buttonリリー・アレン @ 渋谷オーイースト(5th Jun. '09)

魔女っ子リリーちゃん

Lily Allen
 6月に入って雨が降り湿度が上がったせいもあるだろけど、ソールドアウトを伝えられた会場には熱気が篭っていた。ロビーやフロアは外国人と女の人の比率が高いように思える。ライヴが始まる前、ずっとハウスやブレイクビーツが流れている。プロディジーの"Out Of Space(アウト・オブ・スペース)"もかかっていたけど、リリー・アレンはこうしたクラブミュージックの中で育ったことが伝わってくる。彼女の音楽の底から汲み取ることができる凶暴さが−−もちろん、一見キュートな外見に包まれているけども−−そんな環境の中で培われたのかもしれない。

Lily Allen ステージは白い幕で覆われていて、その後ろでセッティングの作業がおこなわれている。15分くらい押して、場内が暗くなり"Everyones At It(エヴリワンズ・アット・イット)"のイントロが鳴り出し、白い幕が落とされると、リリーとバックバンドが現れる。すぐにお客さんの歓声が沸き起こる。女の人が多いので、いわゆる黄色い声だ。まるでアイドルである。歓声を上げる彼女たちにとって、考え方や行動を目標にしたくなる存在で、そうした意味で彼女たちのアイドルなんだろう。

 彼女のステージ衣装である黒く大きいシャツはシックに見えるけど、後ろを向くと大胆な背中が披露される。上品でセクシー、可愛くて凶暴、という衣装は彼女の音楽が表す二面性に通じるものがあるのだ。

 最新作、『イッツ・ノット・ミー、イッツ・ユー』から中心に選曲されているけど、1stアルバム、『オーライ・スティル』からも取り上げられていた。涼しげで、軽やかな印象もある の曲たちも、生演奏だと確かな重みが手応えとして残る。そんなバックバンドに支えられて、リリーはひとり自由に動き回る。たばこを吸い、酒を飲み、MCで笑わせる。奔放な振る舞いからステージを楽しんでいることが伝わってくるのだ。

Lily Allen アコースティックでジャジーに聴かせるコーナーもあるし、カントリーな曲もある。また、カイザー・チーフスの"Oh My God(オー・マイ・ゴッド)"をカヴァーしてEverything's Just Wonderful(エヴリシングス・ジャスト・ワンダフル)につなげたり、アンコールのラストはブリトニー・スピアーズの"Womanizer(ウーマナイザー)"を取り上げ、そのセンスも何物に縛られることなく自由だ。

 本編ラストは"Fuck You(ファック・ユー)"。この曲はジョージ・W・ブッシュに対してかわいい声で「ファック・ユー」と中指を立てるものなのだけど、お客さんが一斉に「ファックユー!!」の大合唱。それがほとんど女の子の声だったので、思わず笑ってしまった。

 アンコールは白いタンクトップに着替えて現れ、みんなが待っていた"Smile(スマイルへ)"。後半はドラムンベースに改造されたアレンジだった。可愛くも見せるし、暴れることもできる。こうしていろいろ書いているけど、要するに彼女が、非常にかわいいんですよ。なぜそんなにかわいいのか、自由な感性と実力が備わっていて、それ自体がメッセージを発しているけど、押し付けがましくない。観る人の心に忍び込む魔女っ子というべきか。それは今度のフジロックで証明されるからぜひ。

-- set list --(原文のまま)

Everyone's A Tit - House Remix / I Could Say / Never Gonna Happen / Oh My God / Everything's Wonderful / Hymn / Who'd Have Known / LDN / Go Back To The Start / He Wasn't There / Little Things / Chinese / 22 / It's Not Fair / Fuck You

-- encore --

Smile -Drum & Bass / The Fear - Day & Night / Womanizer
Lily Allen

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