フューネラル・フォー・ア・フレンド @ 名古屋クラブクアトロ (30th Nov. '09)
原点の勢いと情熱を持って再臨
2006年の活動休止から完全復活を遂げたアメリカ・スクリーモ界の巨頭フィンチ、そして心地よい疾走感と歌にメタル譲りのエッジの立ったサウンドで人気を博しているイギリスのフューネラル・フォー・ア・フレンド。この2バンドによる夢のガチンコ対決がついに実現した。どちらか一方だけでも凄まじく昂ぶるライブになることは間違いないところだが、両方を体感するとなると、半端な興奮で収まりそうに無いのは容易に想像がつく。
とはいえ、お互いに今年の2〜3月に来日して、熱狂と感動のライブでファンを魅了したばかり。まさかまさかの年内2度目の日本襲来である。日英スクリーモ対決と表現できそうな、今回のダブルヘッドライナーツアー。当初はフィンチ VS セイオシンとアナウンスされていたけども、どっちにしてもファンにとっては願っても無い組み合わせだろう(ちなみに会場ではセイオシンの曲がずっと流れていたのがおもしろかった)。個人的にも胸を高鳴らせながら、会場にやってきてしまった(笑)。今日集まった人達も、きっと同じ思いであったろう。
ほどほどの客入りでざわめく会場を尻目に、定刻をやや過ぎた辺りで、ファンにはお馴染みの電話のプッシュ音が鳴り響く。それを合図にして、フューネラル・フォー・ア・フレンドが颯爽とステージに登場した。前日の福岡公演では後攻だったそうだけど、この日は先攻で会場を混沌と熱狂の渦へと導いてくれるようだ。
まずは、アイアン・メイデン風のギターと小気味良い疾走感を持つ"ストリートカー"をぶちかまし、思いっきりアクセル全開の幕開け。続いてはツインギターのハモリから、重厚なサウンドと激しい絶叫が荒々しく捲くし立てる"ディス・イヤーズ・モスト・オープン・ハートブレイク"で、その熱を確かなものへと変えていく。さらにはアメリカのパンクバンドのストラング・アウトの血を譲り受けたかのような新曲"レンチ"でも勢いは全く衰えない。ブレーキを掛ける気は毛頭無さそうな気合の入りようで、メンバーもステージ上を動き回りながら、聴衆を盛り上げている。
今回の来日公演は発売されたばかりのベストアルバム『ユア・ヒストリー・イズ・マイン』を引っさげてのツアーということになるが、趣向としては1stや2ndといった初期の荒々しくエモーショナルな曲を中心とし、新曲も盛り込んだライブを披露。3rdアルバム以降では、脱スクリーモを図って、歌とメロディに比重を置いた音楽性への転換・新境地への飛躍が話題となっていたのだが、この原点回帰のセットリストは初期の音楽性に惹かれた自分(決して僕だけではないと思うが)にとっては嬉しい限りだ。フィンチとの対決がそうさせたのかもしれないが、大きな盛り上がりに繋がったのは必然だろう。
"オール・ザ・レイジ"、"ブレット・セオリー"、"ローゼズ・フォー・ザ・デッド"、"エスケイプ・アーティスツ・ネヴァー・ダイ" など躍動感溢れる激しいサウンドと切ないメロディラインが交錯する代表曲を次々と披露。エモーショナルな歌、胸を裂く激しい絶叫、アイアン・メイデンのニュアンスを強く感じさせる鋭いギターリフ、手数はそんなに多くないがしっかりとした安定感のあるリズム、それらが渾然一体となって襲い掛かってくるので、気持ちは昂ぶり、と同時に体中がどんどんと熱くなっていく。終盤に披露されたもうひとつの新曲"キャプテンズ・オヴ・インダストリー"にしても威力は十分の曲で、激しく突き動かされるものがあった。
そんな中でも、ひときわ壮大さとメロディの良さが引き立つ"イントゥ・オブリヴィオン"はグッと身に沁みる哀愁が味わい深い。押し寄せる切ない余韻にうっとりとするほどだった。そして、最後に演奏された彼等のアンセムともいうべき"ジュナウ"では、随一の激情と叙情のコントラストを描く、壮絶な締めくくりをみせて会場を圧倒。1時間にも満たないぐらいの短いライブであったが、不思議と不満は無く、清々しさと興奮に包まれているだけだった。それに、ステージ上を去るメンバーの面持ちにも充実感が漲っていたのも印象に残っている。
4年前に行われた、第1回テイスト・オブ・ケイオス(あの時のラインナップはユーズドにキルスウィッチ・エンゲイジ、ストーリー・オブ・ザ・イヤー、ディル・アン・グレイとまさにオールスター級だったなあ)で一度、フューネラル・フォー・ア・フレンドのライブは見ているのだが、その時の若さ故の反骨心とエネルギーが本日のライブにおいても、ひしひしと伝わってきた。彼等の芯の部分は決して揺らいでいなかったのだ。キャリアを重ねた今でも、以前の衰え知らずのエネルギーを持ち続けていること、さらにいい意味での余裕と安定感をも手にしたことを証明した、いいライブだった。
-- set list --
01. Streetcar / 02. This Year's Most Open Heartbreak / 03. Wrench / 04. Bend Your Arms To Look Like Wings / 05. Recovery / 06. She Drove Me To Daytime Television / 07. All The Rage / 08. Bullet Theory / 09. Roses For The Dead / 10. Escape Artists Never Die / 11. Captains of Industry / 12. Into Oblivion / 13. Art of American football / 14. Juneau
|
なお、写真は12月1日の大阪公演のものを使用しています。
report by takuya and photos by takumi
|
|
|