Smashing Mag / Rodrigo Y Gabriela (ロドリゴ・イ・ガブリエラ) @ Zepp Tokyo (14th Jan. '10)

　昨年9月に発表されたアルバム、『格闘弦(11:11)』に記されているように、数々のミュージシャンに捧げる曲で埋め尽くされたのがこの作品だ。この日のステージからサンタナからシャクティ、ミシェル・カミロあたりの名前が飛び出してくる。当然のように、ジミ・ヘンドリックスやメタリカも出てくるんだが、今回のアルバムで面白いと思ったのはジャズ・ピアニストのミシェル・カミロからアルゼンチン・タンゴの巨匠、バンドネオン奏者、アストル・ピアソラといった名前も出ていること。このデュオが素晴らしいギタリストであることは誰もが認めるところなんだろうが、あのギターがこういった人々の影響をも飲み込んでいるのがこんなところからも察することができる。

　07年のグラストンバリー・フェスティヴァルで彼らの生演奏を初体験して08年のショーケースから08年11月公演と、彼らのライヴを見続けているんだが、今も進化する彼らの演奏にまた驚かされることになる。メタルからジャズにタンゴからプログレまで感じさせながら、唯一無比のロドガブの音楽がそこにあるという感じ？　ギターを弾くというコンセプトを遙かに超えて、彼らの手にかかると、ギターがまるで別の楽器になったかのようなもの。ギターが嬉しそうに鳴っているのが手に取るようにわかるのだ。

　かつてはステージに用意された椅子に座っての演奏がメインだったのだが、今回はというと、時折座るぐらいでほとんど立ちっぱなし。フォト・レポートで撮影されているのは頭3曲のみなんだが、これほどまでのヴァリエーションで撮影できるということは、カメラマンの腕のみならず、彼らが縦横無尽にステージを動き、演奏しているからだろう。それでも、ガブリエラの驚愕ギター・パーカッションがひるむことはなかった。それどころか、そのスタールをレクチャーするなど、余裕さえ感じさせる。しかも、日本への愛情を幾度も語りながら、たどたどしい日本語を読んでオーディエンスに話しかけて、なにやらアットホームな雰囲気さえ漂っていたのが素晴らしい。

　ライヴの後、「いやぁ～、楽しかったぁ！」と扉に向かう観客とすれ違ったんだが、そんな一言に集約されているのが彼らのライヴ。ギター小僧は、当然、彼らの驚愕ギターをチェックすべきだろうが、そんなことよりなにより、彼らのライヴは楽しいのだ。見逃して欲しくないと切に思いますな。