Mono(モノ) @ リキッドルーム恵比寿 (27th Aug. '09)
気高く美しき孤高の音色
この日はリキッドルーム5周年記念"onomonoenvy(オノモノエンヴィ)"と題されたイベントで、企画名通りにMono(モノ)、Envy(エンヴィ)、O.N.O(オノ、The Blue Herb)の3組が共演を果たすものであった。トップバッターには、ドラマーが前日に負傷したために片腕で演奏せざるをえなくなったけれども、変わらぬ全身全霊の激情パフォーマンスで胸を熱くしたenvy(エンヴィ)が、2番手には、強烈なマシーンビートで激しい興奮とゆらゆらとした心地よさをもたらしたO.N.Oが、共に己を極めんとするライブを力強く披露。叩き上げで築き上げてきた両者の世界観の深さに改めて感動を覚えた。特にエンヴィは、何度となくこの眼と体で彼等のステージを確認してきたが、胸の奥深くに届く巨大なエネルギーに自分は今回もやられてしまったようだ。
2番手のO.N.Oがステージを去った後は、オペラチックなものが流れて会場を厳かな雰囲気が包み込んでいる。その独特の雰囲気に、昂ぶりを覚えつつも、どこか身構えてしまう自分がいた。最後を飾るのは孤高のインストゥルメンタルバンド・Mono(モノ)。5月に開催された自身の企画"Raid World Festival(レイド・ワールド・フェスティヴァル)"以降は、主戦場である海外行脚にいつもの通りに出向いていたので、約3ヶ月ぶりの国内でのライブとなる。ピリッとした緊張感と先ほどまでの興奮が錯綜する中、前回同様に彼等は静かにステージに姿を現した。
始まりは壮大な世界観の序章を奏でるにはお馴染みとなった感のある "Ashes In The Snow(アッシーズ・イン・ザ・スノウ)"。冷たいグロッケンの音色がひんやりと肌に伝わる導入部から、美しいトレモロによる静寂の海を越え、迫真的なリアリティを持つ轟音が大きなウネリをあげて全方位から掴みにかかる。静から動への変遷が奏でるドラマティックな展開、描かれていく思慮深き世界観、止め処ない感情の洪水。そのどれもが圧倒されんばかりの説得力に裏打ちされている。時に吹雪のような冷たさを、時にマグマのような熱を放出する彼等の音は、精神の一番重たい部分に強く響く。けれど、心が壊れそうになるぐらい掻き乱しながらも、やがては壮麗なる歓喜、希望が灯る劇的な瞬間が訪れる。絶望の淵から天へと昇りつめるようなこの感覚、これぞMono(モノ)のライブにおける醍醐味の一つだろう。
その後は余韻に浸っている間もなく、ツインギターが荘厳な物語を刻んでいく"Burial At Sea(ブリアル・アット・シー)"、エレガントなピアノの旋律にどこか切なさを覚える"Follow The Map(フォロー・ザ・マップ)"へと続いていく。また、麗しくたおやかな静パートにうっとりとする"Pure As Snow(ピュア・アズ・スノウ)"では、前回見たときよりも激しい感情を剥きだしにして、ギターの歪みがより凶暴に轟いていたのが鮮烈であった。
そして、今宵のライブにさらに繊細な美しさをもたらしたのが次に演奏された"halo(ヘイロー)"。今から約6年前に発表された2ndアルバムに収録されているこの曲は、切ないツインギターの音色と柔らかくも太いベースラインがしなやかな包容力を感じさせてくれるナンバー。それでいて必殺の轟音をぶっ放す場面もある。珍しいことに、いつもは座りながら演奏に集中しきっているツインギターの面々が、この曲のみ終始立っていたのも印象に残っている。また、ギタリスト・TAKA(タカ)が最後に加えたグロッケンのアレンジも静寂の世界に眩いまでの輝きをもたらしていたことも特筆すべきことだろう。さらに驚かされたのは、ラストに彼等の曲の中で特に人気の高い "Moonlight(ムーンライト)"を持ってきたこと。静と動の螺旋を描くドラマティックな曲調が印象的で、孤独と悲しみを湛えながら人間の内側を掻き乱しつつも、やがては憂いを帯びたムードと闇夜に輝く月光が希望を灯していく。優美なストリングスと共に轟音が何度も咽び返るクライマックスでは、聴き手を打ちのめすと同時に恍惚へと導かれる。そして、音が鳴り止んだ瞬間からは、涙腺をじわっと緩めるような感動が第二波として襲い掛かってきたのだった。そんな極限を表現しきっても、メンバーは静かにステージを去っていく。去り際も美しく、それもきっと心がけの一つなのだろう。
それにしても、この記事を書いている今も、Mono(モノ)が極限状態から一滴残らず伝えた情熱が心の中で渦巻き、彼等の奥深き世界観が強烈に甦ってくる。3ヶ月前に眼前に表れた歓喜の風景は、美しい月光の光を浴びてさらに雄大なものへ。壮絶な世界を再び眼の前にして、魂の底から震えを覚えた一夜になった。
そしてこの当日発表になったが、来たる12月21日には、ニューヨークで開催されたオーケストラとの共演による10周年記念ライブが、待ち望まれていた母国・日本でも開催される運びとなった(詳しくはこちらをご覧ください)。ロックという枠組みを軽々と超越し、芸術という批評すらも寄せ付けない圧倒的なスケールを持って五感に迫り来るであろうこのライブは、10年間の集大成としてかけがえのない一夜となることは間違いない。オーケストラと共に鳴らす奇跡の音色と心象風景はきっと鳥肌ものだろう。そんな目の前で起こる奇跡の体験者となるべく、私は早くもこの場所へと足を運ぶつもりでいる。そこにはきっと、未だかつて感じたことの無い程の凄まじい感動があるはずだから。
-- set list --
Ashes in the Snow / Burial at Sea / Follow The Map / Pure as Snow / Halo / Moonlight
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report by takuya and photos by saya38
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MONO 『10th Anniversary Show with Orchestra in Tokyo』
指揮:Dave Max Crawford
共演:N響コンサートマスター篠崎"MARO"史紀 & Music Art Romantic Orchestra
2009/12/21 (mon) Shibuya O-EAST
OPEN 19:00 START 20:00 Ticket:前売り\7,500(税込み/ドリンク別)
詳細はこちらでご確認ください。
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