壌をブルージーな音色で包んだインスト"オーギーチー・ハームナル"、爽快さをも詰め込んだ斬新で異型のロックチューン"ア・ホース・コールド・ゴルゴダ"への繋がりは今宵も見事であったし、男臭い泣きが徐々に胸の鼓動を高めていく"ザ・ナッシング"におけるフィナーレも素晴らしかった。この4人の男ならぬ"漢"たちによるステージは、とても熱くて、壮観。僕自身、名古屋を確実に上回る興奮に体中が埋め尽くされていた。アイシスの前座という形で、バロネスを見れるのは本当に贅沢だと思った次第。終演後に、しきりに感謝の言葉を口にしていたVo&G.のジョン・ヘイズリーも印象的で、フルセットでの公演を早くも目撃したくなった。これから始まるというマストドンとの共演を羨ましく思いながら、次回の来日を楽しみにしている。
-- Set List --
Bullhead’s Psalm / The Sweetest Curse / Jake Legs / Isak / The Birthing / O’er Hell And Hide / Horse Called Golgotha / Swollen And Halo / The Gnashing
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report by takuya and photos by naoaki
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mag files : Baroness
漢の熱 (10/03/06 @ Shibuya O-East) : review by takuya, photos by naoaki
photo report (10/03/06 @ Shibuya O-East) : photos by naoaki
壮絶の向こう側を知らしめる共演 (10/03/04 @ Nagoya Club Quattro) : review by takuya, photos by takumi
photo report (10/03/03 @ Shinsaibashi Club Quattro) : photos by takumi
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