te' (テ) @ 大阪 シャングリ・ラ (6th Dec. '08)
そぎ落としの美学
こう言ってはなんだが、te'(テ)はやはりライブで堪能すべきバンドだ。
以前のレポートでもそのようなことを書いたかもしれないが、この日の彼らのパフォーマンスを見て、改めて強くそう思った。たとえDVDを大きな画面で見てみたとしても、写真や文字でレポートを眺めたとしても、この感覚だけは実際に肌で感じてみないことには分からないのだから。
サード・アルバム発売ツアーの最終日となった大阪公演(厳密には沖縄での追加公演あり)。アルバムのタイトルは『まして、心と五感が一致するなら全て最上の『音楽』に変ずる。』である。見事に、この言葉だけで、この日の彼らのステージが説明し尽くされている。申し訳ないが、アルバムを聞いた時にその言葉の意味を理解できていたかというと、そうではない。だが、こうして久々に彼らのライブを体験してみると、それは彼らの魅力を語るのに最も適した言葉だったのだということに気が付いた。
ひとつだけ残念だったことがあるとすれば、それは、現在の大阪にはかつてのように「大阪の客はアツい」と言ってもらえるだけのエネルギーがないということだ。贅沢なことなのかもしれないが、このことは他のアーティストの公演でもこのところしばしば感じることなのだ。いろいろ理由はあるのだろう。それをここでどうこう言うつもりはないが、観客の発するエネルギーもライブの重要な要素のひとつなのではないのだろうか。アーティストの努力だけではどうにもならないような、なんともむなしい「覇気の無さ」がここの若者たちに漂っているように思うのだ。
心配していた音の響き方については全く問題はなかった。むしろ良いバランスで鳴っていたと言ってもいいだろう。比較的小さくて導線に「やや難あり」な感もあるシャングリ・ラだが、爆音でも大丈夫ということはうれしい発見だった。今回のツアーで、地方を含めさまざまな規模の会場で経験を積んできた結果が出せたということもあるのかもしれない。
名古屋公演の詳細なレポートの中に「ロックの初期衝動を強く感じさせてくれるバンド」とある。いい言葉だ。ロックンロールが誕生してからおよそ50年。ロックンロールが「ロック」とだけ呼ばれるように変化してから何年なのかよく分からないが、それから数十年の間にさまざまなタイプの音楽が誕生し、その都度新たなジャンル名が登場してきた。その定義など、これと決まったものがあるわけではないのだろうが、個人的にはテがポスト・ロックと呼ばれることに多少なりとも違和感を覚える。歌い手こそいないものの、かなり「ロックな」精神のバンドなのだ。少なくとも、ライブにおいては。
技術の進歩により、比較的簡単に誰でも耳心地の良さそうな音楽を作ることができるようになっている現代。見た目、聴いた目だけのものよりも、音楽に対する姿勢だとか、気持ちの部分だとかが伝わってくるようなバンドに魅力を感じるのは、私が昔感覚の者だからだろうか。さすがに、ロック・バンド誕生期をリアルタイムで体験することはできなかったが、後追い世代として、そんな時代のスピリットをしっかり継承しているバンドに出会えるとうれしく感じるものだ。
そう、この日は、白いシャツ1枚という装いでいつものように指揮するごとく演奏をリードするドラマーの姿に、どことなくあのローリング・ストーンズのドラマーの姿を見た気がした。飛び散る汗の小さな粒が照明にキラキラと映える光景が印象的なギタリストにおいても、彼がギター弾く前に腕をふっと上げるその瞬間に、そんなチャーリーがいたからずっとやってこれたと言ったあのギタリストの姿が重なった。「似ている」というわけではないのだが、そうしたものをふと感じたことがあったのだ。
ドラムとベースとギター2本。シンプルにそれだけ。ステージでは激しく動き回ることもあるし、観客を煽ってみることもある。確かにMCはおもしろい。だが、伝えたい事項を伝えるということが基本だ。とは言っても、あれだけの長い曲名を考えることのできる人物が話し始めれば当然話は膨らみ脱線気味になる。みんなの笑いを誘わないはずがない。音だけでなく、ステージでの動き、表情、言葉、そういったもの全てに対して、いかに無駄なものをそぎ落として豊かな世界を作り上げるのか。ロックにおけるミニマルな美しさとそれをナマで味わう楽しさを教えてくれた、そんなステージだったと思う。
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report by miyo, photos by hiroshi
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サード・アルバム『まして、心と五感が一致するなら全て最上の『音楽』に変ずる。』リリース・ツアー
11/1(土)福岡DRUM SON
11/2(日) 長崎DRUM be-7
11/8(土) 札幌SUSUKINO 810
11/22(土) 高松DIME
11/23(日) 岡山Crazymama 2ndroom
11/24(月) 名古屋UPSET
12/1(月) 仙台MACANA
12/06(土) 大阪Shangri-La -tour FINAL-
12/20(土) 沖縄桜坂セントラル
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mag files : Te'
そぎ落としの美学 (08/12/06 @ Osaka Shangri-La) : review by miyo, photos by hiroshi
