Spoon Market DU2008S @ Daikanyama Unit (21st Sep '08) feat. 80pan,Nirgilis,Kae Ishimoto,Stoned Green Apples,Flip Flap and Tokyo Pinsalocks
Interview with 東京ピンサロックス
東京発世界行!? のガールズカルチャーフェス!
 |
 |
 |
盛況の内に終了した第2回スプーン・マーケットDU2008S。参加した感想をひと言でいうと…楽しかった! これが一番単純で正直な気持ちだ。でも、楽しかったからこそ、それで終わりにしたくない。次はどうなるの? 何を見せてくれるの? そもそもどうやって始まったの? もっと知りたいスプーン・マーケットのコト。ということで、首謀者・東京ピンサロックスにインタビュー。事の始まりから、今回の感想やイベントに対する思いなど、本人の口からいろいろと語ってもらった。
-- スプーン・マーケットってどうやってはじまったの?
ナオコ:自分たちがこんなイベントに出たいっ! ていうのを、自分たちで作っちゃおうがはじまり。
ヒサヨ:東京ピンサロックスって、バンドだけのイベントだと対バンにすごく悩むって言われるんです。結構アウェーな中でライヴやることも多くて。そのなかで「めっちゃよかったです」て言ってくれる人が一部分。私たちはそれでもうれしいけど、でも、もっと同じ感覚をもった人ばっかりが集まった空間を作りたい。それはバンドだけじゃなくてアートとかの世界でも、「こういう世界が好きな人はきっと私たちの音楽も好きだろう」という人たちと対アートしたいんです。対バンじゃなくて対アート(笑)。
ナオコ:そもそも、私たちがライヴしたりレコーディングしたりするときに、メンバー間でのイメージの共有が音楽じゃない。あの映画のあの場面の感じとか、あの絵の感じとか。別のもので感覚を共有することが多いから。
ヒサヨ:私たちの音楽の捉え方がもうアートの一部なんです。
ナオコ:例えば、歌詞ひとつとっても「これを世の中に訴えたいんだ!」っていう歌詞を書いているわけでもないし。私たちは音楽オタクではないと思う。単純にかわいいものとかおしゃれなものにすごく興味がある感じ。
ヒサヨ:絵とかファッションと同じで、こういうことをしたいって思ってそれを表現する方法が、私たちの場合は音楽だった。それは絵を描いている人だったら絵になるし。だから、私たちがいいなって思う絵が飾ってあって、その絵が好きっていう人の前でライヴがしたいと思った。そういう人は絶対いるはずだし。マイノリティの最大級…ってよく言うんだけど、こういうものがピンポイントで好き、っていう人たちを凝縮して集めたイベントをやりたかった。
-- イベント・タイトルの由来は?
ナオコ:もともとスプーンっていうキーワードは頭にあって。前作の『プルトニウムEP』を作ったときに、アー写でスプーンをアイテムに使っているんですよ。そこにはちゃんと意味があって、スプーンってなんとなく女性的な食器やなーと思っていて。スイーツを食べるときのすくう感じとか、つるんとした形とか。
レイコ:刺す感じではないよね。
ナオコ:攻撃的じゃなくて、かわいいのが女性ぽいなと。
レイコ:だけど、金属で固くて冷たくてエッジが利いている。
ナオコ:そういうのもあって、ずっとスプーンていう言葉は自分の中にあった。
ヒサヨ:そこからたくさん候補があがって、最初、第1回目が金曜日だったから『フライデー・スプーン』でいいやんって、それで企画書も作ってた。でも、企画を進めていく中で、定着しなかった。だれも呼んでくれない…。それで、変えたほうがいいのかなーと。
ナオコ:その頃、ちょうどイギリス・ツアーに行っていて、そこにマーケットっていうのがあったんですよ。
レイコ:古着市だったり、インディーズのアーティストが小さいブースで出すようなマーケットがイギリスではいろんなところにあって。その雰囲気がすごくいいんですよ。
ナオコ:そこはメジャーなものがあるわけじゃないから、掘り出し物を見つけにいく感覚で人が集まるんです。そういう雰囲気があるイベントができたらいいなと。それで「スプーン・マーケットっていいやん!」てなったんやな。
ヒサヨ:言いやすい! 「スプマ」って略せるし。
レイコ:後から調べたらスプーンにはいろいろ意味があって。フロイトが哲学的に女性の象徴として分析しているとか、アフリカのある種族はスプーンをもてなしの象徴の意味で歓迎の儀式に使うとか、そういうのがたくさん出てきて。「あ、イベントの内容とあってる、あってる!」て。
-- 2回目をやり終えた感想を。
ヒサヨ:去年の第1回が終わってすぐに次の話しがあって、年明けから出演者の交渉を始めて。準備にはすごく時間をかけました。しかも、会場は代官山ユニット。ユニットがそういうイベントに使われているのをみたことがなかったから、図面上では「ここに写真を飾って、作品を置いて、ショップがあって…」というのはわかっていたけど、実際どうなるのかが想像がついていなかった。そこはすごく不安だったけど、当日セッティングして、準備が終わって会場を見渡したら「あ、形になってる!」って。その時が一番感動しました。自分達のライヴが終わってないのに、もう仕事終えた気分で(笑)
