グレン・ティルブルック with スティーヴ・ナイーヴ・バンド @ 吉祥寺スターパインズ・カフェ (27th Jul. '09)
演奏したがる人たち
約半年の間に2回もグレン・ティルブルックが来日するとは意外なことだし、それがフジロックのみならず、もはや彼のホーム(!?) である吉祥寺スターパインズ・カフェでも観ることができる。フジロックから戻り、ミュージック・プラントのサイトをチェックすると、まだ当日券があるとのこと。それならば、フジロック帰りの疲れた体にムチ打ってでも行かなければならない。
もちろん、フジロックはすばらしかった。だけど、グレンはあくまでスティーヴ・ナイーヴ・バンドの助っ人なのだ。スクイーズの曲も"グッバイ・ガール"くらいで物足りなかった。他にもグレンがヴォーカルをとる曲は多かったけど、もっともっとグレンの歌を聴きたかった。
会場に着くと、ステージにはドラム、ピアノ、ギター、ベースが置いてある。どうやらスティーヴ・ナイーヴ・バンドの演奏があるらしい。事前に耳にした話では「スティーヴたちが観にくるかもしれない」だったけど、いつの間にか「演奏する」に変わっていた。嬉しいサプライズ。でも、裏方さんはいろんな手配が大変だったろうな、と苦労が偲ばれる。
前回も、前々回の来日でもグレンはステージを二部構成にしている。この日も前半はグレンがソロで弾き語る。だけど、ただの弾き語りではなく、ステージを走り回り、ステージにある全部の楽器に触るというマルチなエンターテナーぶりを発揮。ピアノの弾き語りも初めて観た。また、エレキギターでジミ・ヘンドリックスの"ヴードゥー・チャイル"を強烈なプレイでカヴァーする。スクイーズの曲は"テイク・ミー・アイム・ユアーズ"や"アップ・ザ・ジャンクション"、そして名曲"テンプテッド"など。1月のときと同じく明るく楽しくエネルギッシュなステージをみせてくれた。
後半は数曲グレンが歌ったあとにスティーヴが登場。確か1曲デュエットしたあと、バンドの他のメンバーが出てきて、全員揃って演奏が始まる。スティーヴやドラマーがヴォーカルを取る曲もあって、プレイした時間はフジロックとほぼ同じくらいになった。すばらしいステージを2日間で2度も観ることができるとは感激だ。このようなセットになるにはいろいろと大変だっただろうけど、何よりも、たくさん演奏したいというミュージシャン本来の健全な欲に支えられたステージの幸福さがライヴハウスを包んでいた。アーティストの中にはギャラだとか環境とかいろんな注文をつけてなるべく演奏しない人がいる一方で(もちろん、自分の最高の状態をみせたいという意識の表れの場合もあるから尊重するけど)、グレンやこの日のバンドのようにどんどん人前に出ていって演奏する人もいる。
スクイーズの"グッバイ・ガール"もフジロックと同様にバンド編成で演奏され(グレンはベースをプレイ)、最後はニック・ロウが作り、そして、エルヴィス・コステロのカヴァーでもおなじみの"(ホワッツ・ソー・ファニー・バウト)ピース、ラヴ・アンド・アンダスタンディング"だった。グレンの伸びやかな声で歌われるこの曲は、普遍的な魅力を放つものだということを改めて思い知らされる。
アンコールでは、"アナザー・ネイル・イン・マイ・ハート"。バンドが登場して古いロックンロール(ジョニーBグッド風の曲)を演奏し、2度目のアンコールで"ブラック・コーヒー・イン・ベッド"。グレンは客席に降りていって客のひとり(常連?)がちょうど誕生日だったようで"ハッピー・バースディ"を挟んだりする。その親近感、サービス精神がお客さんを笑顔にさせる。こんなに近くまで来てくれるグレンはマジソン・スクエア・ガーデンで演奏したこともある人なんだぜ! だけど落ちぶれた感は一切なし。歌うことが楽しいのだ、天職なんだということが伝わってくる。
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The featured photos was from Yusuke Kitamura's coverage of the same acts in Fuji Rock Express.
report by nob and and photo by yusuke
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