赤犬 vs ドーベルマン @ リキッドルーム恵比寿 (25th Oct. '08)
お下劣十年殺し
赤犬主催のライヴのゲストにドーベルマン。バンド名がどちらも犬、要するに犬対犬の組み合わせであるわけなんだけど、関西出身・ホーン入りの大所帯・スカ/パンク/歌謡曲など雑食の音楽性が共通するので、どっちのバンドも好きという人も多かったのではないだろうか。恵比寿リキッドルームには思った以上のお客さんが来てフロアが埋まっている。正直、赤犬じゃリキッドは広いんじゃないの? と思ったけれども、すっかり東京でも人気が定着しているのだろう。それも赤犬がフェスで見せた数々の(アホな)パフォーマンスが強烈だったからである。ここまできたのは、まさにフェス効果だと思われる。
開演前にはスカがBGMとして流れていた。10分か15分くらい押してドーベルマンが登場する。メンバー全員がスーツを着ているのだけど、それぞれの着こなしがおしゃれだ。迫力あるホーン隊と強力なリズム陣が絡み合う、スピード感あるスカが展開していく。特にドラムの頑張る様子はすごい。おそらく根底にはパンクがあるのだけど、昭和の歌謡曲の哀愁もあるし、スカだけでなくキューバあたりの中南米ぽいアレンジの曲もある。そしてMCでは「この前、地下鉄乗ってて梅田で降りるときに切符をなくした」という顛末を語り始め、哀愁ある日常を話して笑いを取るのは、まさに関西人だ。格好つけだけじゃなくて、日常の哀愁みたいなのも感じさせるのだ。この日、お客さんのほとんどは赤犬が目当てだったようだけど、ドーベルマンのノリにお客さんたちを巻き込んでいく。ステージ前のお客さんは盛り上がっていた。
そして、赤犬なんだけど、セットチェンジ中はずっとスラッシュメタル(メタリカかな?)が流れている。メンバーが登場して、いつものように"親方星条旗"の合唱で始まり、続いてパーカッションのグッチが前口上(?)、そしてリードヴォーカルのアキラ、ロビン、ヒデオが出てくる。ロビンとヒデオはギリシャ神話のゼウスを模しているのだろうか。ギリシャの彫刻みたく円盤投げや槍投げの格好したり。あとは例によって、ファンクでパンクでお下劣なお祭りになっていく。アキラが「パフュームと同じステージに立てて嬉しかったです」と神妙な顔をして喋っている後ろで、ロビンとヒデオは意味もなくじゃれ合っているので、会場はクスクス笑いに包まれる。そういえば、ヒデオは鳥羽一郎の、ロビンは小林旭のモノマネもしていたな。で、その二人は後半、ヘヴィメタルな格好をして(一歩間違えばレーザーラモーンHGにしか見えない)出てきた。
この日は、とにかく盛り上がりがすごい。スカ、アイリッシュ、ブギー、歌謡曲、アイドルポップス、ファンク、パンク、いろんな音楽がごった煮になっているのだけど、お客さんとしては、スカコアのライヴに近いノリ方である。みんなでXジャンプ、"ズキズキ・ドッキュン"ではアイドルのコンサートのパロディ(しかもフロアには「アキラさん」と書いた紙を掲げている人が)と笑いながら暴れる要素がてんこ盛りになっている。さらには、マイクをケツに近づけて放屁、阿波踊りのリズムに合わせて「ち○こ、ち○こ」と合唱させ、アンコールでは例のごとく"U.N.C.O.が好きです〜"とお下劣一直線なのは相変わらず。お客さんも当然それを求めているので、大盛り上がりという相乗効果があったのだ。
こういう馬鹿も真剣にやればアートになるというか、素晴らしいものになってしまうのだということを証明しまくったライヴで、お客さんの求めるものと合致して幸福な空間を作っていた。下手したら武道館まで行けちゃうかもこれは。
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お下劣十年殺し (08/10/25 @ Liquidroom Ebisu : review by nob
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