コンヴァージ @ 名古屋クラブクアトロ (16th Dec. '09)
一次元を超越する激音と混沌
思い出せば、2年9ヶ月前に初めて見たコンヴァージとエンヴィの共演は非常に鮮烈だった。メンバー全員が体中にあるエネルギーを一滴残らず搾り出し、それを全身全霊でぶつけてくる。これには、心はもちろんのこと、魂から強く揺さぶられた。彼等が命を削りながらハードコアをぶちかます姿勢には胸がとても熱くなるし、ミリ単位で研ぎ澄まされた激音が生み出す混沌の激流は、人生を変えるような力を持っているように思う。あの時に味わった衝撃は、ちょっとやそっとじゃ忘れることなんてできない。
その時から待ち望んでいた今回の来日は、無慈悲な暴虐性と深淵たる美しさの異形の共存を果たした傑作『アックス・トゥ・ホール』を引っさげての東名阪ツアー。それもグラインドコア最凶の野獣ブルータル・トゥルースとのガチンコ対決である。この歴史的対決を目の当たりにできる僕らは幸せなのかもしれない。あまりメタル/ハードコアの集客率の良くない名古屋(少なくとも私の印象だが)では珍しいと思えるぐらいに猛者が集まっていたのは、"グラインドコア VS カオティック・ハードコア"の頂上対決にそれだけ期待が大きかったからだろう。
結論から先に言うが、とんでもなかった。前回見たとき以上の衝撃でもって期待以上のパフォーマンスをコンヴァージは見せつけてくれた。さらに鋭利に、過激に、凶暴になっての帰還。超高速リフで切り刻むギター、屈強で重たいベース、力強さと加速度を与えるドラムが十分に鍛え込まれ、猛烈に暴れまわっている。その爆音の嵐は五感をいともたやすく掻っ攫い、闇の裂け目まで吹き飛ばすほどだ。そしてまた、絶望の淵にでも立たされたかのような切迫感が伝わってくるジェイコブ・バノンの絶叫。これには胸の底から熱くさせられてしまう。激しさ、それとは裏腹な切なさまで内包した彼の絶叫は、やはりコンヴァージの核だと再認識。
ただ、ライブではCDのように過激で混沌とした中に、時折滲み出てくる美しさやロマンは希薄に感じられはした。それでも、獰猛に荒れ狂う轟音が生々しくビンビンと体に響いてくる。"ノー・ヒーローズ"における爆発力と破壊力は半端ではなかったし、"リープ・ホワット・ユー・ソー"や"アックス・トゥ・フォール"といった新作からの曲も神経を十二分に突き刺す威力があった。矜持であるカオティック・ハードコアは、ここにきてさらに研ぎ澄まされている印象だ。重たく引き摺るリフの中に凶悪性を孕んでいる"プレイグス"や"ワームズ・ウィル・フィード/ラッツ・ウィル・フィースト"といったミドルチューンにしても、息をつく余裕を与えてくれたかと思ったら、悲痛なまでに負の情感を炙り出していく強烈さ。混沌の渦の中に巻き込まれるほか、もう逃げ道は無い。
本編最後の"ダーク・ホース"から"ハートエイク"、"ヘルバウンド"、"コンキュバイン"までの超高速爆音攻撃4連打は特に圧巻だった。猛烈な勢いでの畳み掛けに、会場は凄まじい狂熱に包まれていた。僕自身も手をギュッと握り締め、大地をしっかりと踏みつけながら、その衝撃を全身で浴びる。その昂揚感といったら言葉で説明できないぐらいにたまらないものであった。その時のステージ上で命を削りながら演奏する4人の姿は、今でも鮮明に焼きついている。
本編終了後は、会場の大きな声援に応えて再びステージに登場。そして、アンコールに突入するわけだが、何の曲をやってるのかさっぱりわからず、ジェイコブに変わって知らない人が歌っていて、ずっと頭の中が??マーク続きとなってしまった。気になって調べてみたら、曲目はスウェーデンのスラッシュ/デスメタルバンドEntombed(エントゥームド)の「Wolverine Blues」という曲で、歌っていたのは元HIMSAのJohn Pettiboneという人だったそうだ。そういった演出で締めくくる方法を選んだことにどういった意図があったのか? その点は興味が湧くところではある。
演奏時間はおおよそ50分程度。けれども、異常なほどの興奮状態に陥っていた。短い時間で残したインパクトの大きさは、それだけ計り知れないものなのだろう。残忍な狂気と猛烈なスピードで感性をぶっ飛ばす孤高のハードコア、その真髄を見た一夜となった。
-- set list --
01. Plagues / 02. No Heroes / 03. Bare My Teeth / 04. Reap What You Sow / 05. Cutter / 06. Worms Will Feed/Rats Will Feast / 07. Axe To Fall / 08. Eagles Become Vultures / 09. The Broken Vow / 10. Drop Out / 11. Hope Street / 12. Bitter And Then Some / 13. Last Light / 14. Dark Horse / 15. Heartache / 16. Hellbound / 17. Concubine
-- encore --
18. Wolverine Blues(ENTOMBED Conver)
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なお、写真は12月17日の大阪公演のものを使用しています。
report by takuya and photos by takumi
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