buttonエル・スカンク・ディ・ヤーディ
@ 下北沢CCO (22nd Oct. '09)

あるものすべて飲み干して


El Skunk Di Yawdie

 だいぶ待った。見たい見たいと思いつつも、地元・東北をメインに活動していて、なかなか見られなかったエル・スカンク・ディ・ヤーディ。ギターとカホンで鳴らされる彼らの音には様々な色が見え隠れしている……となれば、ついつい、「ごった煮」などと書きたくなるけれども、明らかに違う。すべてが絡み合った塊のような音ではなく、レゲエの傘下にジャズ、パンク、ブルーズ、エトセトラ、……が収まっている、といったもの。彼らがライヴで見せる表情の如く、さらにくずして書くならば、おいしいところだけを頂戴しているとか、つまみ食いしている、という表現がもっともしっくりくる。

 ミニマムな編成で鳴らされる音だが、フトコロは無尽蔵。その場にいる顔の数だけ引き出しを作ってしまう。紡がれる言葉はほぼ即興、喉が渇けば、「酒が欲しいな〜」なんて台詞をリズムの間に縫い込んでいく。すると、すかさずバーカウンターからはスッ、とグラスが差し出され、いくらかの人の手をはしごしてステージへ届くといった案配で、まずはコミュニケーションがあり、皆してとことん楽しんで弾けよう、という想いで溢れている。

El Skunk Di Yawdie そのくせ、冒険心もある。ギターのペグをいじって弦の張りを変化させ、シタールのような揺らぎを表現したかと思えば、がちゃがちゃとかき鳴らすイントロしばらく、レゲエのセレクター(ひとえに言うところの、DJ)にみられるアナログ逆再生での頭出し、それをミュートされたギターのスライド奏法でやってのける。仕切り直しで一杯飲み、再び走り出したらさらなる騒ぎといった具合で、酒とお客はもちろん、ハコのスタッフすらをも巻き込んで、飲み干していく。

2人のみ、そんなちんまりとした編成だからこそ、酔っぱらった勢いで飛び入る友人、ビートボクサーの友人、好きすぎる客、誕生日の素人といった不特定多数の人間を巻き込んで、グルーヴの血肉としていく。時には、飛び入りの者に着火の役目を預けることによって、場の盛り上がりを操っていく。「アンコール!」のかけ声もいつしか、「アルコール!」にとって代わり、終わろうにも終われない。セットリストなし、予定調和なし、エル・スカンクの場合、イベントは人の数だけ存在すると言ってもいい。

 地方で練られた唄は、バビロンという東京に住み、固くなってしまった僕らをほぐしてくれる。都市部へと出てきた時には、首を長くして待っている人たちが必ずいる。お初の人であっても、つい口元をゆるめて踊ってしまう。これほどまでに親しみやすいバンドを、僕は他に知らない。


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