ティンテッド・ウィンドウズ @ 渋谷デュオミュージックエクスチェンジ (15th Jan. '10)
オーサム!
最近、アメリカでは「Awesome(オーサム)」という言葉がよく使われるらしい。本来は「恐ろしい」とか「すさまじい」という意味を持つ単語だが、俗語では「すばらしい」とか「最高」などを表す時に用いるようだ。日本語でいうところの「やばい」みたいなものか(もう古い?)。こういうのは一度覚えると気になるもので、ユーチューブやツイッターを眺めていても、やたらと「Awesome!」が目につく。ライブのMCなどで耳にすることも多くなったから、流行語というよりは、すっかり定着した言葉なのだろう。
今から1年ほど前、ティンテッド・ウィンドウズ結成のニュースを聞いた時の私の感情は、まさに「オーサム!」。なにしろ、彼らは新人バンドでありながら、個々のキャリアにおいてはベテラン揃い。トップを獲った人たちの集まりなのだ。思わずのけぞるほど豪華なメンバーは、ハンソンのテイラー・ハンソン(Vocal)、元スマッシング・パンプキンズのジェームズ・イハ(Guitar)、ファウンテインズ・オブ・ウェインのアダム・シュレンジャー(Bass)、チープ・トリックのバン・E・カルロス(Drums)の4人。全員の活動年数をたすと、のべ90年近くになる。すごい!
興奮ついでに、日本のミュージシャンに置き換えて考えてみる。そうだなあ……スーパー・モンキーズで一世を風靡した安室奈美恵が、元サニーデイ・サービスの曽我部恵一とユニコーンの奥田民生とYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)の細野晴臣とバンドを組んだ感じ? うーん、こりゃ間違いなく「オーサム!」だ。ティンテッド・ウィンドウズの誕生は、アメリカン・パワー・ポップの歴史においても大事件。キラメキを散りばめたファースト・アルバム『ティンテッド・ウィンドウズ』はもちろん大傑作で、聴いたが最後、ロマンティックが止まらない。
ライブ会場には、ビシッとスーツを着た白髪の紳士から、コンバースのスニ−カーを履き潰した若者まで、いろいろなタイプのお客さんが集まっていた。ティンテッドの4人をそのまま反映したような世代のばらつきが面白い。冒頭から、“Take Me Back(テイク・ミー・バック)”“Can’t Get A Read On You(キャント・ゲット・ア・リード・オン・ユー)”と、スウィートかつセンチメンタルなポップソングが続く。忘れかけていた感情を呼び覚まされ、老いも若きも胸キュン。懐かしいな、この感じ。これは萌える。
端正な顔立ちのテイラーは、王子様スマイルを浮かべ、女性陣を悩殺。黄色い声援を浴びながら、ステージの端まで進み出て、プレゼントを受け取る。一方、ニコリともせず、淡々とギターを弾くイハの前には、元ギター小僧が集合。寡黙なギタリストの手元をじっと見つめている。ポップ職人アダムは、サウンドの要として全体の様子を見ながら、美しいコーラスを響かせる。そして後方にどっかと腰を下ろすバーニー。彼の慈悲深い微笑みは布袋様のようで、見ているだけでありがたい。自分はなんて贅沢な体験をしているんだろう! ライブ中、何度そう思ったか知れない。
ステージ上の4人は、本当に楽しそうだ。スタッフにおねだりして、突然、ミラーボールを回したり、「君たちはオーサムだ!」とお客さんを絶賛して、ダブルピースを掲げたり。最年長のバーニーをくり返し「アメリカ音楽界のレジェンドだよ!」と紹介するなど、言葉の端々にお互いに対するリスペクトが感じられる。ティンテッドのような企画色の濃いバンドは短命に終わりがちだけれど、ここはひとつ頑張って、できるだけ長く続けてほしいものだ。彼らの音楽が鳴り響く世界はきっとキラキラと輝いて、誰もが「オーサム!」と歓喜の声を上げるに違いない。
--set list -- (原文のまま)
TAKE ME BACK / CAN’T GET A READ / NOTHING TO ME / DEAD SERIOUS / MESSING WITH MY HEAD / NEW CASSETTE / BACK WITH YOU / CHA CHA / WE GOT SOMETHING / THE DIRT / KIND OF A GIRL / DONCHA WANNA / LET ME OUT
--encore --
I DON’T MIND / WITHOUT LOVE
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report by satori and photos by izumikuma
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