buttonイースタン・ユース @ 渋谷AX (24th Oct. '08)

裸足でいいのだ。裸足がいいのだ!


Eastern Youth
 バンドというものは時として、本人達の望むと望まざるとに関わらず、バンドの最も本質的な部分の変化を余儀なくされる事がある。それは一般的に「成功」と呼ばれているものがきっかけになっている事が少なくない。

イースタン・ユースは大きい会場で演奏する事や二十周年という節目を迎えるために活動して来たバンドでは、決してない。彼らは表現に対する衝動を正直に濃縮・純化して音楽に転化する、この事を全力で守り通して来たバンドだ。守り通して来たら、いつの間にか二十年が経ってしまった、という事なのだろう。

「さあ俺達は明日からもドッコイ生きて行く。だって生まれちゃったんだもんな。自分の人生自分のもんだ、好きなようにやろうじゃねえか!」

Eastern Youth ライヴ中にそう語っていたギター&ボイスの吉野、そしてベースの二宮、ドラムの田森。「スットコドッコイ二十年」と題された活動二十年目のツアーは、渋谷AXでファイナルを迎えた。雨模様の天気などものともせずに集まった観客がフロアを埋めている。そのシルエットはさながら大海原のように見え、ステージに三人が現れると、その大海原から波打つように手が上がり、一斉に大拍手が起こった。

 彼らのライヴで息を呑むような瞬間が始まるのはいつも、演奏の曲間の静寂からだ。例えば爪弾くギターの音色、ささやくような口笛の響き、そしてつぶやくような、時には力強く語りかけて来るような吉野の言葉。それらが張り詰める静寂を破り、そのたびに演奏は劇的な流れを見せる。ステージに打たれたとでも言ったら良いのだろうか、思わずこちらも目が離せないでいる。

 途中、客席からベースの二宮を呼ぶ声がフロアに響いた。とっさに照明も気を利かせて二宮にスポットライトを当てる。普段は吉野の語りをにこやかに聞いている彼が、珍しくMCをとる一幕となった。横にはドラムセットの隅に腰掛け、ニヤニヤといった表情で様子を見守る吉野の姿がある。バンドの真剣で全力の演奏と、演奏の合間に見せる喜怒哀楽ある一人の人間としての表情。この両極のベクトルのエネルギーの存在が彼らのライヴの魅力の一つではないかと思う。

Eastern Youth そんな彼らも、始めはバンドとして芽も出ずバイトに明け暮れる日々の不安に、音楽を止めてしまおうかと思った時期もあったという。アンコールには、彼らが守りたかった、そして守り続けて来た原点とも言える一曲が披露された。"裸足で行かざるを得ない"が演奏される前に、吉野がこう語り始める。

「制服着るのが嫌で、学校なんて一抜けだ。学歴もないし、俺はこのままどうなっちゃうんだろう、音楽なんて演ってる場合じゃねえんじゃねえかって。でも音楽止めて自分に何が残るかって考えたら、何にも残らねえぞって気付いた。そんな時ギターを弾いたら、俺はこれで生きて行ける!と思った。成功とかそういうものは、その時ぶん投げて捨てて来てやったのさ。」

 アンコールが終わると、終わりを告げてフロアに流れるBGMをかき消すほどの大拍手が沸き起こった。見れば、前方はもとよりフロア後方の観客も、2階の観客も、熱烈に拍手を送っている。一向に止む気配のない拍手の中、メンバーが再びステージに登場した。余力を残さずフラフラしている吉野は、今年四十歳。今年成人したらしき観客から声援が送られると、「(年齢が)ハンブンとか、ヤメテクダサイ…」とぼやいて見せるその姿に、思わずこちらもつられて笑ってしまった。しかも、先ほどまでの演奏で込み上げていた涙もそのままで。泣いたり笑ったり。もしかしたら、イースタン・ユースの歩んで来た二十年も、そんな事の繰り返しだったのかも知れない。

