リーヴ・ゼム・オール・ビハインド @ リキッドルーム恵比寿 (19th Apr. '09)
feat.アイシス、サン O)))、ボリス、エンヴィ、グロウイング
アイシス
--至福と戦慄--
サン O))) の凄まじい音圧による残響が耳をヒリヒリと刺激する中、この恵比寿超轟音祭『リーヴ・ゼム・オール・ビハインド』の最後のたすきを受け取ったのはアイシス(実はフジロック06にも参加していたりする)。今日の一癖も二癖もある個性的な出演者からすると、ヘッドライナーとして収まるのはおそらくこのバンドを置いて他にいないだろう。その鉄壁のアンサンブルから成る孤高の世界は、まさしく今日のイベント名通り"全てを置き去りにする"。今回のライブは最新作となる『ウェイヴァリング・レイディアント』に伴ったワールド・ツアーの初日にあたるものだったが、そこからの出典をメイン(全7曲中4曲が新作から)に練り上げた見事な構成は、五感を揺るがすものであったのはいうまでもない。
相変わらずスゲーライブを見せてくれるバンドだ!と早くも1曲目の"ホール・オブ・ザ・デッド"が終わったときにそう思ってしまった。ゆったりとしたリズムの中に浮かび上がる静と動。炸裂する轟音は大地の裂け目を見せ、漂う繊細なメロディはしっとりと空間に染み込んでいく。この静と動の振り幅の大きさと絶妙なバランスから成り立つ"美しいまでの轟音"はやっぱりアイシスというバンドの特徴であるんだけど、それに加えてバンド全体で爆発したときのとてつもないエネルギー、緻密かつ有機的グルーヴに飲まれる様な感覚はライブになると一層の凄みを増す。否が応にもステージの5人同様に、頭を大きく動かさざるをえないし、一つのクライマックスに到達したときのあの感動には魂が震える。
曲間には一言も挟むことなく、念入りにチューニングをしつつ、集中力を高めて次の曲へ。会場を包むシリアスな緊張感もそれに合わせるかのように膨張を続けていく。
決してわかりやすいサウンドではないのだが、気付けばグイグイと彼等の創り出す世界の中に引き込まれている。その求心力といい、意識の裏側にも届くような深い陶酔感といい、やはりこの人達は別格。静と動の骨格はライブになるとより鮮明になり、なおかつその奥行きとダイナミクスは次元の違うものへ。さらにいえば、音だけにとどまらず、空間やそこに流れる気、会場に集まった人間の心までもを完全掌握し、自在にコントロールしてしまうかのような達観ぶり。バンドの結成から十年が過ぎたこともあるが、音の求道者としてのさらなる円熟がそこからは感じられた。また、叫びだけでなく、歌うアーロン・ターナーの存在感の大きさも前回見たとき以上に強く感じさせられたのも嬉しいところだ(髪と髭のモジャモジャな成長振りにも目を見張るものがあったが)。
『音の粒子までもが見える』という言い得て妙な形容が彼等のライブの語り草となっているが、それをものの見事に表している"イン・フィクション"においては、神秘性と混沌の入り混じった奇跡に立ち会うことができた。披露された新曲群にしてもまるで初日とは思えないぐらいに違和感なく溶け込んでいたのも印象的。
アンコールでは、なんとファースト・アルバムから初期の代表曲"セレッシャル"をプレイ。無慈悲なスラッジコアの殺伐さとした前半から、ヘヴィネスの奥深さを痛切に伝える後半へと流れ込むこの曲はバンドの懐の深さを思い知らせるのに十分。『凄い』、ただただ、その想いが体中に広がっていった。
彼等のライブを体験するのは今回で2度目だが、終わったときには前回同様に共に完全に打ちのめされていた。己の世界を突き詰め、さらなる高みへと登り詰めていく孤高の存在・アイシス。威厳と貫禄に満ちた1時間強のステージは、今日集まった全ての人間に確かな痕跡を残すものであった。
時計を見ると既に開始から6時間が経過。しかしながらその時間は非常に濃密であったといえるだろう(もちろん、耳へのダメージは半端ないが)。決してこれから先もこの手のリスナーが飛躍的に増えるとは思わないが、ソールド・アウトで大成功だったイベントだっただけに、じっくりと温めながら、また第2回を開催していただけたらなあと思う。実際、今日集まった人々はきっとその想いを胸に抱いていることだろう。自分も夢を見ながらこの先の展開を待ちたい。
-- set list --
Hall Of The Dead / Dulcinea / 20 Minutes/40 Years / Threshold Of Transformation / Ghost Key / In Fiction
-- encore --
Celestial
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