buttonザ・クリブス
@ 赤坂ブリッツ (21st Oct '09)

うらやましいぞ! クリブス!



The Cribs
 赤坂ブリッツには、現在進行形のバンドとしてクリブスを応援している人と、ジョニー・マー目当てできた人との混ざり具合が面白い。バンドのセットチェンジのときは、ジョニー・サンダースの"ボーン・トゥ・ルーズ"やシンディー・ローパーの"ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン"などが流れる。どういう意図だったのだろうか。この日はオープニングアクトがあったので、20時ころバンドが登場する。ステージ下手にジョニー・マー、ライアンがセンター、ゲイリーが上手だった。

The Cribs ライヴは"We Were Aborted(ウィ・アー・アボーテッド)"から始まった。新しいアルバム、『イグノア・ジ・イグノラント』からの曲が当然多かったけど、以前のアルバムからの曲も万遍なく演奏された。特に「ムカシカラくりぶすノふぁんダッタヤツ」といってから"We Can No Longer Cheat You(ウィ・キャン・ノー・ロンガー・チート・ユー)"をやったりと、カタコトの日本語で一生懸命にコミュニケーションを取ろうとする。ドラマーのロスは何かあるごとにドラムセットの上に立ってお客さんを煽っていた。

   ジョニー・マーは、アレンジを変えたりすることなく、歌を邪魔せずに控え目なバッキッングに徹して、さらにコーラスにも参加し、ちゃんとバンドの一員としてプレイしていた。まだまだやんちゃさが残り、ときに暴走してしまう他の3人を年長者らしく引き締めていたように、クリブスにとって単にもうひとりのギタリストを得た以上の化学反応をバンドにもたらしたし、ジョニー・マーにとってはバンドの一員でいることが本当に好きなんだなということが伝わる。

The Cribs ラフで勢いを感じさせ、明るく覚えやすい曲が多い。"Another Number(アナザー・ナンバー)"はイントロのギターのリフを合唱させた。"Mirror Kissers(ミラー・キッサーズ)"や"Men's needs(メンズ・ニーズ)"はステージ前のお客さんたちは跳びはねて歓喜を全身で表していた。"Be Safe(ビー・セーフ)"では、スクリーンが降りてきて、ソニック・ユースのリー・ラナルドが語るところにバンドが演奏をつけていく。

 約20年前、病気で入院中にテレビ神奈川を見ていたら花房浩一という人が出てきて「ザ・スミスは解散しました。モリッシーとジョニー・マーはもう口も聞いてない」と発言し、思わず「えっ!」と叫んでしまい、周りの患者から変な眼で見られた。(そして、スミスの解散をおそらく日本で一番最初に口にした人がこのsmashing magを管理することになるのだけど)。それからというもの、ついに来日しなかったザ・スミスの幻影を追い求めてザ・ザのライヴに行き、バーナード・サムナーと一緒にやったエレクトロニックのアルバムを律儀に買い、フジロックでソロのバンドを観てその後の来日ライヴも観て、サマーソニックでモデスト・マウスをチェックしていた。

The Cribs そんな我々、ザ・スミスに直撃を食らった世代は、今までのギター・ヒーローと呼ばれるギタリストたちと違って、自己陶酔的なギターソロを弾いたり、速弾きなどのアクロバティックなテクニックをひけらかしたりすることもなく、よい歌を地味なバックで支える演奏でいながら、曲を聴けばジョニー・マーでしかないと一発でわかるギターを弾いていたことに、新たな時代のギタリストとしての格好よさを感じていた。そんなジョニー・マーと一緒に演奏してみたい! と願うバンドマンは日本にもたくさんいることだろう。そんな夢を叶えてしまったクリブスは非常にうらやましい。もちろん、こうしてライヴを観ると、クリブスとジョニー・マーの合体は意外でも何でもなく必然だと思えてくるのだ。


-- set list --

We Were Aborted / Hey Scenesters! / I'm a Realist / Emasculate Me / Girls Like Mystery / Last Years Snow / Cheat On Me / We Share The Same Skies / We Can No Longer Cheat You / Direction / Hari Kari / Save Your Secrets / Our Bovine Public / What About Me? / Another Number / Ignore The Ignorant / Be Safe / Mirror Kissers / Men's needs / City Of Bugs
The Cribs

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