リーヴ・ゼム・オール・ビハインド @ リキッドルーム恵比寿 (19th Apr. '09)
feat.アイシス、サン O)))、ボリス、エンヴィ、グロウイング
ボリス
--世界を陥れる先鋭的ヘヴィロック--
続いても国内からで、ヘヴィロックトリオ・ボリスの登場。とはいえ、その活動はもはや国内よりも海外での方が遥かに活発であるといえる。全世界で5万枚以上のセールスを記録している『ピンク』を筆頭に、海外のフェスティヴァルにツアーにと、とにかく引っ張りだこ。 去年にはシングル『Statement(ステイトメント)』がビルボードのシングルチャートで23位を記録。加えてトレント・レズナーの心を射止め、ナイン・インチ・ネイルズの全米ツアーに同行したのも記憶に新しい。ますます世界的な展開を繰り広げているバンドであり、大物からも何かと熱い視線を注がれているバンドなのである。
それにジャンルの垣根を越えた多様な音楽性を志向していることもボリスを語る上では欠かせない。オルタナティヴ、パンク、メタル、ノイズにヘヴィ〜サイケ〜ドローンに至るまで、ロックの様々なエッセンスを凝縮した音塊は聴き手の感覚を鋭く刺激してやまないものとなっている。もはやバンド自体が一つのジャンルといえるかもしれない。そのことから、ロックの中心を突っ走る大文字の"BORIS"と旺盛な実験精神からマニアックな音を生み出していく小文字の"boris"と名義を変えて作品をリリースする試みも近年では目立つ。また、そこから派生して、本日共演するサン O)))や、日本ノイズ音楽の先駆者であるメルツバウなどとのコラボレーション作品も発表している。
あまり日本ではお目にかかれないということもあり、今回のステージを個人的にも心待ちにしていた。この日はステージの中央にダブルネック(ギター、ベース)でヴォーカルも務めるタケシ、下手には紅一点のギタリストのワタ、そして後方にドラムのアツオという不動の3人に加え、上手に海外ツアーでもサポートとして活躍した栗原ミチオを迎えての4人体制(ちなみにこの4人体制で『レインボー』、『クラウド・チャンバー』という作品を発表している)でのライブ。登場したときから演出のために炊かれたスモークが不気味な空間を形成し、ただならぬ気を充満させていた。
内容は去年発売された『スマイル』に伴ったツアーと同じような感じになるんだろうなと思っていたら、全く別物。最初にかました10分を雄に越える曲を始めとして、サイケデリック・ドローンの色合いが強い曲がほとんどの構成。まんま小文字のボリスがやるような感じのライブであったのが印象的だ。曲数自体は1曲が長かったことや時間も限られていたこともあり、3,4曲ってとこだったと思う。けれども妖しげなムードは時間と共に助長されていき、それに導かれるように意識が知らぬ間に現実から遠のいていく結果に。 しかし、所々ではタケシやワタの繊細な歌声が哀愁を感じさせ、アツオの多彩なドラミングが目を釘付けにし、栗原ミチオのギタープレイが渋い存在感を放っており、全く隙が無い。終盤ではサウンドがさらに重厚かつサイケデリックになっていったのも半端ない衝撃で、ある種の神々しさすら纏った巨大な轟音の前に立ち尽くすほか無かった。あのスモークの前では前方をしっかりと確認するのはいささか困難ではあったが、それでもステージから放たれるいかんともしがたいオーラは観衆に伝わったことだろう。
途中からワタの機材にトラブルが発生したことは非常に残念ではあったものの、それでも彼等のライブが優れていることに疑いの余地は無し。海外での熱狂っぷりを裏付ける確かなものがここにはあった。
-- set list --
Missing Pieces / 虹が始まるとき /
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