ザ・50回転ズ @ 赤坂ブリッツ (3rd Mar. '09)
ロックンロールの基準へ
3月にもなっているのに冬のように寒く、ライヴ当日に降っていた雨は夜更け過ぎに雪へと変わっていった。そんな中、赤坂ブリッツには、50回転ズの単独ライヴを観るためにたくさんのお客さんたちが集まっていた。フロアは後方までは埋まらなかったものの、ステージ前には大勢のお客さんたちがスタンバイしてライヴが始まるのを待っている。50回転ズは「ザ50回転ズのビックリツアー!!」というタイトルで日本中を巡り、この東京と2日後の大阪でツアーを締めくくることになっていた。
定刻の19時頃に場内が暗くなりオープニングSEが流れる。一瞬別の曲が流れるも、すぐにいつも流れるドクター・フィールグッドの"Riot in Cell Block No.9"が大音量で鳴り響き、メンバーが登場する。聞くところによると、このツアーからポーグスの曲で登場しているらしかったのだけど、なぜかこの日はドクター・フィールグッドだった。
ライヴは"ゴキブリ讃歌"でスタートした。ステージの前にお客さんが押し寄せる。始めからテンションが高く「イェー! イェー!」と大合唱に。その姿を見て目頭が熱くなった。それは、約4年前、ガラガラの渋谷クロコダイルからここまで来たのかという感慨に襲われたからだ。彼らの音楽が急速に多くの人たちの耳に入ることになり、バンドが成長していく様子を見ることができた。もちろん、この日もソールドアウトではなかったわけだから、まだまだなんだけど、こうしたステージに立てることができるようになったのだ。
2月頭にドラムのボギーがライヴを離脱するもバンドはサポートを起用してツアーを続行。しかし、サポートを起用したのは岡山と福岡でのライヴだけで、以降はボギーが復帰となった。ダニーが「不治の病から復帰したボギー君!」と紹介してから"レッツゴー3匹!!"を演奏したとき、やっぱりこの3人が揃わないと、という思いがこの歌と重ね合わさり、また目頭が熱くなったのだ。次の曲がボギー健在を告げる"耳鳴りロック"でリードヴォーカルを取る。
この日のライヴは基本的にアルバム『50回転ズのビックリ』からで、要所に以前の曲も演奏するベストな選曲。冤罪を取り上げた"無実の男"や現在の状況を歌う"ぶちこわせ!"は、ライヴで聴くと一層の迫力を持って迫ってくる。中盤は、ダニーはバンジョーを、ドリーがエレクトリック・アップライト・ベースに持ち替えてアコースティックセットへ。まずはバンジョー早弾きに挑戦するお遊び的なコーナーから、「俺たちとお前らと中川元大臣に捧げる」"酔いどれマーチ"、高田渡のカヴァー"銭がなけりゃ"、そして"故郷の海よ"と勢いだけでない「歌える」50回転ズの側面を見せてくれる。こういうところで高田渡を持ってくることが50回転ズらしいところだ。
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"グローリー・グローリー"からエレクトリックギターに戻る。"たまにはラブソングを"やラストの"Youngers On The Road"〜"Thank You For Ramones"〜"50回転ズのテーマ"の盛り上がり、一体感はすごかった。たくさんの拳が上がり、ダイバーたちがモッシュの上を飛んでいく。一旦、ステージを退き、アンコールに応えて"We Are The Kids"と"Beer Love"を演奏する。演奏が終わると客電が点き、おそらくキャロルか何かの曲が流れ、お客さんたちもフロアから減っていく。だけども、残った人たちが熱烈に再びのアンコールを要求。そして、2度目のアンコールに応えて"おさらばブギウギ"。どっとお客さんもフロアに戻り最後の熱狂の渦を作り出す。コール&レスポンスもちゃんと決めて29曲を完走したのだった。
このところ他の日本のバンドを観ると、自分の中の基準が50回転ズになるので、物足りなく感じることがある。確かに50回転ズよりも、上手いバンドも多いし、格好いいバンドも多いし、楽曲が良いバンドも、アレンジが巧みなバンドも多い。だけども、そうした欠点を補って余りあるほどのパワーが備わっている。50回転ズほど自分を飾らずにさらけ出しながらも、それがそのままエンターテイメントになっているバンドはない。それからちゃんと「言いたいこと」があって素直に作品にしているバンドもない。もちろん、新譜から聞き取れる、冤罪や格差社会を歌ったシリアスな面もそうだけど、「飲みたい」「金をくれ」「ロックンロールが好きだ」「ありがとう」ということをストレートに表明する。格好つけ、勿体ぶって、結局何が言いたいのかわからないバンドが多い中、これほどまでにはっきりと物をいうやつらもいない。そうした総合的な人間のパワーをライヴの度に感じ、それを受け取ることができるのだ。
-- Set List --
01. ゴキブリ讃歌 / 02. Oh! All Night Long / 03. Surfin' Girl / 04. レッツゴー3匹!! / 05. 耳鳴りロック / 06. 納税者より愛を込めて / 07. 少年院のソナタ / 08. 放課後のロックンロール / 09. Money! Money! / 10. ブンブンブン / 11. 無実の男 / 12. ぶちこわせ! / 13. 音調べ / 14. 酔いどれマーチ / 15. 銭がなけりゃ / 16. 故郷の海よ / 17. グローリー・グローリー / 18. ロックンロールフォーエバー / 19. 拝啓、ご先祖様 / 20. 夜汽車のブルース / 21. 1976 / 22. たまにはラブソングを / 23. No No No / 24. Youngers On The Road / 25. Thank You For Ramones / 26. 50回転ズのテーマ
-- Encore 1 --
27. We Are The Kids / 28. Beer Love
-- Encore 2 --
29. おさらばブギウギ
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