photo report (08/12/06 @ Osaka Shangri-La) : photos by hiroshi
燃え盛る衝動 (08/11/24 @ Nagoya Up Set) : review by takuya, photos by yoshitaka
photo report (08/11/24 @ Nagoya Up Set) : photos by yoshitaka
言葉よりも前に広がる想いを (08/10/25 @ Shibuya Club Quattro) : review by ai, photos by yusuke
photo report (08/10/25 @ Shibuya Club Quattro) : photos by yusuke
CD review : まして、心と五感が一致するなら全て最上の『音楽』に変ずる。 (08/09/28) : review by takuya
轟音の楽園 (08/06/28 @ Nagoya Apollo Theater) : review by takuya, photos by yoshitaka
photo report (08/06/28 @ Nagoya Apollo Theater) : photos by yoshitaka
高架下にて (07/10/20 @ Live Square 2nd Line) : review by miyo
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The official site
Te'
http://tee.daa.jp/
check 'em? -->MySpace / iTunes
The latest album

"まして、心と五感が一致するなら全て最上の「音楽」に変ずる。"
(国内盤 / iTunes)
The latest DVD

"音楽の研究者は、音楽をねじ伏せようとしてはいけない。音楽をして、
音楽の赴く所に赴かしめるように導けばよい。そうして音楽自身をして音楽を研究させ、
音楽の神秘を物語らせればよい。" (国内盤)
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previous works
"それは、鳴り響く世界から現実的な音を『歌』おうとする思考。"(国内盤 / iTunes)
"言葉を用いて奏でる者は才能に在らず、ただの記憶に『過』ぎぬ"(国内盤 / iTunes)
"ならば、意味から解放された響きは『音』の世界の深淵を語る"(国内盤 / iTunes)
check the albums?
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2008
そぎ落としの美学: テ(6th Dec. @ 大阪シャングリ・ラ)
フォト・レポート : シベリアン・ニュースペーパー (17th Sep. @ 南堀江ネイヴ)
フォト・レポート : ピアノジャック (17th Sep. @ 南堀江ネイヴ)
分離壁と検問所に囲まれた雑踏の音 : チェックポイント303 (29th Aug. @ 我無双)
混ざり合った先は : エイジアン・ダブ・ファウンデイション (30th May @ 難波ハッチ)
フォト・レポート : シベリアン・ニュースペーパー (18th Apr. @ 心斎橋クラブクアトロ)
ダンス・パーティーズ・ツアー : 65デイズ・オブ・スタティック (15th Apr. @ クラブ・アカデミー、マンチェスター)
週末の幕開けは : リズMC (11th Apr. @ ロイヤル・フェスティヴァル・ホール、ロンドン)
凄いの最上級 : ジョン・バトラー・トリオ (5th Apr. @ 心斎橋クラブクアトロ
日本初上陸は世界仕様で : ロドリゴ・イ・ガブリエラ (30th Mar. @ 渋谷デュオ・ミュージック・エクスチェンジ)
MCとは : リズMC (15th Mar. @ ラティチュード 30、オースティン)
BBQでBSP : ブリティッシュ・シー・パワー (15th Mar. @ ブラッシュ・スクエア・ノース・テント、オースティン)
淡々と : ローラ・マーリング (14th Mar. @ ナインティ・プルーフ・ラウンジ、オースティン)
今回一番の掘り出し物 : エルダー (14th Mar. @ スモーキン・ミュージック、オースティン)
あれから5年 : ボディー・オブ・ウォー (13th Mar. @ スタッブス、オースティン)
ちょっとだけのはずが : ビリー・ブラッグ (13th Mar. @ SESAC デイ・ステージ・カフェ、オースティン)
ニュー・スキッフル : ジョニー・フリン・アンド・ザ・サセックス・ウィット (12th Mar. @ ザ・モホーク、オースティン)
もしや、常連? : ザ・ナイトウォッチマン (12th Mar. @ エスターズ・フォリーズ、オースティン)
行動し続ける男 : ザ・ナイトウォッチマン (12th Feb. @ 心斎橋クラブクアトロ)
輝きを増して : ブンブン・サテライツ (10th Feb. @ 難波ハッチ)
ライブ・バンドですから : シベリアン・ニュースペーパー (6th Feb. @ 南堀江ネイヴ)
CD review シベリアン・ニュースペーパー :"コミカル・サルート" (29th Jan.)
