button踊ろうマチルダ/ハッチハッチェルバンド
@ 新宿レッドクロス (5th May. '09)

物語にオチがつく

踊ろうマチルダ
 国内のアーティストに目を向けることはほとんどなかったが、友人からもたらされた噂と動画という便利なツールに、まんまと落ちて行ってしまった……というのは前にも書いた。そして、また、踊ろうマチルダのライヴに行ってしまった。

 踊ろうマチルダはひとりで演奏することもあれば、サポートメンバーの都合がつけば、いくらでも増える。核となるツルベノブヒロ曰く「日雇い」だそうだ。あらかじめ決められたメンバーではないということは、その都度手札が変わり、さらなる楽しみとなる。「意気投合」から日雇いメンバーに加わったという光風(クール・ワイズ・メン)のエピソードにもそれは明らかだ。この日の構成は、ウッドベース、パーカスに、この後トリとして登場するハッチハッチェルバンドから紅一点のアコーディオン、"カワいい〜"藤田まゆみが参加していた。

踊ろうマチルダ この日は「新宿スウィング」というハコ主催のイベントで、オープニングアクトの前肩はシュールな自虐で失笑を誘い、続くマイノリティ・オーケストラは、パーカス寄りのドラムとブラスとアコーディオンからなる若干二十歳前後の若いバンドだった。若いといっても、東欧独特の変拍子をしっかりとモノにしている。軽い気持ちでユーチューブに動画をアップしてみたら、プロデューサーと名乗る人物からの誘いがあり、ロンドンへ行って練り歩いてしまったという逸話ももっている。そのプロデューサーというのがピンク・フロイドのメンバーだった。とんでもないことなんだが、そこはやはり世代なのだろう、怖れ知らずの「ピンクなんとか」呼ばわりに、つい笑ってしまった。

 3番手に登場した踊ろうマチルダは、ツルベひとり、ギターのみで歌われる"夜の支配者"から始まった。「今宵 俺が祈るのは 神でも仏にでもなく……」と始まり、自分のことを一番知っているのは自分、その次は彼女。そこに月が登場し、双方を平等に照らしている、といったもの。「彼女」は荷物を指す「マチルダ」と、実際の体験とのダブルミーニングとなっているのだろう。そんなことを思えば、前回のワンマン@440の時に、人目をはばからず嗚咽してしまったお客さんがいたのも頷ける。もし我が身にゴタゴタがあったら、自分も例外ではない、そんなことを強く思うのだ。

踊ろうマチルダ 続くのは"踊ろうマチルダ"という、名前そのままの「マチルダ」を抱える一人旅を歌った曲だ。一人旅とはいえど、ステージには「日雇い」メンバーが登場し、ツルベの紡ぎだす物語を、さらに膨らませていく。歩む過程で出会いは生まれる。それが荒野の寂しさを紛らすだけの語らいという始まりであっても、意を共にする人との時間は底抜けに楽しい。彼の生み出す楽曲には、そんな想いが根底にあるはずだ。にもかかわらず、巡り巡って落ち着いて、プロポーズを綴る"マリッジイエロー"が最後に待っていた。ストレートに「おいらと結婚してくれ」と歌われるから、たまらない。すべてを経たうえでの直球勝負に、こころをさらわれないわけがない。

 つい誰かれを誘いたくなるのは、彼が酸いも甘いも噛み分けつつ、自分の弱さをさらけ出すからだ。哀愁を感じさせる声と相成って、たまらないほどに響いてくる。小説のような世界へ入り込むような感覚を是非とも体験して欲しいと思うのだ。

ハッチハッチェルバンド そんな美しい物語を、勢いでぶち壊していったのがハッチハッチェルバンドだった。ついこないだの「スナック宇宙」で見ていたこともあり、ハッチェルに「厄年なのに底抜けでしたね」とつついてみれば「そうだねぇ〜!」と笑い飛ばす。まったく迷信など気にはしていない、酒が招く失敗やら楽しさやらを、軽快な音に乗せて、どれだけ痛快にイッキ飲みできるかにかかっている。ここまでくれば、人生すらも笑い飛ばすためのネタとして燦然と輝いてしまうのだ。ステージにあがれば、マエストロ……いや、音頭をとっている酔っぱらいという感じで突っ走り、所狭しと飛び回る。ドラム、ウッドベース、ギター、アコーディオン、バンジョーにちょっかいをだし、もちろんお客さんへも矛先は向けられる。フィドルを弾きながら、椅子やテーブルの間をねり歩き、大いに笑って踊り続けるのだ。

 ハッチェルは、裸のアイドルとイタリアでぶっかました大臣が大げさに取り上げられたことに対し、よくあることだと笑う。その笑いの裏には、批判ありきで作られるメディアのズレた感覚への皮肉がある。彼らの中にしっかりとしたものさしがあるから、こちらもバカ笑いできてしまうのだ。

