ストーリー・オブ・ザ・イヤー @ 名古屋クラブクアトロ (17th Mar. '09)
笑顔を咲かせるスクリーモ
スクリーモの救世主としてシーンに登場し、ここ日本でもかなりの人気を誇るストーリー・オブ・ザ・イヤー。去年、なぜか東京でしか行われなかったテイスト・オブ・ケイオス・ツアーで来日したばっかじゃねえか的な話も聴こえてくるが、それは東京での話で名古屋では約3年振りとなるライブである。ライブの最中にも彼等自身が発言していたが、ここ名古屋では通算4度目となる公演。ソールドアウトを記録した2006年の公演に引き続いての大入りとはならなかったが、本日も待ちわびた人々の数は満杯近くまで膨れ上がっていた。
オープニングアクトのマイ・ラスト・フォールのフレッシュな演奏の約30分後に、ストーリー・オブ・ザ・イヤーのメンバーがBGMにのって颯爽と登場。始まりは代表曲の一つである"アンド・ザ・ヒーロー・ウィル・ダン"で早くも割れんばかりの歓声と数多くの拳が突きあがり、会場は沸騰寸前。続いてストレートなパンクサウンドが気持ちいい"フォーリング・ダウン"でさらなる興奮を誘ってくる。弾けるような躍動感、突き抜けるような昂揚、自然と体を動かす強烈な衝動、凄まじいまでのパワー、これぞ紛れも無い彼等のライブ。ステージを目一杯走り回りながらも激しい演奏と凄まじい絶叫、そこにふと差し込まれる美メロが実にらしい。とりわけライブにおいてのサウンド面の筋肉増強っぷりが凄く、骨太いリズム隊のゴリゴリ感が地鳴りのように響いてくる。CDではもっとパンキッシュなノリがある印象を受けると思うが、ライブだとかなりラウドな演奏になるのが特徴的。繰り出される激しい音を前にして、頭空っぽにして暴れまわることができるのは非常に爽快な気分だ。フロアの真ん中辺りで喜んでモッシュしている方々、次々に飛んでいくダイバーはさぞかしストレスを発散する楽しい時間を過ごせたことだろう。会場のうねるような盛り上がりは見ているだけで微笑ましい。
4曲目に演奏された「アワ・タイム・イズ・ナウ」でも相変わらずエネルギー全開で畳み掛けてくる姿勢に気圧されたが、終盤では流麗なキーボードの音色やテクニカルなギターソロをさも当然の如く導入している辺りに、百戦錬磨のライブをくぐり抜けてきた成長を感じさせられた。今回のライブでは初期の曲で結構こういったアレンジが見られて個人的にはハッとさせられた印象がある。曲間のMCにしても、異国ではとりあえず下ネタで観客とのコミュニケーションを取ろうぜ!的なノリで笑わせてくれる姿勢も相変わらず素晴らしい(笑)。このように積極的に観客との距離を縮めようとするのもこのバンドの親しみやすいキャラクターに繋がっている。
実は2006年に行われた彼等の来日公演を見に行き、その時のパフォーマンスが目に焼きついていたので今回も当然のように足を運んでしまったのだが、本日のライブを見て、改めて"外れ無し・鉄板"のステージを披露する印象がより強まった。ドライブ感の強い"テイク・ミー・バック"、美メロを鳴らすイントロからサビで一気に弾ける"ウェイク・アップ"、ノリの良い疾走感が心地よい"ステレオ"、無骨な味わいのある"サイドウォークス"といった集大成的なセットには新旧ファンも納得だろう。実に充実した疲労感が体に積み重なっていく。
こんな目一杯熱いステージが繰り広げられた中で最後に演奏されたのはバンド随一の名曲である"アンティル・ザ・デイ・アイ・ダイ"。イントロの切なげなリフが響いた瞬間から大歓声が上がったこの哀愁漂うミドルチューンでは、始めから終わりまでバンドと観客が一体となった大合唱で喜びを分かち合う結果に。さすがにこれには私自身の胸も熱くさせられた。こういった感動的な幕引きも意外と彼等には合っており、非常に興味深いものだった。
しかしながら、彼等のファンサービスは演奏終了後も止まらず、ヴォーカルのダンは最前列にいた観客と時間が許す限りのハイタッチを繰り返し、ギタリストの一人は5分程度ドラムで名残惜しそうにアドリブをかまし続け、陽気な笑顔を咲かせていた。そういう微笑ましいパフォーマンスもやはりこのバンドが愛される所以だろう。ここまでライブの楽しさを本気で伝えてくれるスクリーモバンドも珍しい。『ライブを楽しみたいなら、ストーリー・オブ・ザ・イヤーを見に行こう!』という言葉が3年前と同様に再びよぎる良いライブに立ち会えたのにとても満足だ。
-- set list --
01. And the Hero Will Drown / 02. Falling Down / 03. The Antidote / 04. Our Time Is Now / 05. Anthem of Our Dying Day / 06. Take Me Back / 07. The Black Swan / 08. Wake Up / 09. Canonball / 10. Stereo / 11. Choose Your fate / 12. Sidewalks / 13. In the Shadows / 14. "Is This My Fate," He Asked Them
-- encore --
15. Welcome To Our New War / 16. Until the Day I Die
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なお、写真は3月11日の大阪公演のものを使用しています。
report by takuya and photos by takumi
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