プライマル・スクリーム @ ゼップ東京 (28th Jan. '09)
年を取って身軽になっていく
本編ラスト、「スワスティカ・アイズ」〜「ムーヴィン・オン・アップ」〜「ロックス」の3曲の盛り上がりはすごかった。何度も来日して、その度に演奏され、完全に馴染みになっているこの3曲は、バンドと日本のファンたちとの絆のようなものを象徴しているのだ。「オレタチはオマエラが大好きだ、オマエラもこれが大好きだろ?」という幸せな光景がそこにあった。そこまで日本で築き上げたUKバンドはない。
始まる前、会場で流れていたのは、ポーグス、アバ、トーキングヘッズ、パブリックエナミー、808ステイト、ラモーンズなど、一貫していないけど、彼らのルーツを反映したような選曲で面白かった。開演時間10分押しくらいで、客電が点いた状態でメンバーが登場。すぐに場内が暗くなり演奏が始まる。ステージの背後にはLEDのスクリーンがあり、CGやニュースや映画のワンシーンがコラージュされて映し出されていた。時折、そのスクリーンの中心辺りからレーザービームが放たれる。フロアを光る布で覆ったようになる。
まずは、「キル・オール・ヒッピーズ」でスタートである。ステージ前のお客さんたちは歓声を上げてそれに応える。前半は、「キャント・ゴー・バック」〜「ミス・ルシファー」〜「スーサイド・サリー & ジョニー・ギター」〜「ジェイルバード」と飛ばしていく。改めて思うのは、こんなに盛り上がる曲が多いのかということで、しかも、「ジェイルバード」以外は比較的最近の曲なのに受け入れられているというのはすごい。やっぱり覚えやすいことが最大の要因だろうか。英語のメッセージ的な部分は、日本人に対してダイレクトに伝わるわけではないけど、すぐ口ずさめるようなフックがどの曲にもある。
そうした流れは「ビューティフル・フューチャー」、そしてプライマルのクラシック的な存在である「ハイヤー・ザ・サン」でひとまず頂点を迎える。最新作から過去まで自在に往還する(まあ、本音を言えば、『ソニック・フラワー・グルーヴ』も『プライマル・スクリーム』にも遡って欲しいものなんだけど)。会場には、おそらく『スクリーマデリカ』が出たときに大学生だったと思しき人たちが多数見かけたのだけど、90年代から現在まで彼らと共に歩んでいるのだろう。フジロックなどで彼らを目にする機会が多いし。
そしてギターのアンドリュー・イネスがこれまでよりも目立ったように思えた。マイブラッディ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズと、ロバート・ヤングが不在になり、その代わりにサポートのギタリストとしてリトル・バーリーのバーリー・カドガンが参加するようになったので、古参のメンバーはボビーとイネスになった。そのイネスがノイジーなギターが唸りを上げる場面が多く、それまでだって同じようにプレイしていたのだろうけど、ケヴィンやヤングがいなくなったので、それがバンドを引っ張るようになったのだ。
アンコールはまず「アップタウン」。そして「〜に捧げる」といって「ネクロ・ヘックス」だったのだけど、ボビーがボソボソいってたのでよく聞き取れなかった。セットリストには、曲名の横にはクイーン・オブ・ザ・ストーン・エイジのJOSH HOMME(ジョシュ・オム)と書いてある。確かにCDでは彼が参加しているし、この曲の歌詞にはブラック・パンサー党のボビー・シールに触れたところがある。そして泥臭いロックンロールの「カントリー・ガール」で再びフロアが盛り上がり、最後は「アクセラレーター」でノイジーに飛ばして締め括った。
たしかに2000年代前半のバンドを支えたメンバーがいなくなり、幾重にも折り重なった音の壁の厚みを失い、それに伴ってゴージャス感も薄まった。だけども身軽になったとも言える。メンバーは年齢を重ねるにつれ身軽になり、ロックンロールで突っ走れるのはある種の奇跡といえる。
-- set list --
Kill All Hippies / Can't Go Back / Miss Lucifer / Suicide Sally / Jailbird / When The Bomb Drops / Beautiful Future / Higher Than The Sun / Beautiful Summer / Deep Hit / Exterminator / Suicide Bomb / Sick City / Shoot Speed / Swastika Eyes / Movin' On Up / Rocks
-- encore --
Uptown / Necro Hex / Josh Homme / Country Girl / Accelerator
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report by nob and photos by sam
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mag files : Primal Scream
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