buttonエンヴィ @ 名古屋クラブアップセット (28th Jan. '09)

崇高な音世界


 今回のライブは「A winter quest for fantasy(ア・ウインター・クエスト・フォー・ファンタジー)」と題された久しぶりのツアーで、仙台から福岡までの6公演と追加公演で東京ワンマン・ライブが組まれている。本日はその真ん中に当たる名古屋。エンヴィのライブは実のところ数回見ているのだが、この日も毎度のことながら完璧に圧倒されてしまった。

 演奏時間10分を越える"水が作る風の路"から始まった本日のライブも、終始息をするのも忘れてしまうかのような独特の緊張感に包まれていた。静かにせせらぐメロディの清流が徐々に音圧を上げていき、突如として脳髄をぶっ飛ばす轟音へと変貌する。その雄大なコントラストの美しさ、Vo.フクナガの凄まじいまでの絶叫に心を強く動かされてしまう。目の前で激しく演奏する5人は希望と絶望を隣り合わせで表現し、人生の深さと重みを突きつけてくるかのようだ。これには足場を強く踏み締めていないと、こちらがその重みに負けそうになってくる。

 何度見ても、その凄まじさには言葉を失う。常に全身全霊を振り絞るエンヴィの壮絶なライブはそんじょそこらでは体験できない未知のもの、それほど凄い。柔らかな光を放つメロディととてつもない音圧を誇る轟音が渦を巻いて心の芯淵を抉り、飲み込んでいく。己の生命を削りながら叫び続けるのはなぜか? 身体が軋むほどの雷鳴の如き轟音を掻き鳴らすのはなぜか? 真正面から向き合って対峙した者にしかきっとわかりっこないだろう。

 昨年には、エクストリーム・ザ・ドージョーVo.19で共演したイェスー、そしてアメリカのエモ・ポスト・ハードコアの雄であるサーズデイという2バンドとそれぞれスプリット盤を発売したことでも話題になったが、本日はそこから3曲も披露。とりわけ、その静と動のコントラストにより一層深みが感じられる"美しき生誕と孤独"は実に見事だった。とはいえ、屹立としたハードコア精神が伺える初期の代表曲"左手"や"さよなら言葉"の異常値を記録する弾丸のような衝撃力も半端ない。その時ばかりは前の方で待ってました! といわんばかりに激しいモッシュが起こっていた。そういう光景を眼にすると、瞑想に耽るような壮大なスケール感と美しい世界を描くという深化を遂げた彼等の音楽も、根はハードコアであるというのを強く思い知らされる。このように新旧交えた多面性が見えるセットリストは非常に満足のいくものであったと思う。自分も最後の"狂い記せ"にはもう魂が震えてしまった。

 世の中には消費するだけの音楽がそこら中に蔓延っている。しかし、エンヴィは決してその範疇には入らない。メディアに一切媚を売らず、自分達のやりたい音楽を信じ、10数年にもわたって叩き上げ、築き上げてきた。己を信じきって勝ち上がってきた彼等は強い。だからこそ、世界中に彼等を支持している人がこんなにもたくさんいるのだろう。自分もそんな彼等に強く惹かれている。


-- set list --

水が作る風の路 / 静寂の解放と嘘 / 風景 / 光源の孤立 / 夢幻の探求の冬 / 覚醒する瞳 / 左手 / 美しき生誕と孤独 / 暖かい部屋 / さよなら言葉 /

-- encore --

狂い記せ
report by takuya

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