デトロイト7 @ 渋谷チェルシーホテル (27th Feb. '09)
美学の中の嵐
この日は自身が主催するライヴハウスでのイベントでトリを務めた。デトロイト7はこれからアメリカ、そしてヨーロッパを廻るツアーがあり、さらに新しいアルバムの発売と、2009年も精力的に活動をしていくようだ。会場である渋谷チェルシーホテルは、お客さんたちで埋まっていた。このライヴハウスは以前、レストランだったはずだけど、そのときの内装が無造作ぽく残って、それがアンダーグラウンドな感じを醸し出す。そのライヴハウスでガレージなロックンロールを聴くというのがよく似合っている。
何度か観る機会がありいつも思うのだけど、デトロイト7が発する音の特徴はわかりやすい。菜花知美のささくれたノイズたっぷりのギター、古田島伸明による官能的なベース、山口美代子が叩き出す切れ味鋭いドラム、この3つの楽器によるシンプルなロックンロールだ。3人の息の合った演奏が疾走していき、そこに菜花知美のハスキーなヴォーカルが乗る。バンドがカヴァーし、ライヴでも頻繁に演奏されるアニメ主題歌である「魔法使いサリー」は、そんなガレージな特徴をよく表していて、初めて観る人にもアピールすることができる。ここまでざらざらした感触のロックンロールに改造できるのかと、バンドの性能を計るにはうってつけの曲だろう。"In The Sunshine"のように怒濤のガレージにも印象的なメロディを残すことができるのも巧みさを感じさせる。
ただ、あまりに演奏が見事過ぎて完成度の高い作品を鑑賞するような気持ちになってしまうのも事実である。確かにステージ前には盛り上がっているお客さんたちがいるし、そうした盛り上がりを要求する音なのであるけれども、何というか、鉄壁を誇る演奏には隙がない。自分たちが演奏するジャンルに対しての愛情も感じられるし、その根っこには豊かな音楽的な教養もある。場数を踏んだだけの安定感も迫力もある。うねる重低音は体を揺らすには十分なグルーヴを生み出しているし、これほどまでに均整の取れたガレージサウンドというのもないと思われる。
しかし、その真っすぐさを見ていると、むしろ、もっとメンバーが敵対し合い、楽器同士が意地を張り合い、バトルを繰り広げてバランスを欠いてこそ、ロックンロールはより輝きを増すような気がしてならない。理想のロックンロールの美学があったとして、その価値観の中でとても優秀な学生の回答を見せられているような感じなのだ。これは単に激しい、スピード感がある、音が大きいという表面に出ているものを超えて、その音の中に説明し尽くせない「謎」を立ち上がらせてほしいと、ついつい贅沢な要求をしてしまうのだ。例えば、何か過剰なものをメンバーが抱えていて、それが不器用な形で表現されていく方がロックンロールを感じさせるのだ。見事な演奏ゆえに、その先のものを見てみたくなるのである。
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report by nob and photos by sam
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mag files : Detroit 7
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