レイド・ワールド・フェスティヴァル @ リキッドルーム恵比寿 (16th May. '09)
feat.モノ、 ペリカン、 ライト、 ワールズ・エンド・ガールフレンド
ペリカン
--地と空を圧する屈強なヘヴィネス--
海外から迎えているからトリを飾るのだろうか?と思っていたら3番手で姿をみせたのがペリカン。シカゴ出身のヘヴィ・インストゥルメンタルバンド4人組だ。Mono(モノ)とは12インチスプリットや全米ツアーを共に周るなど長年の付き合いがあり、お互いをリスペクトし合っている。ペリカンが2005年に初めて来日公演を行ったときもモノが関わっていて、本当に深い絆で結ばれている2組なのだ。
そのペリカンは今までに2度の来日公演を行っており(本日で3度目)、ここ日本にも愛するファンが数多くいる(その一人は紛れもなく私)。ひたすら攻めてくる重厚なギターリフ、幻想的なメロディが麗しく響くその様は激しさと美しさの両方をしっかりと兼備。便宜上、ヘヴィ・インストと記述しているものの、ポストロックとはまた違うその雄大な重さとリリカルな側面が際立つサウンドはもっと多くの人が受けいれるべきではないかと感じさせるバンドだ。そのサウンドは、先月レビューさせていただいたアイシスを起因として世界中に広まっている"ポストメタル"なるジャンルの代表格としても捉えられている。特に季節の移ろいや自然の表情を音楽で壮大に描ききったセカンド・アルバム『ザ・ファイアー・イン・アワ・スローツ・ウィル・ベコン・ザ・ソー』は収められた7曲が虹の輝きとなって聴き手を恍惚へと導く名作なので気になった方は是非とも耳にしてもらいたい作品だ。
しかしながら、本日のペリカンはそんな迫力の大轟音と神秘的静寂の織り成す壮大なサウンドスケープを聴かせるわけではなかった。この日の会場にて50枚限定で販売されていた新作EP『Ephemeral(エフェメラル)』の趣向に合わせた豪腕で屈強なヘヴィネスを軸にしたライブを披露。オープニングを飾った"ブリス・イン・コンクリート"から力強く重たいリフを塗り重ね、漆黒の音壁をあちこちに乱立させていく様がとても強烈だ。これまた今日の出演バンドの中では破格と呼べるぐらいの重さと威力のある轟音を使った縦衝動が体を揺らしにかかる。ステージ上の4人も自分達の鳴らす音に導かれているかのように激しいヘッドバンキングをしながら演奏しているのも印象的。ペリカンというバンド名やメンバーの容姿からしてどうしたらそんなヘヴィなサウンドが生み出させるのかと不思議に思った方も多いことだろう。続いては新作からの2曲を立て続けに披露したが、ずっしりとした音圧が黒いうねりとなって聴覚に襲い掛かってくる様もとてつもない迫力。それには唖然とする他ない。
滑らかな情感を持った"ファー・フロム・フィールズ"の後には、なんとドローンメタルの始祖・アースのカヴァー曲までもを披露。密度の高い轟音爆撃による圧迫感が言い知れぬ快楽を誘っていた。そこから一段と音の威力を増していった激しい終盤は、実に圧巻。"オーストラレイシア"では凄まじいまでの轟音風景の中を、ヴァイオリンの弓を使ったボウイング奏法による繊細な感情表現や最後の最後にやってくる圧倒的に美しいエンディングが恍惚とするような感動を運び、ラストとなった初期のナンバー"ザ・ウッズ"では荒削りなヘヴィネスが10分以上に及んで地と空を圧していた。こういった創初期の曲を終盤に演奏する辺りに今のペリカンの趣向を感じさせるなあと心の中で思いつつ、1時間を越えるショウは完結を迎えたのであった。
静と動による濃淡のグラデーションで組み上げる美しくも壮大な音絵巻で聴き手を圧倒する、あの感じを少なからず期待していたのだが(本日のイベントの趣向からしてもそっちの方がウケたように思う)、この日のように"豪腕なペリカン"というのもまた一つの魅力として受け止められただけでも遠路はるばる伺った甲斐がある。これから4枚目となるニューアルバムの製作に取り掛かるそうだが、今からその発売が待ち遠しくなるような素晴らしいライブであった。
-- set list --
Bliss In Concrete / Embedding The Moss / Ephemeral / Far From Fields / Geometry Of Murder / Australasia / The Woods
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