buttonGlasvegas @ Liquidroom Ebisu (20th Jan. '09)

Glasvegas
 本屋に一歩足を踏み入れると、必ずと言って良いほど出くわすジャンルがある。語尾に漢字で「○○力」とタイトルが付けられ、その内容の多くが「頭の回転が速くなる!」とかいう自己啓発モノだ。まーどれだけ人間の能力に名前を付ける気かしらと思わなくも無いけれど、もし「直撃力」なんて言葉があったら、きっとこのバンドにふさわしいと思う。

Glasvegas 彼らの名前はグラスヴェガス。出身地グラスゴーと華やかなアメリカン・ポップスが浮かんで来そうなきらびやかな街、ラスヴェガスをミックスさせた名前を持つそのバンドは、同郷バンドのジーザス・アンド・メリー・チェインと比較されてみたり、去年リリースされたデビュー・アルバム『グラスヴェガス』が全英チャートでメタリカの新譜とバトルを繰り広げてみたり。伝え聞くだけでもこのバンドの扱われ方は破格だ。結果を先に言えば、確かにグラスヴェガスの初来日ライヴは切なく美しく力強かったのだけれど、しかし何よりも凄かったのは、聴く側の心にこれでもかと直撃する力だった。

 バンドの佇まいは驚くほどシンプルで、フロントの三人はどこか哀愁を感じさせる古き良きテディ・ボーイ・スタイル。会場を包むフィードバック・ギターノイズの陶酔感と、時に厳粛なムードさえ漂わせるジェイムス・アランのヴォーカル。「ノイジーで破壊的、かつ繊細」といった点では、グラスヴェガスの演奏はシューゲイザーと呼ばれているバンドのサウンドを連想させる。けれど、どちらかと言えば自閉的な印象のあるそれらと大きく違うのは、彼らの視線が真っ直ぐにこちらに向けられているところだ。

Glasvegas 家族を失った人々の心の痛みや親子の絆、やりきれない少年犯罪。浮気に悩む夫婦の関係に、今まさに困難に立ち向かおうと奮い立つ者の決意。このバンドの唄は、きっと誰もが心に思い当たるに違いない、切実なテーマがあるのだ。だからこそ、見ていてこんなに気持ちが高ぶるのだろう。

 ライヴの最後の曲に、ロネッツの"ビー・マイ・ベイビー"が演奏された。キュートなガールズ・グループの60'Sナンバーが、無骨なまでに誠実なグラスヴェガスの演奏によって、怒涛の切なさを伴ってフロアに響き渡っている。気がつけば側で見ていた観客の女性が、涙を拭きながらステージを見ていた。

 彼らがステージに現れてから、ヴォーカルのジェイムス・アランが胸元をトントンと叩きフロアに感謝のキスを投げて去って行くまで、一時間強のライヴ。演奏時間は内容の濃さに見合ったものであったと思うけれど、すでに再来日を熱望する自分がいる。この「直撃力」をより多くの人々に体感して欲しい、と願って止まないからなのだ。
Glasvegas


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