button難波章浩 & 恒岡章
@ 名村造船所跡地(15th Aug. '09)

ユア・ハート・フィールズ・ソー・フリー!!


Akihiro Namba
 難波章浩と恒岡章。このコンビをパッと見て、「横山健のいないハイ・スタンダード?」という印象を持つ人は少なくないだろう。それはわかる。わかるけれども、本質はちょっと違うところにあると思う。そもそも打ち込みに新たな道を見出した(ようにみえた)難波が、また生音を取り入れ始めたというのがまず面白い。そしてそこで必要としたドラマーは、たぶん色々な可能性があったんだろうけども、やっぱり"あの"恒岡章だったのだ。つまり【ハイスタ−横山健】ではなく、【ウルトラブレイン+生ドラマー】であり、しかも「ドラマーなら結局ツネが最高じゃん!」というこの結論めいた編成が、オレを含めた新旧ハイスタアーミーどもをたまらなく嬉しくさせるのだ。

Akihiro Namba この日は造船所跡地をクラブにみたてた終夜イベントで、共演もDJ KRUSHやRYUKYUDISKOなどそうそうたるメンツ。dj KENTAROの出番の時に何かが起こるとの噂を聞きつけ早めに入場したのだが、まずは巨大スクリーンに映し出されるリアルタイム映像にくぎ付けになる。KENTAROの絶えず動き回る手元のなんと流麗なことか! 跳ね回る両手がレコードやフェーダーに触れるたび、低音が快いリズムで下腹を突き上げてくる。そして終盤、KENTAROが突然スピンしたのは、なんとハイスタの"サマー・オブ・ラブ"! そこにハンドマイク片手の難波が乱入! 間髪いれず初期の代表曲"サタデー・ナイト"が続き、本人フィーチャリングヴォーカルで奇跡のdj KENTARO ライヴ・ハイスタ・リミックスが実現した!! 盛り上がった会場の勢いそのままに、一気に難波&恒岡の出番に突入する流れ――のはずだった。

 ところが、ここで機材トラブル。ずいぶんセッティングの時間がかかってるなと思い、興奮からふと我に返ってステージの様子を見ると、スタッフの顔色が変わっている。どうやら断線でベースの音が出ないらしい。しばらく苦心惨憺していたが結局、DEX PISTOLSと出演順番を急きょ交代することになった(余談だが、ハプニングによる突然の出番到来でも、見事に大役をこなしたDEXの舞台度胸とパフォーマンスには感服!)。この時の本人の心境は、難波自身が書いているmixiの日記で伺い知ることができる。終演後に難波は「こんなことは初めてだったなぁ」と呟いた。自主/招聘ともにビッグイベントをこなし、国内はもちろん、アメリカ/ヨーロッパでもツアーを成功させた百戦錬磨でも、時にはこういうことがあるのだ。ライヴとは奥が深い。いや本当に。

 が、いつまでも落ち込んでばかりもいられない。DEXが終わり、機材も応急処置の結果なんとかなりそう。さあ、仕切り直しだ。すべてを巻き返す気合でライヴが始まる。難波がコンピューターを操る一方でアクティヴ・ベースの低音を遠慮なしにブンブンと鳴らし、そこに被さってくる恒岡の相変わらずのバケモノドラム! しかもハイスタ時代にはなかったプリミティブな横ノリ系のリズムまで、このユニット独特の音に誘発されたのか、新たなパターンとして引き出されている! 生ならではの音圧、そして人力独特のグルーヴ。徐々に客の揺れの振り幅がデカくなってゆく。圧巻は"アワー・ソング"のあたりで、大沢伸一との共作でもはや代表曲となりつつあるこの曲の時には、会場は完全な熱狂状態に陥っていた。

Akihiro Namba ここまでが本編だったらしく、恒岡は惜しまれつつもここで退場。一瞬終了ムードが漂う。が、ここで止めのボーナス・トラック、代々木アースガーデンでも演奏されたというまさかの"モッシュ・アンダー・ザ・レインボウ"!! とっくにトップギアに入っていたはずの会場はさらに上のボルテージまで上がり、我慢できなくなった難波もステージから客席に飛び込む!! 観客の頭上で、転がりもんどりうちながら、それでもハンドマイクで歌い続ける笑顔の難波。かつてフィッシュボーンのアンジェロが川崎クラブチッタで会場後ろの壁まで行くという伝説を残したが、一瞬その記録を更新するんじゃないか?と頭をよぎるくらいの滞空時間。フロアの真ん中ちょっと後ろかなくらいまで行った。

 その様子を見て、難波は本当に自由になったと思った。TYUNK名義の"ガイディング・スター"を初めて聴いた時、「もともと素晴らしいリフ・メイカーだったけど、ソロになってとうとう、音色(おんしょく)からすらも解き放たれたなぁ」と思った。でも、それだけじゃなかったのだ! 拳を天に突き上げ、スピーカーによじ登り、演奏中にこうやって観客席にダイヴする。いずれも、ベースギターに自分自身が「固定」されていては、難しい表現形態だ。マイ・ハート・フィールズ・ソー・フリー。難波は自由とほぼ同義の、新しい音楽フォーマットを手に入れたのだ、と思った。

 その難波が最近、またそろそろバンドをやりたいと発言する機会が増えている。自由になりたい。バンドをやりたい。そのふたつは多分、矛盾しないんだろうと思う。明け方、帰り際に会った難波は「今また新しい音を創ってる」と語ってくれた。そしてこんなニュースもある。ギター・レコーディングになんと、横山健が参加!!! このいろいろな要素が混じり合って、いったいどういう方向に転がるのか……どうしようもなくワクワクするのは、自分だけだろうか?

 そろそろ夏も終わる。今年もいい夏だった。やがて届けられるであろう新しい音に期待しながら、また来年の夏を待つ。
Akihiro Namba

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