 ラストはハッチェル発案で、出演者を集めての大騒ぎとなった。前肩は突然のことで女の子に戻り、マイノリティ・オーケストラは酒飲みの洗礼を受け、ツルベも小説の世界から離れて絶叫し、ハッチハッチェルバンドはしてやったり。すべてが笑み色に染まって、新宿のはずれの夜はふけていった。

踊ろうマチルダ
踊ろうマチルダ・ツアースケジュール

09/05/06(水祝)@新宿 Red Cloth
09/05/08(金)@新宿 LOFT(bar space)
09/05/10(日)@千葉 流山 アンティグア
09/05/10(日)@神奈川 新百合ヶ丘 Bar Chit Chat
09/05/17(日)@東中野プリズントーキョー
09/05/19(火)@横浜 Thumbs Up
09/05/23(土)@大阪 南森町 Bar Shelter
09/05/24(日)@三重 菰野 Cafe COB
09/05/30(土)@渋谷 Wasted Time
09/06/05(金)@新高円寺 STAX FRED
09/06/07(日)@神奈川 新百合ヶ丘 Bar Chit Chat(Jim Bianco Japan Tour 2009)
09/06/09(火)@松山 Bar Caezar 09/06/13(土)@神奈川 逗子 Bar ランテルナロッサ
09/06/15(月)@下北沢 440
09/06/19(金)@横浜 Thumbs Up(Jim Bianco Japan Tour 2009)
09/06/22(月)@沖縄 宜野湾 ロックジャミン
09/06/24(水)@沖縄 具志頭 虹亀商店
09/06/26(金)@沖縄 宜野湾 プチ☆カフェ
09/06/27(土)@沖縄 那覇曙 Royde
09/06/30(火)@沖縄 浦添 Bar Scarab
09/07/17(金)@京都 磔磔
09/07/18(土)@京都 磔磔
09/07/22(水)@名古屋 得三

詳細はこちらでご確認ください。
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button物語にオチがつく (09/05/05 @ Shinjyuku Red Cloth): review and photos by taiki
button旅はマチルダと共に (09/04/29 @ Shimokitazawa 440): review and photos by taiki


buttonmag files : Hatch Hachell Band

button物語にオチがつく (09/05/05 @ Shinjyuku Red Cloth): review and photos by taiki
buttonphoto report (06/06/21 @ Kobe Mersey Beat): photos by tommy
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Odoro Matilda

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The latest album

踊ろうマチルダ

"Hush"
(国内盤)


previous works
as Nancy Whiskey
"Parade For Junjman" (国内盤 / iTunes)
as 釣部修宏
"平成トラッド" (国内盤)
The official site

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http://officebarbecue.com/




The latest album

踊ろうマチルダ

"オツなひととき"
(国内盤)

previous works
Nancy Whiskey

"ハムとワイン"
(国内盤)




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button2009

button物語にオチがつく : 踊ろうマチルダ/ハッチハッチェルバンド(5th May. @ 新宿レッドクロス)
button求める側から与える側へ : 川村カオリ(5th May. @ 渋谷 C.C.レモンホール)
button旅はマチルダと共に : 踊ろうマチルダ(29th Apr. @ 下北沢440)
button音と笑いと満腹と : ブラッデスト・サキソフォン(25th Apr. @ 下北沢440)
button『アウトロ』 : リズム・エクスプロージョン(21st Mar. @ 渋谷クラブ・エイジア)
buttonゲットーのディスコにて(復刻)~うたは自由を目指す : 犬式 a.k.a.Doggystyle(08th Mar. @ 渋谷オー・イースト )
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button2008

button猫も杓子も大暴れ : タートル・アイランド(16th Nov. @ リキッドルーム恵比寿)
button言葉と行間の引力 : 犬式 a.k.a.Doggystyle(14th Nov. @ リキッドルーム恵比寿)
button45年の歴史が弾けた2時間超 : ザ・スカタライツ(4th Oct. @ 朝霧アリーナ)
button「リスペクト!」につつまれたパーティ - : イントロザ・トロージャンズ・フィーチャリング・リコ・ロドリゲスザ・スカタライツ(28th Sept. @ 新木場スタディオ・コースト)
buttonfeatures : nbsa+×÷
(14th Sept. @ 新木場スタディオ・コースト)
button闇市の祈りとレジスタンス 渋さ知らズ・オーケストラ、シンク・オヴ・ワン・ウィズ・キャンピング・シャアビ & バルカン・ビート・ボックス (6th Jul. @ 日比谷野外音楽堂)
button指は世界を駆け巡る : ロドリゴ・イ・ガブリエラ (30th Mar. @ 渋谷デュオ・ミュージック・エクスチェンジ)
buttonfeatures : バスク・レポート : intro - バスクの地べたから / -ガステッツァ(gaztetxea)- 不法占拠というより秘密基地 / パンクなメタルに汗をかく / ガステッツァと共に / ダメな大人のバーで / オフ日の息抜き / 火の手があがる消防署 / ゲリラは自然の中から / 無名人との交流(9th to 21st Jan. バスクにて)
buttonCD Review : ワンダフル・ワールド : リコ・ロドリゲス (8th Jan.)


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