ザ50回転ズ、モーサム・トーンベンダー @ 新宿ロフト ナラズ @ 新宿マーズ (10th Sept. '09)
お前が楽しい以上に、俺はもっと楽しい
エレクトリック・イール・ショック主催のイベントにザ50回転ズが出演した。50回転ズを自分が観るのはロック・イン・ジャパン以来である。その間もいろんな夏フェスで演奏する機会はあったようだけど、東京でやるのは5月以来で久しぶりのことだった。
登場するなり「エレクトリック・イール・ショックが新しいの出すんだって? そんなの関係ねー!」とダニーが吠えてから"Thank You For Ramones(サンキュー・フォー・ラモーンズ)"へ。そして最近にしては意外な選曲? の"乞食の大将"。金や酒を恵んでもらう生活をしながらも「オマエが楽しい以上に、俺はもっと楽しいー!」と叫ぶように、腹の据わった楽天的な勢いがある。
性急なリズムで飛ばしていく"拝啓、ご先祖様"を久々に演奏するあたり、「関係ねー!」とかいいながら、ガレージとヘヴィ・メタルが混ざり合いそれが独特なロックンロールになっているエレクトリック・イール・ショックを意識しまくっていて、50回転ズの中でも荒々しい曲をこの日のために用意しているのが、ほほえましい。
差し入れにギターの教則ビデオをもらったことをネタにして、「テクニックやチューニングより大事なことがあんだろ! ロックンロールの魔法を信じることだ!」とダニーが叫んで、新曲"ロックンロール・マジック"。ダニーとドリーがハモり、バブルガムなポップの要素もある曲で、3人が振りを合わせて演奏する。歌詞の内容は "ロックンロール・フォーエバー"と同じくロックンロールへの信仰告白である。後半は"1976"、アイリッシュぽいンクで盛り上がる"レッツゴー3匹!"、"Youngers On The Road(ヤンガーズ・オン・ザ・ロード)"、そして"50回転ズのテーマ"とステージ前はモッシュやダイブの嵐になり、バンドは完全燃焼して駆け抜けた。何よりもステージを楽しんでいる姿がある。
次に登場したモーサム・トーンベンダーを観るのは、もっと久しぶりである。百々、武井、藤田の3人による狂気を感じさせるド迫力の演奏は、エレクトロな路線に進んだ音もよいのだけど、この日のライヴでは後退し、初期のようなバンドサウンドに還ってきた。
藤田の凶暴なドラミングと、丸坊主になった武井のブリブリしたベースのコンビに乗って百々の歌とギターが疾走していく。"冷たいコード"や"未来は今"、"HigH(ハイ)"などをメドレーでまとめて演奏していく有無いわせない。お客さんたちは50回転ズと同じくらい盛り上がる。ライヴハウスの密閉した空間で、限られた持ち時間という条件の中で、凝縮したテンションが一気に噴出された。3人それぞれが自己主張し、ぶつかり合い、ぐしゃぐしゃでいろんな方向に飛び散る音なんだけど、奇跡的に音楽として成り立っている。特に"DUM DUM PARTY(ダム・ダム・パーティー)"は以前と比べスケールと狂気のレベルが違うと思わせる。こうしたぎりぎりな表現はキャリアを重ねてこそなんだろう。
そしてトリは、エレクトリック・イール・ショックだけど、ロフトの近くにある新宿マーズでNaLaS(ナラズ)が演奏すると聞いて、後ろ髪引かれる思いでロフトを後にする。エレクトリック・イール・ショックのライヴも大好きなので残念だけども。
マーズに着くと、まだナラズは始まってなかった。前回は、ほとんど予備知識なしで観たけど、今回はもう新鮮な感覚で観ることはできない、と待ち構える。この日は彼らのCD発売記念のイベントでいくつかのバンドとDJが出演した。ナラズはトリとして登場し、簡単な挨拶から演奏が始まる。この日もラストまでメドレー形式で演奏され、音は途切れることなかった。冗長なソロなど一切なく、ひたすら性急なビートを刻んでいく。ありきたりでは満足せず、自分たちができることで最大限のことをやってみせる。3人が目指しているものは高い。
ただ、その素晴らしさをたくさんの人たちにアピールできているかといえば、まだまだこれからである。特に、この日は直前に、50回転ズやモーサム・トーンベンダーを観てしまったので、お客さんの心を掴むのに長けているバンドや、円熟の域に達しつつあるバンドとのキャリアの差を痛感してしまった。もちろんそれがマイナスでなく、これからキャリアを重ねてどのように成長するかが楽しみなバンドであることには変わりはない。今のうちに観ておくことをお勧めする。
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