button犬式 @ リキッドルーム恵比寿 (14th Nov. '08)

言葉と行間の引力

犬式 a.k.a Doggystyle
 犬式(a.k.a. ドギースタイル)のワンマンライヴは、ウォルト・ホイットマンの詩『草の葉』第32節から。詩の世界の偉人の100年以上前の作品を引用し、支えとなる仲間が共に立つ状態で幕を開けた。ステージ発PA経由で耳の欲求を満たし、そこにVJが音世界とリンクする映像で飾り立て、どうしようもなく胃が寂しいなら出張屋台が待っている。それは、荒野をひた走る「犬式」という車の引力がファミリーをまるごとハコ乗りさせているかのようで、ひとつの遊びに満ちた「生活」を表すような充実っぷりだ。全方向から絶え間なく意識が迫ってくる。

 旅と探求はビートニクから、ライフスタイルはジャマイカのレゲエから、ステージに立った時のまばゆいばかりの光は長方形の巨大な芝生を用意された時のディエゴ・マラドーナで、レベル志向と懐の深さはジョー・ストラマー……。そのどれもが伝説のレベルであるにも関わらず、物怖じせず近づこうとしているのは、弱さと強さが同居した等身大の立ち振る舞いに共感してのことだろう。

 時には、フラリと現れる自然人にも感化される。本人の預かり知らぬところで曲の主人公としてしまう背景には、ジャマイカにおける万能の前置詞「リスペクト!」がある。もしあなたが、このワンマンだったり地方でのライヴに遭遇し、流れるような言葉と音の洪水から何らかの影響を受け、ブログなどで言葉を並べたならば、それはきっといつか彼らの目にも届くだろう。大地を歩き回って経験を重ね、時にネットというツールを駆使してオーディエンスの言葉を探る。そこでまた、自問自答や変化を繰り返してステージから還していく。この日この時でしかありえないライヴを叩き付け、感性を循環させるポンプのような役割をしているのが彼らなのだ。

「ライツ?」と韻を踏んで問いかけたり、現時点の落ち着き場所を語る三宅のMCとリリックばかりが取り上げられがちだが、その発せられる言葉に共振しているのがメンバーで、その音は国境を飛び越えて世界を憂う泣きのグルーヴを創りあげている。口は不器用でも指先や体で行間を表し、犬式として立っている。イントロはといえば、小見出しから本文へと続くひとつの道で、三宅という機関車のような男の尻を叩いて気炎を吐かせるための石炭なのかもしれない。「日本はだせぇんだよ」三宅はそんなことを言っていたが、生まれくる音は、ださいはずの日本も、憧れとしてのジャマイカも、荒野のアメリカまでもが渾然一体となっている。映画に音楽に小説と……それら文化を求めて旅を続ける彼らでしか表現出来ないものなのだ。

 押し寄せるメディアの情報に対しては斜にかまえ、そこから一本裏通りへと入り込んだ地べたの言葉や主張を音に乗せて伝え、遭遇したらば、生身の人類としての言葉と不格好なまでの人間臭さが匂いたってくる。その、心をまるごとさらうリリックに右へならえで追いかけるヘッズの存在も頷け、思わずこちらも吸い込まれそうになる。ただ、そこで自分の考えを放棄してしまうのは、いくらか勿体ない。犬式は確かに自分にとって、時も場合も場所すらも飛び越えて、道を探し出すために必要不可欠な存在ではあるが、やっぱり俺は俺でありたい。彼らが投げつける感じたままの言葉に、自分の数少ない経験と根っこにあるものとを照らし合わせるというひと手間をかけ、それで同調できたなら委ね よう、そんな気になるのだ。

 ホイットマンが『草の葉』をライフワークとし、歳を重ねるごとに思想を変化させていったように、彼ら犬自身も絶え間なく何かを発見し、もの凄いスピードで変化している。強烈な個性と求心力を持っている犬式ではあるが、誰よりも影響を受けやすいのだろうと思う。「リスペクト!」の対象は自分を持った全地球人に対して向けられているが、ヒエラルキーというピラミッドの上でふんぞり返っている者には容赦なく牙を剥く。犬というのは、寄り添ったり噛みついたりと、人を選ぶものなのだ。

 しかしまぁ、本当に3時間超えたよ、すっげぇな。

-- set list --

プロローグ:草の葉 第32節

BEAUTIFULL / 意識の大陸 / 自由の荒野 / WE THE POWER / Punky Reggae Party(カバー) / YAMAZINE'S HEAVEN(ゲスト:山仁) / 真冬のラスタファリズム / 炎のレゲエ〜BIG BANG,BIG CRUNCH / Diego Express / Final Flight / Life is Beatfull / Volar / Village Vanguard讃歌

