Smashing Mag / Lila Downs (リラ・ダウンズ） @ Gibson Showroom, L.A. (7th Apr. '09)

　日本からロスに飛んでまで体験したくなったリラ・ダウンズのライヴなんだが、その一発目はプロモーションのショーケース。ギター・メーカーとして有名なギブソンのショールームで開かれている。当然ながら、時間は短く、業界人がやってくるだけだというので、多くのものを期待してはいなかった。実際のところ、リラもほとんどノーメイクで、ステージ衣装も身にまとってはいない。ソールドアウトとなった翌日、9日のロイズ・ホールでのショーアップされたステージとこれを比較することはできないんだが、それでも、アルバムを遙かに超えてダイナミックに響くリラの世界を垣間見るには充分だった。

　ここで初めてバンドのメンバーに会うことになるんだが、全米のみならず南米からも集まっているインターナショナルな顔ぶれに驚かされることになる。要となるのは、リラのパートナーで、マネージャー、同時にプロデューサーでもあるリード楽器のポール・コーエン。フィラデルフィア出身の、ジャズ・ピアニストであったというバックグランドが、ときおり見せるジャズ的な展開を生み出しているのは明らかだ。特に、そういったアプローチが全面的に感じられるのが、97年に発表された『La Sandunga』。チャンスがあればぜひ聞いていただきたい傑作だ。

　メキシコ的なタッチといっても、リラの場合は南部オアハカのルーツ・ミュージックが根底にあるということを学んだんだが、そこがヴォーカリストでもある母親の出身地でもあるとのこと。おそらく、そんなサウンドについて大きな役割を果たしているのがパラグアイ出身のハープ奏者にして、ヴァイオリンやギターも演奏するセルソ・ドゥアルテ(Celso Duarte -->My Space)だろう。メキシコ国立音楽院で学んだ彼がのルーツ音楽に対する愛情は、そのインタヴューを見ると明らかで、それが彼女の音楽によりオーセンティックな響きを与えているのではないかと思う。さらに、ブラジル出身でニューヨーク在住のアコーディオン奏者、ロブ・クルト(Rob Curto -->My Space)が加えるタッチも大きい。加えて、ラテンからジャズの世界で活躍するパーカッションのサムエル・トレス(Samuel Torres -->My Space)とドラムスのヤヨ・セルカが鉄壁のリズムを叩き出している。

　おそらく、ジャズ・ファンク系ではないかと思うのが、ギターのフアンチョ・エレラ(Juancho Herrera -->My Space)とベース。後者はカルロス・ヘンダーソンといって久保田利伸と演奏しているという話も耳にしている。加えて、日本人の母に中国系アメリカ人を父に持つダナ・レオン(Dana Leong -->My Space)がここに加わっている。なんでも彼はバルカン・ビート・ボックスのメンバーでもあり、最近発表された彼のソロ・アルバム、"Anthems of Live（アンセムズ・オヴ・ライフ）"が打ち出しているのはヒップホップ・ジャズ。おそらく、アシッド・ジャズの流れを受けたジャズ・ノット・ジャズの路線なだろうが、ジャズをベースにしたポール・コーエンといいバランスでジャジーでファンキーなタッチをバンドに与えているのだと思う。

　いずれにせよ、彼らの魅力を100％感じることになるのは、翌9日、ロイズ・ホールでのライヴ。ここで、圧倒的な存在感を見せるリラの神懸かり的なパフォーマンスに腰を抜かすほどに驚かされることになる。