button寿 [kotobuki]
@ 新大久保アールズ・アート・コート (31st Jan. '09)

語り継がれてほしいもの


Kotobuki
「世界から、お父さんやお母さんがいない子どもがひとりでも減って、仕事ができない人がひとりでも減って。そんな世界にしたい。私ひとりで考えてもしょうがないから、みんなそれぞれ考えて」。ヴォーカルのナビィがいった言葉を何度も繰り返し思い出している。

 これまで、どれだけのアーティストにめぐり合いライヴに遭遇してきただろう。そのなかで、終演するまで目を赤くさせてしまったことが果たしてあっただろうか。この日、ライヴの開始から20分もたたずして、涙があふれてしまったのだ。寿の音楽は、意識して掴みにいかなくとも気持ちがひしひし染み渡ってくる。

Kotobuki 興味を持ちはじめたのは、寿魂という一冊の本を手にしてから。彼らの歴史が詰め込んであるヒストリー・ブックだ。ここに散りばめられた事実には、学ぶことがたくさんある。生きる意味、命の大切さ、世界中の人々の想いなど数えきれないほどに。本当は、すべて知るべきことなのかもしれない。また、けっして忘れてはならないことでもある。読み終えたあと、文章を通して教えてくれた彼らの音にふれてみたい。ひとりでも多くの人に彼らの存在を伝えたい。そんな思いを強く感じずにはいられなかった。

Kotobuki そして、ようやく会場となる新大久保アールズ・アート・コートへ。ちょうど開演時間の30分前に到着。受付の近くには、振る舞い酒を受け取ろうと列を作る大勢の人達で早くも賑わいをみせる。ホール入ってみても、すでに100席ぐらい並んだ椅子が満席。観客に座布団を渡し、通路に座るよう誘導するスタッフがいるほど混雑している。

 今回は、年に一度のペースで旧正月に行われる彼らのスペシャル・コンサートだ。バンド編成ということで、ヴォーカルのナビィ、ギター・三味線のナーグシクヨシミツに加えて、パーカッションの渡部亮・横瀬卓哉、ピアノの渡部泰助、コーラスにヴォーカルユニットでもあるココロコの3人、琉球創作舞踊を披露する9人のくわっちーダンサーズを迎えた。まず登場したのは寿のふたり。彼らの合図をきっかけに、幸せを意味する「カリー」という沖縄の方言を皆で声を出し合いスタートを切る。
Kotobuki
 はじめに3曲続けて、"さこだあっぱー"や"真謝節"などの民謡を。ついで、"ひろげよう"の演奏がはじまった瞬間、自分の中にあるさまざまな感情が温かな音楽に合わせて込みだしていく。心の中に浮かび上がるのは、生命が誕生し夢へと繋がる光景。ギター・三味線のナーグシクヨシミツが作る世界観とナビィの歌声が不思議なまでも自然に絡みあっていく。24年間という年月をともに活動してきた彼ら。ふたりであっても、伝えたていきたいことはひとつなのだろう。

 彼らの存在を知ることとなったスマッシング・マグの編集長hanasanのレポート"寿は幸せを呼ぶ"。そのなかに記述されているとおり"シャローム、サラーム"には、やはり考え深いものがある。この曲に入る前「歌いたいうたを歌えることが私にとっての平和」だとヴォーカルのナビィは力強く語りかけてくれた。自分にとっては、なんだろうか。それも改めて考えてみたい。

Kotobuki アンコールには、空中にある喜びをかき混ぜて取り込んでほしいとの願いがある"カチャーシー"。小さい子どもは、父や母、祖母もしくは祖父が踊る姿を真剣な目で眺めながら、真似をするかのように手足を動かしていく。さらに、演奏が終わっても鳴り止まない拍手に応えて、エドウィン・ホーキンスの"オー・ハッピー・デイ"を日本語で披露してくれた。

 あとから聞いた話しだが、ヴォーカルのナビィは体調が悪かったとのこと。けれど、誰かに何かを届けるという想いの大きさは同じであっただろう。寿の音楽や言葉、彼らが旅をしてきて出会った人達の姿。これからも語り継がれてほしいと、そう切に思う。
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