buttonハンバート・ハンバート @ 渋谷クラブクアトロ (28th Sept. '08)

待ち焦がれた歌が、今ようやくこの場所で

Humbert Humbert
 ステージ中央に立てられた2本のマイクスタンド。その前にハンバート・ハンバートのふたりが姿を現すと、場内からは一斉に拍手が沸き起こった。いつもに増して拍手の音が大きく感じたのは、きっと気のせいではなかっただろう。ここに集まった東京のファンは、開場から開演までの時間を待ち続けていたのではない。活動休止以来8ヶ月もの間、ここで彼らの歌を待ち望んでいたのだから。

Humbert Humbert バンド編成の彼らを見るのは約1年ぶりだろうか。ゲストミュージシャンには元ミュート・ビートのベーシストである松永孝義と、サケロックやグッドラックヘイワのドラマーとして活動する伊藤大地を迎えた。松永はイスに腰掛けて黙々と低音を刻み、伊藤は大きく口を開いて歌いながらリズムを叩き出す。対照的な演奏スタイルを見せる両者とともに、「大宴会」と銘打たれた宴がはじまった。

 ゲストミュージシャンに加え、ワンマンライブならではの演出がステージ下手に置かれたグランドピアノだ。ゲストプレイヤーが入るのかと思っていたのだが、席についたのは先ほどまでギターを弾いていた佐藤だった。ギターやフィドルといった弦楽器以外を演奏する姿ははじめて見たのだが、これがまた良い。愛人の視点から不倫愛を綴った”おかえりなさい”を弾き語り、終わった恋を嘆きながらも前向きな姿勢の女性を歌った”白夜”では佐野の歌に彩りを添える。くさい言い方になってしまうけれど、ピアノの繊細な音色に包まれた言葉がスーッと心の奥底に沁み込んでくるのだ。このときに感じた余韻は、原稿を書いている今もまだ鮮明に残っている。

Humbert Humbert  ピアノによるしっとりとした2曲の後は、終宴に向けて一気に加速していく。”メッセージ”、”罪の味”、”おいらの船”と陽気な曲が続き、最後はやはり”大宴会”でセットを占めた。すぐさま起こるアンコールには、佐藤と佐野のふたりがステージに現れる。ギターによるイントロが鳴り響くこと数秒…、静かに拍手が沸き起こった。”おなじ話”だ。先日の京都でもそうだったが、この曲には空気を変える力があるように思える。しかし、これでも満足がいかなかったのか、場内からは2度目のアンコールを求める手拍子が起こった。予定調和でないアンコールにふたりが選んだのは”If I had a hammer”。最高の笑顔で宴の最後を締めくくった。

 嬉しく、楽しく、ときに切なく、あっという間の2時間だった。客としてじっくり見たかったなぁという気持ちもあるのだが、「彼らの今を伝えたい、残したい」という気持ちが勝り、つい取材に走ってしまう。時間と体力のある限り彼らの動向を伝えていきたいと思っているが、この記事を見てハンバート・ハンバートに興味を持った方は、ぜひ現場の彼らに会いに行ってほしい。媒体を通して記録することはできるけれど、感動が生まれるライブというのは、やはりその現場でしか感じ得ないものなのだから。

 
 -- setlist --
 1st set
バビロン / 枯れ枝 / 荒神さま / 波羅蜜 / 透明人間 / 虎 / アメリカの恋人 / 国語
 2nd set
妙なる調べ / 待ち合わせ / おかえりなさい / 白夜 / メッセージ / 罪の味 / おいらの船 / 大宴会
 Encore
おなじ話 / 街の灯 / If I had a hammer
Humbert Humbert
ハンバート・ハンバート ライブスケジュール

09/28(日) 渋谷 クラブクアトロ
10/04(土) 心斎橋 クラブクアトロ
10/15(水) 新宿 レッドクロス(※佐藤良成のバンド、グッバイマイラブとして出演)
10/18(土) 法政大学 多摩キャンパス
11/03(月) 池の上 ボブテイル(※佐藤良成バンドとして出演)
11/16(日) 沖縄 桜坂劇場
12/06(土) 三軒茶屋 世田谷パブリックシアター
12/07(日) 三軒茶屋 世田谷パブリックシアター
詳細はこちらでご確認ください。


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button声の魅力に出合った夜 : (08/02/24 @ Shinsaibashi Club Quattro) : review by ryoji photos by funabashi
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"道はつづく "(国内盤)
"夜明け [Maxi] " (国内盤)
"「砂利」オリジナルサウンドトラック "(国内盤)
"おかえりなさい [Maxi] "(国内盤)
"今晩はお月さん [Maxi] "(国内盤)
"11のみじかい話 "(国内盤)
"天井 [Single] [Maxi] "(国内盤)
"おなじ話 [Single] [Maxi] "(国内盤)
"焚日 "(国内盤)
"E.A.D [Maxi] "(国内盤)
"アメリカの友人 "(国内盤)
"Blowin in the wind [Maxi] "(国内盤)
"FOR HUNDREDS OF CHILDREN "(国内盤)
"Blowin in the wind [Maxi] "(国内盤)



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