buttonエネミーズ @ 名古屋アポロシアター (14th Jun. '09)

無垢たる輝きを前にして


Enemies
 切なくも麗しいメロディは胸の深い部分に染み渡り、情感渦巻く衝動が果てることなく地に轟く。彼等が打ち鳴らすそのドラマティックなサウンドがもたらす歓喜に打ち震えた夜・・・。

Enemies 1stEP「アルファ・ウェイヴス」が今年になって国内発売された(海外では既に去年発売済み)、平均年齢20歳前後の若手インストロックバンドのエネミーズのライブはまさに上記に挙げた通りの内容であっただろうか。まさかここまで私自身の心をがっちりと掴んでくれるとは。

 ライブが始まる少し前には、既に満杯近くに膨れ上がっていた会場を尻目に先行でエネミーズが登場(彼等の来日ツアーという名目だったけれども・・・)。19歳というイケメンのベーシストをステージ中央にして両隣にギタリストの2名、中央奥にドラムという布陣に位置し、挨拶もそこそこにライブはいきなり新曲らしきもの(少なくとも1stEPの曲ではなかった)からスタートする。

 どの曲もクリーントーンのアルペジオやライトハンド奏法による切ないメロディラインを中心とし、そこに激情迸る動を交えつつドラマティックな稜線を巧みに描いていく。それが心の奥へと訴えかけるように響き渡る。また、めくるめくスリリングさをも持ち合わせているのも特筆すべきことだろう。変拍子を交えてより複雑に入り組んだり、王道的にそのままフィードバックが轟く激動へと突入したり、ホワイトノイズが虚空を支配しにかかったり、はたまた波打ち際を思わせる静寂だったりが待ったなしで飛び込んでくる。随所にメリハリとフックを効果的に働かせながら、澱みの無い美しい波紋と北欧的な旅情を広げていく。その美しくも情熱的なサウンドが昂揚感を伴いながら感覚を鷲づかむ。

Enemies とはいえ、その鮮やかな音のカーテンに包まってばかりいられるわけでもない。ライブで特に驚かされたのは、いきなり下手側にいた巨漢のギタリストが、ギターを手放して持ち場を離れ、ステージの左端に用意してあったドラムを叩きだした事。そこからプリミティヴな響きを持ったツインドラムが炸裂したときは脳からヤバイ汁がじわじわと出てきた。本日共演するトーとの共通項も見出せるサウンドながら、荒削りな野性味を発揮するところもまた個性的で面白い。スマートな外見とポストロックな音楽性とは裏腹な秘技を見ることができたのも大きな発見であった。

 1stEPからほぼ全ての曲を披露し、他にも新曲を多数交えた白熱のライブは一時間近くにも及んでいた。MCでは笑顔を交えながら日本でライブを開催できることの感謝と喜びをしきりに伝えていたのも印象深い。そのあどけなさの残る姿からも観客の心を掴む要素が詰まっていたといえる。おそらく次に登場するToe(トー)を目当てで足を運んだ人にもこの美しい音楽の前に琴線を擽られたに違いない。

 それにしても驚いたのは、年齢が若いこともそうなのだが、彼等はアイルランドからなんと船で数十日かけて日本まで来たそうだ。そういった事を踏まえると、人々を前に演奏する悦びはより一層大きなものであったのは容易に想像がつく。彼等の来日公演はこれからまだ数日続く予定だが、せめて帰りはもっと楽な手段で帰れるぐらいには盛況であってほしいものだ。心からそう願っている。

Enemies

report by takuya and photos by yoshitaka
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Enemies First Japan Tour

09/6/17 (水) 山形 Sandinista
09/6/18 (木) 横浜 club Lizard
09/6/19 (金) 渋谷 O-NEST
09/6/20 (土) 渋谷 O-WEST ※
09/6/21 (日) 大阪 unagidani sunsui
09/6/23 (火) 神戸 HELLUVA LOUNGE
※09/6/20 渋谷 O-WESTにはToeの出演あり。
詳細はこちらでご確認ください。