この会場は、私はギーで出演したり、他のライヴを観に行ったりしていたんですけど、その時に感じていたのはステージとフロアが別世界だということ。ステージはすごく遠い存在だった。でもスプマの時はそれが関係なく、アートがあってショップがあってという中に一個のブースとしてステージもあった。全部がひとつの空間になれたというのをライヴやりながら感じられて「でかした!」と思った。
レイコ:私たちがセッティングしている横でDJのDr.ウスイとお客さんがわーっとなっているのをみていて、ステージも含めて会場が円になっている感じがすごくあった。
ヒサヨ:そういう空気感をあの会場でできた。空間の作り方の成功に満足しています。
--成功の要因はなんでしょう。
ナオコ:妥協しないことじゃない? たくさんアイディアがでてくるなかで、しんどい部分もたくさんあったけど、そこで「まあ、いっか」て思わなかったからいいものができた。
ヒサヨ:ニューウェイヴとかエレクトロポップとか、今年の音楽のブームもとりいれていきたいというのがあって、出てもらうバンドにもすごくこだわった。
ナオコ:アートの人たちも、積極的に展示会に行って、その場で「わっ、いい!」と思った人にいきなり声かけたりして。今回出てもらった太田彩子ちゃん(針金を使って作った絵のような作品を出店。ステージ横の壁に展示されていた)も、そうやって誘ったうちのひとり。自ら足を運んで「おわっ」と思う人を見つけられて、相手も「やりたい」っていってくれる人を連れて来られたのがよかったんじゃないかな。いろんなアーティストが「お金を積むからきてください」って感じじゃなくて、うちらがやりたいことに共感してくれた。だから、楽屋の空気も良くて、みんな楽しくやれた。
ヒサヨ:感覚が近くて、声をかけた瞬間に「あ、この人は分かってくれる!」て思える人たちがあの場にはいたから。
レイコ:まったく違うジャンルの人たちが仲良くなっていくのを見ているのもうれしかったよね。DJの人とVJの人が初対面なのに「良かったよ!」っていいあってたり。
ナオコ:私もアクセサリーを作って出店していたんだけど、普通に出演者の人が普段使いたいからって買っていってくれて。お互いのリスペクトが感じられた。逆に私が「今回出てくれたから」ってあげようとしたら、「これは芸術やからそこに私はお金を払う」って。そういう感覚がすばらしい。これは前回やったときから思っていたんだけど、アーティストってやっていることが違っても、悩みだったりとかすごく近い嗅覚を持っていて、そこを共感できるから、多分初めてあってもすっと入っていける。そういう空間をうちらが作っていけてるのは素敵やなと思う。
レイコ:出店したアーティストさんたちからも「すごく幸せな空間だった」ていうメールをたくさんもらって。そういうのを見るとやって良かったなーと思う。そのメールを保存しておいて、次やる時にくじけそうになったら、それを見てまたがんばる(笑)
--次回も女性クリエイターを中心にやっていくの?
レイコ:女性限定というよりは、センスが近い人とやりたい。
ヒサヨ:出演者を女性に限るわけではないけれど、私たちが行きたいイベントという根本は守っていきたい。私の母親から「お母さん達が買えるようなものがあったら絶対行くのに」っていわれるんだけど、それはちょっと違う〜。それだとマーケットじゃなくてバザーになっちゃうから。そこは限定する! 今回は出演者を女性メインにしたから、お客さんが男の人が多くて。男の人が来てくれるのはもちろんうれしいけど、やっぱり私たちと同世代か少し上くらいの女の人にたくさん来て、楽しんで欲しい。その辺りのアピールがちょっと足りなかったかなとは思う。それが今回の反省点で、次の課題。
--では、次への展望を。
ナオコ:でっかい話になっちゃうけど、日本はまだまだアートとかが認知されていないのかなと思う。もっと気軽に楽しめる環境ができたらいいのに。ライヴはライヴだけじゃなくて、音楽を聴きながらお酒飲んでアートも楽しむ、みたいな空間が、うちらみたいな小さなところから広がっていけばいいなと思う。
レイコ:海外ツアーをしていても、似たようなことをしている人たちはいる。ロンドンやニューヨークにもそういうシーンがありそうだから、これが東京で定着したら次は海外も行っちゃおうかな(笑)
ヒサヨ:何かを見たときに「これスプーン・マーケットっぽいね」って行ってくれるようなシーンができたらいいなと思います。自分から出たいっていうアーティストがでてきたり、周りに認知されたイベントにしていきたいです。
「これ、イベントというよりフェスじゃないですか」。
会場となった代官山ユニットのスタッフがそう言っていたそうだ。うん、このオルタナ感、規模の大小はあれど、フジロックとかそういうものに近い。「自分たちが行きたいイベントを!」から始まった小さなフェスティバルは、少しずつ規模を広げ、まだまだ成長しようとしている。「次回は?」という気の早い質問にも「やります!」と即答してくれた3人。妥協をしないスーパーガールズクリエイターの次なる野望に期待して開催を待っていよう。
|
|
photos and text by wacchy
|
|
|