 終演後も鳴り止まない拍手が続いていた。ステージ上と客席とが共に良い時間を過ごせた充実感一杯でフロアを後にすると、ファンから贈られたという大きな花飾りがロビーで目を引いていた。良く見ると、メッセージが添えられていた。

「イースタンユースさん江。こちらこそ感謝!」 



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ライヴスケジュール
【極東最前線/巡業〜スットコドッコイ20年】

08/10/24 東京 SHIBUYA-AX

【「ASYLUM2008」避難所の初夜】
08/11/14 沖縄那覇 桜坂セントラル

【club SONIC iwaki 7周年イベント】
08/12/13 福島 club SONIC iwaki
詳細はこちらでご確認ください。

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button裸足でいいのだ。裸足がいいのだ! : (08/10/24 @ Shibuya AX) : review by jet-girl, photos by keco
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"矯正視力〇.六" (国内盤)
"其処カラ何ガ見エルカ" (国内盤)
"What Can You See from Your Place" (US import)
"世界は割れ響く耳鳴りのようだ" (国内盤)
"Eight Teeth to Eat You" (US import- with CURSIVE, 8 trax)
"感受性応答セヨ" (国内盤 / iTunes)
"雲射抜ケ声" (国内盤 / iTunes)
"旅路ニ季節ガ燃エ落チル" (国内盤 / iTunes)
"口笛、夜更けに響く" (国内盤 / iTunes)
"踵鳴る" (国内盤)
"静寂が燃える" (国内盤)
"雨曝しなら濡れるがいいさ" (国内盤)
"風ノ中" (国内盤)
"青すぎる空" (国内盤)
"裸足で行かざるを得ない / 道端" (国内盤)
"孤立無援の花" (国内盤 / iTunes)
"少年ナイフ・トリビュート フォーク&スプーン" (iTunes)
"赤い胃の頭ブルース(日本テレビ「栞と紙魚子の怪奇事件簿」主題歌)- Single" (iTunes)


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button2008

button裸足でいいのだ。裸足がいいのだ! : イースタン・ユース (24th Oct. @ 渋谷AX)
button今夜もどこかで魂は震え続けている : イースタン・ユース (4th Oct. @ 名古屋クラブクアトロ)
buttoninterview : おはようございます、そのバンド、ロックンローラーにつき : ジ・エメラルズ (15th Sept.)
buttonロック重要文化財の現在進行形を目撃せよ : ア・フラッド・オブ・サークル (22nd Aug. @ 新宿ロフト)
buttonこの狂おしさは一体なんなのだ! : ア・フラッド・オブ・サークル (13th Jul. @ 新宿ロフト)
buttonストロングなお姉さんは、好きですか! : ボー・ピープ (6th Jul. @ 三軒茶屋ヘヴンズ・ドア)
buttonこれぞまさに音楽の表面張力 : デトロイト・セヴン (18th May @ 下北沢シェルター)
button魂にもレザーを羽織れ! : ジ・エメラルズ (15th Apr. @ 新宿マーズ)
buttonその正体はナゾである : ザ・フジサンズ with ナベ(騒音寺) (12th Jan. @ 川崎クラブチッタ)

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button腕に覚えあり : イースタン・ユース with トクマルシューゴ & ザ・マジックバンド (16th Feb. @ 渋谷クラブクアトロ)
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button強烈に発生する磁場 : 髭 (8th Jan. @ リキッドルーム恵比寿)

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button髭中毒という病、その病理解剖 : 髭 (19th Aug. @ Rising Sun Rock Festival, Ishikari Bay)
buttonお〜ま〜え〜は〜ア〜ホ〜か〜 : DMBQ (19th Aug. @ Rising Sun Rock Festival, Ishikari Bay)
buttonロックンロール骨伝導 : 日本脳炎、怒髪天 & ギター・ウルフ (5th Jun. @ 新宿ロフト)
button365歩の先で「無」が燃え上がる : イースタン・ユース (22nd Feb. @ 渋谷クラブクアトロ)


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