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button 無垢たる輝きを前にして (09/06/14 @ Nagoya Apollo Theater) : review by takuya, photos by yoshitaka
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The latest album

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"Alpha Waves"
(国内盤 / iTunes)


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button2009

button心地よい興奮へ : トー(14th Jun. @ 名古屋アポロシアター)
button無垢たる輝きを前にして : エネミーズ(14th Jun. @ 名古屋アポロシアター)
button三者三様の激しさを堪能 : イン・ディス・モーメント(18th May. @ 名古屋クラブクアトロ)
button慈愛と生命力に溢れた光 : モノ(16th May. @ 恵比寿リキッドルーム)
button地と空を圧する屈強なヘヴィネス : ペリカン(16th May. @ 恵比寿リキッドルーム)
button比類なきスリリングな音と熱 : ライト(16th May. @ 恵比寿リキッドルーム)
button至福と戦慄 : アイシス(19th Apr. @ 恵比寿リキッドルーム)
button致死量の轟音 : サン O)))(19th Apr. @ 恵比寿リキッドルーム)
button世界を陥れる先鋭的ヘヴィロック : ボリス(19th Apr. @ 恵比寿リキッドルーム)
button揺らぐことの無い存在感 : エンヴィ(19th Apr. @ 恵比寿リキッドルーム)
button幕開けはゆらゆらと心地よく : グロウイング(19th Apr. @ 恵比寿リキッドルーム)
buttonCD review "ウェイヴァリング・レイディアント" : アイシス(15th Apr.)
button笑顔を咲かせるスクリーモ : ストーリー・オブ・ザ・イヤー(17th Mar. @ 名古屋クラブクアトロ)
buttonCD review "ヒム・トゥ・ジ・イモータル・ウィンド" : モノ(11th Mar.)
buttonCD review "イノセンス・アンド・インスティンクト" : レッド(6th Mar.)
buttonCD review "スイサイド・シーズン" : ブリング・ミー・ザ・ホライズン(4th Feb.)
button崇高な音世界 : エンヴィ(28th Jan. @ 名古屋クラブアップセット)
button破格の音圧が導く恍惚 : モグワイ(13th Jan. @ 名古屋クラブクアトロ)

button2008

buttonCD review "Bird Hotel (バード・ホテル)" : ピープル・イン・ザ・ボックス(31st Dec.)
button燃え盛る衝動 : テ(24th Nov. @ 名古屋クラブアップセット)
button真っ直ぐに伝わる : ピープル・イン・ザ・ボックス(24th Nov. @ 名古屋クラブアップセット)
button踊り狂った素敵な夜 : ザ・ミュージック (11th Nov. @ 名古屋ダイアモンドホール)
buttonCD review : まして、心と五感が一致するなら全て最上の『音楽』に変ずる。 : テ (28th Sep.)
buttonCD review : マラ・サングレ : ソシエダード・アルクホリカ (31th Jul.)
button短時間でも濃厚 : ギー(28th Jun. @ 名古屋アポロシアター)
button轟音の楽園 : テ(28th Jun. @ 名古屋アポロシアター)
button色づき始めた未来 : ムーディー・オン・ザ・サクバン(28th Jun. @ 名古屋アポロシアター)
button貫禄十分の帝王 : キルスウィッチ・エンゲイジ(11th June. @ 名古屋クラブクアトロ)
button新しい風を求めて : フォールズ / ミッドナイト・ジャガーノーツ(16th May. @ 名古屋ボトムライン)
button20回記念のスペシャルな夜 : エクストリーム・ザ・ドージョー Vol.20 スペシャル(9th May. @ 名古屋クラブクアトロ)
button引きずり込まれるロックフィールド : ギー(6th Apr. @ 名古屋ロックンロール)
buttonポップな魔法に魅了されたひと時 : アニマル・コレクティヴ(17th Mar. @ 名古屋クラブクアトロ)


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