2007
こんなDOJOもアリだな : エクストリーム・ザ・ドージョー Vol.19 (28th Nov. @ 心斎橋クラブクアトロ)
フォト・レポート : シベリアン・ニュースペーパー (18th Nov. @ 南堀江ネイヴ)
新作発売はもうすぐ : ブリティッシュ・シー・パワー (1st Nov. @ フェズ・クラブ、レディング)
復活するには遅すぎない : デイヴィー・グレアム (31st Oct. @ タウン・ホール、ハイ・ウィッカム)
インストものの楽しみ方 : ゴッド・イズ・アン・アストロノウト(30th Oct. @ バー・アンド・キッチン、ロンドン)
グッバイ2007 : シックスティーファイブ・デイズ・オブ・スタティック (28th Oct. @ レモン・グローヴ、エクセター)
YMSSからYouthmoviesへ : ユースムーヴィーズ (27th Oct. @ ザ・ゾディアック、オックスフォード)
カンタベリー・フェスティヴァルにて : セス・レイクマン (25th Oct. @ マーロウ・シアター、カンタベリー)
高架下にて : テ (20th Oct. @ 大阪福島ライブ・スクエア セカンド・ライン)
次章の序 : シベリアン・ニュースペーパー (19th Sep. @ 梅田シャングリ・ラ)
大阪、初ワンマン : 中山うり (31st Aug. @ 梅田シャングリ・ラ)
CD reviewゴッド・イズ・アン・アストロノウト
:"ファー・フロム・レフュージ" (15th Aug.)
ガラス張りのカフェにて : シベリアン・ニュースペーパー (8th Aug. @ 神戸カフェ・フィッシュ)
神戸Varit3周年記念ライブにて : シベリアン・ニュースペーパー (21st July @ 神戸ヴァリット)
ラスト・ストップ : デイヴ・マシューズ・バンド (30th May @ ウェンブリー・アリーナ)
モノクロ、メタル : ロドリゴ・イ・ガブリエラ (28th May @ カーリング・アカデミー・リバプール)
これが、アイシス : アイシス (26th May @ コーポレーション)
ザ・ミリマー・ディザスター : ザ・ミリマー・ディザスター (14th May @ バーミンガム・アカデミー2)
ザ・デストラクション・オブ・スモール・アイデアズ・ツアー : シックスティーファイブ・デイズ・オブ・スタティック (14th May @ バーミンガム・アカデミー2)
旬のものは旬のうちに : ザ・マカビーズ(6th May @ マンチェスター・アカデミー2)
光と音の洪水の中で : ジ・アーリー・イヤーズ(4th May @ ザ・ウインドミル、ロンドン)
CD review シックスティーファイブ・デイズ・オブ・スタティック :"ザ・デストラクション・オブ・スモール・アイデアズ" (25th Apr.)
三者三様 : ドン・キャバレロ (24th Apr. @ 心斎橋クラブクアトロ)
また来たのと言うなかれ : シックスティーファイブ・デイズ・オブ・スタティック (25th Mar. @ 渋谷クラブクアトロ)
一度は見ておくべきもの : コンヴァージ (12th Mar. @ 心斎橋クラブクアトロ)
オオサカ発、セカイへ : シベリアン・ニュースペーパー (2nd Feb. @ 梅田シャングリ・ラ)
贅沢なひととき : キャレキシコ (24th Jan. @ 心斎橋クラブクアトロ)
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