ロック・ザ・ロック! @ 名古屋クラブ・アップ・セット (28th Sep. '08) feat.ア・フラッド・オブ・サークル、ハリス、ギー、N.G.スリー
ロック・メート、集う
ア・フラッド・オブ・サークル、ギー、ハリス、N.G.スリー……。面子を見て「え、マグ祭り?」と思ってしまったくらい、スマッシング・マグに縁の深いバンドばかりが集まったこのイベント。念のため言っておくと、主催は当サイトではございません。しかし「私が企画しました〜!」と言ってしまいたいくらい素敵なブッキング。フラッドをのぞけば、みんなもう10年以上同じ世界で生きてきた同志だ。ちょっとした同窓会とか、修学旅行のようなワクワクする雰囲気もある。大阪、名古屋と二日間だけのツアーだったけれど、音楽性もファン層もいい具合に重なっていて、最後まで笑ってみていられる、そんなイベントだった。
二日間ともオープニングを努めたア・フラッド・オブ・サークル。MCで「前座の底力見せます」と宣言したとおり、初っぱなから会場の空気を熱く揺るがせる。2日間ともセットリストを変えてきたのは、いろんな曲をやりたい、聴かせたいという気持ちそのものだ。演奏、メンタル面の両方に、決して一時的ではない充実した勢いが見える。これまでのレポートで「歳のわりに落ち着いている」というような言葉をたびたび目にしていたのだが、いやいや、どうして若者らしい活気に満ちあふれているじゃないか。たしかに、音の分厚さや安定した演奏力、ステージでの魅せ方はベテラン勢にまじっても負けていない、むしろ、一番練習しているんだろうな、自分達の音楽とたくさん向き合っているんだろうなという感じがする。だけど、ただどっしりかまえているのではなく、立ち止まることなど考えていない、考えられない、今を生きているバンド特有の高揚感と誠実さがあった。もしかしたら、このツアーでもっとも安定したライヴを魅せたのはア・フラッド・オブ・サークルだったかもしれない。
大阪ではギーがこの位置だったが、名古屋ではハリスが2番手。6月にリリースした『ヴィヴィアン』からはもちろん、ファーストからの曲もからめ、絶妙に新旧を織り交ぜたセットを用意してきた。二日目は前日の堅さをきっちり修正。最初は探るようだった客席も、ステージから発せられるキラキラ感とロックの激しさが同居する世界に、自然に体を揺らすようになる。これがハリスの音楽の魔法だ。ウッドベースがうなりをあげ、足下から突き上げられるようなイントロが流れると、最後は"ハッシュ"でさらに会場を沸かせる。短い出番の中でも、お客さんをもれなく楽しい気持ちにさせる。ハリスのアイデンティティがいかんなく発揮されたライヴだった。
9月に発売されたDVD『ライヴ@代官山ユニット "レコンキスタ"ツアー・ファイナル2008』のなかでベースのヒサヨが「私たちは普段は別々の活動をしていて、ライヴの時にパッと集まって"ギー"になる。その感覚を取り戻す速度が早くなった」と話していた。その言葉どおり、久々のライヴにもかかわらず、初日の大阪でギーはすでにメンバー全員がこのバンドの顔になっていた。さらに、昨日より今日、今日より明日という感じで、このキャリアにして、とどまらずに伸びていく姿を見せてくれる。DVD発売記念ワンマンで初披露された新曲"ブラッディ・ティファニー"は、リズム変化とテンポよく飛び出してくる言葉の繋ぎにグイグイ引き込まれる秀作。このツアーのセットにも入れ込んで、新しいギーの一端を大阪、名古屋のファンにも指し示した。後半に入ると、前日のコンパクトなステージの分も取り戻すかのように、アップ・セットの広めのステージで存分に暴れ回る。ギターを手放し、勢いにのってヒサヨのマイクまで奪い取った近藤は、最終的にハンドマイクを2本握りしめて歌っていた。さすがライヴでは本能で動く男…。これからの"ギー・近藤"はフロアに乱入するだけではないぞ! ますます面白くなりそうな今後の動向から目が離せない。
両日ともにトリを努めたのは、このツアーから先行発売、10月22日にニューアルバムをリリースするN.G.スリーだ。このバンドがどことなく海の向こうの匂いがするのは、ドラムのフィルが正真正銘のイギリス人だからとか、ベースの浦さんが「フロム・アメリカ〜」(「あ、冗談です。」新井仁談)だからとか、単純に歌詞が英語だからではなく、ヴォーカル新井仁のメロディセンスと英語が気持ち良くはまる声があるからに他ならない。結成は演奏が下手なノー・グッドな3人組当初(ドラムはフィルではない)だったからこのバンド名になったそうだが、こうして見ていると、それが逆の意味で狙ってつけたのか…!?と思うほどカッコいい! ポップで、ロックで、パンクなニューアルバム『デイズ・オブ・ドリーム』の世界がライヴで表現されていた。はっとするほどシャープで強い曲をやっている時も、無意識に顔がほころんでくるような弾けた曲でも、その場には同じようにほわっとした空気が流れていて、最終的には、皆笑顔になっている。それは、新井仁が持っているおおらかさとか、柔らかさとか、実直さ、そういうものが自然にN.G.スリーのステージからも出ているからだ。そういうことなのだ、多分。この二日間のライヴ、そしてアンコールの" Town Called Malice"(ザ・ジャムのカヴァー)で幸せそうに跳ねる客席を見てそう思った。
同じ趣向の人たちが集まって、同じ空間を共有する。そこには、ただ一緒にいました、だけではない良いつながりができる感じがする。目に見えるところで言えば、「N.G.スリーを見に来たけど、ギーも好きになりました」のようなこと。自分が「いい!」と思う気持ちに共感する人が増えていく。そうやって賑わうライヴ後の会場を見ていると、少しだけ幸せな気分になれる。
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report by wacchy,photos by yoshitaka
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