レイド・ワールド・フェスティヴァル @ リキッドルーム恵比寿 (16th May. '09)
feat.モノ、 ペリカン、 ライト、 ワールズ・エンド・ガールフレンド
ライト
--比類なきスリリングな音と熱--
昨年、エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイを迎えて大好評を博した、Mono(モノ)が主催するインストゥルメンタル・ロックの可能性を示す祭典『レイド・ワールド・フェスティヴァル』が約1年ぶりに開催された。第2回となった今回は渋谷から恵比寿へと場所を移しての公演で、そこに集まるバンドも去年同様に豪華である。モノの盟友であるシカゴのヘヴィ・インストバンドのペリカンを海外から迎え、国内からは第1回にも出演したメルヘンチックな奇才音楽集団ワールズ・エンド・ガールフレンド、国内外で話題を集める攻撃的インストバンドのライト、そしてもはや説明不要のモノという4バンドが一堂に会すものとなった。今回もまたソールド・アウトとなった本公演もやはり事前から注目度が高かったのだろう。いや、言葉はなくとも雄弁な音を操るこの4バンドが集まれば、それも必然である。個人的には、恵比寿の一角がちょっとした震源地となった先月の超轟音祭典『リーヴ・ゼム・オール・ビハインド』の余韻に未だ浸り続けている中だったが、そこからの解放へと導いてくれるような一夜となった。
トップバッターとして登場したのは意外にもworld's end girlfriend(ワールズ・エンド・ガールフレンド)。ツインギターにサックス、ツインドラムという異色の編成によるサウンドとスクリーンに映し出された映像が織り成す耽美かつ破壊的な情景。それらが次々と感覚を刺激していく様は実に圧巻だった。CDを聴いた印象だともっとメルヘンチックな世界観を醸していたのだが、それはライブになると全く別物。轟音と静寂、破壊と再生、それらが終始繰り返されるライブは極めて芸術性の高いものであり、人々の脳裏に強く焼きつく凄いものであった。
続いての登場はLITE(ライト)。国内外で積極的に活動を繰り広げるインストゥルメンタル・ロックバンド4人組だ(今日はインストのバンドしか出演していないけども)。ひとえにインストといっても色々いるわけだが、彼等はドン・キャバレロを筆頭格としたマスロックと呼ばれるジャンルに近い。複雑精微な曲の組み立てと楽器陣の緻密な連携による音符の暴風雨がどんどんと耳に雪崩込んでくる。それでいてロック的なダイナミズムと激しさがしっかりと備わっているのだ。その音楽性から国内外で高い評価を受けていて、海外ツアーも何度か敢行。先週には初となるアメリカツアーも成功させた。現在のインストバンドの注目株といえる存在である。
ワールズ・エンド・ガールフレンドの余韻も冷めぬ中、ぞろぞろとステージに姿を表す4人。それにややざわつく中、ギタリストの武田が軽く挨拶を行って本日のライブはスタートする。しかし、その淡々とした登場の仕方とは裏腹にライブは、次々と襲い掛かる爆音による衝撃と凄まじい迫力に満ちたものであった。
繰り出された鋭利なギターリフがその静寂を鮮やかに切り裂き、衝撃を会場の至る所に広げていく。始まりは"EF(イーエフ)"。ツインギター、ベース、ドラムが一体となって凄まじいまでに強烈な音塊を生み出し、それを勢いよく聴き手にぶつけてくる。その衝撃をツインギターが美しく乱れ咲く"human gift(ヒューマン・ギフト)"でさらに高めていく。一人一人の高度なテクニックとバンド全体の見事なアンサンブルから成しえる大迫力とスリル満点のサウンドは興奮を禁じえないものだ。複雑に音符が連なりあう"Tomorrow(トゥモロー)"もまた、息つく暇もない展開で一気に畳み掛けてくる。本日の出演者はどちらかといえば、音が洪水の如く押し寄せてきて微動だにできないという感じが多いが、ライトは激しい衝撃音をもってして身体を揺さぶってくれるのが実に印象深い。
頭3曲を必殺の激烈ナンバーで攻めてグッと会場の熱を高めたところで、初期のナンバーを続けて2曲披露。リリカルな情感が色めき立つこの2曲は一種の安らぎに近いものをもたらしてくれていた。しかし、それでも体が動いてしまうのは、彼等の熱のこもった演奏のせいだろうか。それが確実に会場に伝播している。その揺れを再び大きくすべく繰り出された"Infinite Mirror(インフィニット・ミラー)"では再び強い昂揚感を誘発。あくまで攻めの姿勢を崩さずに、ロックの衝動をしっかりと伝えてくれる。そして、ラストに演奏された"Contemporary Disease(コンテンポラリー・ディズィーズ)"では四者の猛烈なアンサンブルによって生み出された狂熱に全神経が炎上。音の複雑な連鎖からなる猛りによって感覚が丸ごと持っていかれた。
本日の出演者の中では一番演奏時間は短かったが、その強烈な衝動とスリリングな音世界に魅せられた人も数多くいることだろう。自分も何度かライブを拝見しているが、毎回のように興奮させられるし、今回もそうであった。アメリカツアーの疲れもある中で(3日前に日本に帰ってきたばかりだとか)、この素晴らしい熱演に感謝したい。
-- set list --
Ef / Human Gift / Tomorrow / Ripple Spread / Past Three Days / Infinite Mirror / Contemporary Disease
|
|
|