-- encore --

手芽口土


今後のスケジュール

■11月28日(金) 犬式&ダチャンボ"WリリースPARTY" meets Chelsea The Party vol.4@兵庫/神戸VARIT
■11月30日(日) TIP IN 8 presents 『犬式 LIVE!!!』@京都メトロ
■12月12日(金) chinatown@広島
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button言葉と行間の引力 (08/11/14 @ Liquidroom Ebisu) : review by taiki, photos by naoaki
buttonphoto report (08/09/14 @ Shinkiba Studio Coast) : photos by naoaki
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button言葉と行間の引力 : 犬式 a.k.a.Doggystyle(14th Nov. @ リキッドルーム恵比寿)
button45年の歴史が弾けた2時間超 : ザ・スカタライツ(4th Oct. @ 朝霧アリーナ)
button「リスペクト!」につつまれたパーティ - : イントロザ・トロージャンズ・フィーチャリング・リコ・ロドリゲスザ・スカタライツ(28th Sept. @ 新木場スタディオ・コースト)
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(14th Sept. @ 新木場スタディオ・コースト)
button闇市の祈りとレジスタンス 渋さ知らズ・オーケストラ、シンク・オヴ・ワン・ウィズ・キャンピング・シャアビ & バルカン・ビート・ボックス (6th Jul. @ 日比谷野外音楽堂)
button指は世界を駆け巡る : ロドリゴ・イ・ガブリエラ (30th Mar. @ 渋谷デュオ・ミュージック・エクスチェンジ)
buttonfeatures : バスク・レポート : intro - バスクの地べたから / -ガステッツァ(gaztetxea)- 不法占拠というより秘密基地 / パンクなメタルに汗をかく / ガステッツァと共に / ダメな大人のバーで / オフ日の息抜き / 火の手があがる消防署 / ゲリラは自然の中から / 無名人との交流(9th to 21st Jan. バスクにて)
buttonCD Review : ワンダフル・ワールド : リコ・ロドリゲス (8th Jan.)

button2007

button酒と人、両方飲み干すにぎやかし (07/10/07 @ Asagiri Arena)
buttonCD Review : サラダ・ブエイ : ヴェリー・ビー・ケアフル (1st Oct.)
button ジプシー、いよいよ新天地へと向かう : マハラ・ライ・バンダ〜エレクトリック・ジプシーランド〜 @ (25th June. @ グラストンバリー・フェスティバル、ピルトン)
button ドーバー海峡は思いのほか広い : ラ・キンキー・ビート @ (24th June. @ グラストンバリー・フェスティバル、ピルトン)
button 皿よりも生音 : パマ・インターナショナル @ (23rd June. @ グラストンバリー・フェスティバル、ピルトン)
button 遊び人はライヴを見ない : ダーティ・プリティ・シングス、ディスカルパス・デ・オティリア、マッドネス @ (23rd June. @ グラストンバリー・フェスティバル、ピルトン)
buttonフェスを渡り歩くジプシー・パンクス : ゴーゴル・ボーデロ (22nd June. @ グラストンバリー・フェスティバル、ピルトン)
buttonバスク人の武器、それは言葉だ、フェルミン・ムグルザだ!旗印は反逆! ヴィーニャ・ロック・フェスティバル : フェルミン・ムグルザ・アフロ・バスク・ファイア・ブリゲイド (29th Apr. @ ヴィーニャ・ロック・フェスティバル、ベニカシム)
button民衆の憩う場所、ヴィラジオ・グローバーレ民衆と共に : ストリート・ビート・フェスティヴァル 2007 feat. バンダ・バソッティ、DDR、和気優 & ソウル・フード・インターナショナルズ・ロックステディ・レヴューとドクター・リン・ディン (28th Apr. @ ヴィラジオ・グローバーレ、ローマ)
button赤いレンガの街・ボローニャで助けられた民衆のバンド : ストリート・ビート・フェスティヴァル 2007 feat. バンダ・バソッティ、ボイコット、DDR、和気優 & ソウル・フード・インターナショナルズ・ロックステディ・レヴューとドクター・リン・ディン (27th Apr. @ エストラゴン, ボローニャ)
button古都、フィレンツェへ六角形の中心に出来た渦 : ストリート・ビート・フェスティヴァル 2007 feat. バンダ・バソッティ、ボイコット、DDR、和気優 & ソウル・フード・インターナショナルズ・ロックステディ・レヴューとドクター・リン・ディン (26th Apr. @ オーディトリアム・フロッグ, フィレンツェ)
buttonイタリア解放記念日で幕開け : ストリート・ビート・フェスティヴァル 2007 feat. バンダ・バソッティ、ボイコット、DDR、和気優 & ソウル・フード・インターナショナルズ・ロックステディ・レヴューとドクター・リン・ディン & シスコ (25th Apr. @ ムセオ・セルヴィ, レッジョ・エミリア)
buttonサービスしすぎが心地いい : フロッギング・モリー & フラットフット56 (16th Apr. @ 渋谷AX)
buttonColumn : これを聞かずに、死ねるか! : マヌ・チャオ : "レディオ・ベンバ・サウンド・システム" (21st Mar.)
button生身でつきあうスラッカーズ : ザ・スラッカーズ with オイ・スカル・メイツ & スパイク (21st Mar. @ 新宿ロフト)
buttonバンドを離れた自由人の対決 : ヴィック・ルジェーロ & 渡辺俊美 (20th Mar. @ 下北沢440)
buttoncolumn : 定例 : これを見逃すな! : ザ・スラッカーズ (12th Mar.)
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