池畑潤二 50th アニバーサリー "ビッグ・ビート・カーニバル" @ 恵比寿リキッド・ルーム (26th Oct. '08) 50年の生き様
「ドラムと一体化している」。
池畑さんのライヴを初めて観たとき、そう思った。きっと、この人は歩いても腕はスティックに、背後にはドラムセットが見えるのだろう、と。ロック界最高峰のドラマー池畑潤二、生誕50周年だそうな。「今日は、42.195曲叩きまくります!」とMCのスマイリー原島さんがいっていたとおり、4時間近いステージを出ずっぱりという少々手荒な誕生祝い。とてつもない面子のなかで、どんなバンドとやってもぶれがない(ピンと伸びた背筋のことだけではない)、最高にカッコいい50歳の姿を見せつけるイベントになった。
オープニング・アクトのディー・ディー・フィーバーがセクシーなパフォーマンスで会場を温めた後、ステージにはドラムセットがふたつ用意されている。ひとつは当然、池畑さんが座り、もうひとつの席につく人のは……クハラカズユキだ! このドラマー・ツーショットだけでも卒倒しそうなのに、原島さんから「愉快な仲間たち」と紹介された花田裕之、井上富雄も一緒にステージに上がる。なんて贅沢なながめなんだろう。しかし、まだセンターのマイクが空いている。そこに入るのはやっぱりこの人、チバユウスケだ。ひときわ大きな歓声に迎えられてギターを持ち、ルースターズのナンバーを連発する。あまりの贅沢にめまいがしそうだ。チバの後は同じセットで石橋凌が登場。会場も上手く巻き込んで、アカペラでハッピー・バースデイを熱唱する。これまた贅沢なバースデイ・ソング!(この後、いったい何度「贅沢」という言葉を使うことになるのだろうか?)。
「ここから池畑潤二の新たな心の旅路がはじまったのだと思います」。このMCで出てくるのはヒートウェイヴしかいない。ここではどっしり、しっとり叩く池畑さんが観られる。ヒートウェイヴとして一緒にやりはじめてから初めて「これ、やりたい」とリクエストされたという"ワイルド・イン・ザ・ストリート"では、こころなしか弾むように、うれしそうに演奏する姿が印象的だった。
幼少時代〜強面の20代〜現在と貴重な写真のスライドショーの後、「少しでも池畑さんを休ませようと思って」と、アコースティック・セットで歌いはじめたシオン。もう、ステージに現れた瞬間カッコいいオーラが見える。池畑さんと並んで、これぞ"本物"というにふさわしい人だ。2曲を松田文さんとふたりで、その後は、池畑さんと井上富男、細見魚、花田裕之で豪華セッション。またまた、ため息が出るほど贅沢なシーン。
浅井健一、渡辺圭一、池畑潤二。この3人でのユダは何年ぶりなのだろう。メンバー・チェンジがあった当初「池畑さんがドラムじゃないなら、もうユダは観ない!」と言い放ったファンがいた。それぐらい大きな存在だった。"カリブの海賊の宴会"から始まって、"シルベット"でジンとしたりもしたけれど、圧巻だったのは"デビル"でのドラム・ソロ。早すぎて手が見えない! ドラムの精とか、ドラム童子とか、ドラムの神とか、なんでもいい、とにかく常ではないものが存在するとしたら、それは池畑さんだ。そう確信した。
最後はもっとも池畑さんと音を交えている人、花田裕之率いるロックンロール・ジプシーズ。このイベントは、出演者入り交じってのセッションが見物のひとつ。ここではヒートウェイヴからギタリスト・山口洋が参加する。一緒にやった"オールド・ギター"という曲は並んでステージに立つ花田裕之、山口洋というギタリストそのままな気がして、歌の風景がそこにあるようだった。
アンコールの拍手が鳴らされる間もステージのセッティングが忙しい。最後は出演者全員が顔をそろえた。それぞれ短い時間での出番だったけれど、ぬるいライヴをやる人は誰もいなかった。全員が熱湯。そんな人たちがぶつかり合わず一堂に会しているのは、真ん中にいるのが池畑さんだからなのだろう。MC原島さんの「池畑潤二とともに50歳を迎えた大江慎也にも贈ります」の声で始まったのは"ロージー"。こんな豪華なセッションは、きっと二度と観られない。今日まで生きていて良かった。大げさではなく、本当にそう思う。全セッションを叩ききり、出演者ひとりひとりと握手をし、最後に客席にお礼をしてステージを去った池畑潤二。会場全員が池畑さんに大きな拍手を贈っていた。一斉にステージに向かって上がった手が、とてもきれいだった。
|
|
report by wacchy,photos by sam
|
50年の生き様 (08/10/26 @ Liquidroom Ebisu) : review by wacchy, photos by sam
photo report (08/10/26 @ Liquidroom Ebisu) : photos by sam
photo report (08/10/16 @ Fukuoka Drum Logos) : photos by suguta
|
|
|