イン・ディス・モーメント @ 名古屋クラブクアトロ (18th May. '09) with ヘッド・フォン・プレジデント & クロスフェイス
三者三様の激しさを堪能
米国メタルコアシーンに新風を巻き起こしているイン・ディス・モーメント、そして箱庭的な独特のパフォーマンスで人気を集めるヘッド・フォン・プレジデント。フロントマンに絶対的な女性ヴォーカルを擁すこの2バンドに加えて、大阪でめきめきと頭角を現している新鋭・クロスフェイスを迎えた今回。ここ名古屋の客入りはやっぱり厳しいものだったけども(それでも結構いたとは思うが)、昨今話題になっている三者が集まっただけあって、それぞれの激しさが衝突しあうこのライブは非常に熱いものになった。
先陣を切って登場したのが、平均年齢がなんと19歳という大阪の5人組メタルコア・スクリーモバンドのクロスフェイス。まずはその勢いの良さに面喰らう。ザクザクと切り進むリフに激しく畳み掛けるリズム、絶叫に次ぐ絶叫。ここまでだと既存のバンドにも多くいると思うが、そこに加えられたシンセの煌きがとても新鮮な印象を残してくれる。例えるならば、アズ・アイ・レイ・ダイイング(アメリカの超有名なメタルコアバンドです)にデジタルな装飾を施した感じであろうか。しかしながらスクリーモ寄りのキャッチーさがあるし、メロディの奥底に見えるドラマ性もなかなかどうして説得力がある。確かに衝撃的だ。ただ、激しいサウンドの中に時折見せる爽やかさ(MCもそうだったけど)がどうにもミスマッチに感じられたりする部分も。しかし、その辺りもこれからの成長でステージの見せ方も変わってくるだろうと思う。とりあえず今日は、話題の新星をこの眼で拝めただけでも十分だ。5曲で約20分ほどのライブであったが、十分に印象に残る熱演であった。
続いては昨年もイン・ディス・モーメントのサポートを務め、メタルフェスティヴァルのラウドパーク08に日本人で唯一出演した5人組オルタナティヴ・ヘヴィロックバンドのヘッド・フォン・プレジデント。眼の前で繰り広げられた言葉を失う程の激しくも悲痛なパフォーマンスには会場全体が金縛りにあっているかのようであった。かのコーンを髣髴とさせる7弦ギターと5弦ベースからなる重量級ヘヴィネスとそこに乗る女性ヴォーカルANZA(アンザ)の艶かしくも壮絶な叫び。ダークかつメランコリックな詩情を挟みながらも、その重苦しく鬱々とした世界が生々しく眼前に迫り、ゆっくりとそこに引きずり込まれていく。やはりその中で眼を釘づけにしたのはANZA(アンザ)のパフォーマンスだろうか。激しいヘッドバンキングを見せたり、ロングスカートを振り乱したりと感情赴くままに外へと表現。その叫びにしても痛々しいぐらいに伝わってくるのだ。その表現力の多彩さが、バンド自身の世界観により一層の深みをもたらし、息を呑むようなライブパフォーマンスへ繋がっている。確実にこのバンドとわかる音と世界、それがヘッド・フォン・プレジデントのライブから滲み出ていた。それができるバンドは本当に強い。自分も終始魅了されっぱなしのライブであった。
ラストはもちろん、イン・ディス・モーメントの登場。何やらやたらメタル臭い格好と容姿の男4人が脇を囲い、中央には黄色いドレス(超ミニスカで胸元が開いている)に身を包んだ一輪の花・マリアが陣取る。噂通りの巨乳だなとか、遠巻きに見て思いつつも右腕に彫られたタトゥーの鮮やかさも何だか眼に焼きつく。そんな危険な薫りをも放つステージ上の5人からはやっぱり迫力のあるライブが繰り広げられたのだった。
パワフルな演奏と激しくも可憐なマリアのヴォーカルは、確かな衝撃と破壊力を有しており、体を小刻みに揺らしてくれた。女性ヴォーカルのメタル系バンドといえば、ゴシック的な要素が混じった耽美なバンドが多いけれども、イン・ディス・モーメントはハードロックからメタルコアまで通ずる攻撃力が核として備わっている。重たいサウンドと美しいメロディの交錯、激しいスクリームとしっとりとした歌、その両方の魅力がしっかりと伝わってくるのだ。とはいえ、本日はセカンド・アルバムからの選曲が多かったので、キャッチーな印象の方が強かっただろうか。しかしながら、華やかなスポットライトを独占しているかのようなマリアの輝きぶりは聴衆の目を釘点けにしたことだろう。MCでは彼女達の陽気なキャラクターも垣間見えたのも嬉しいところ。1時間にも満たないライブであったのだが、きっと集まった観客も充実感を持って家路へつくことができただろう。今日出演した三バンドの動向から今後も目が離せそうにない。
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report by takuya, photos by takumi
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