Smashing Mag / Chris Murray Combo (クリス・マーレー・コンボ) @ Shibuya Lush (15th Sept. '08)

　ライヴが始まる前、たまたま話をしたドラムスのベンと、来日中の伝説、ザ・スキャタライツの話で盛りあがっていた。なんと彼とクリスは、スキャタライツのオリジナル・メンバーでサックスのローランド・アルフォンソにとって最後のライヴを見ているんだとか。1998年11月2日ウェスト・ハリウッドのキー・クラブで演奏中に倒れた後、病院に運ばれて帰らぬ人となったのがローランド。そのとき、彼を病室に訪ねたのがロスをベースに活動していたジャンプ・ウィズ・ジョーイという、日本ではお馴染みだったスカ・バンドのメンバー、ウイリー・マクニールとジョーイ・アルトゥルーダで、彼らと筆者とのつきあいも長い。その彼らがローランドをゲストに録音しているのが"Generations United"という名作だ。加えて、その頃ではないかと思うのだが、歩行するのに問題のあったローランドのサックスを担いで、滞在中のホテルからライヴ会場へと同行したことのある筆者と仲間のミュージシャン、そして、クリス・マーレーのみんながどこかでつながっているような気がしたものだ。おそらく、クリス・マーレーのみんなとウイリーやジョーイともどこかで接点があったのではないかと想像する。

　さて、わずか3人のメンバーで構成されているのがこの最小編成によるスカ・ユニット。しかも、リーダーのクリスが抱えているのはアコースティック・ギターと、これで本当にスカが聞こえてくるの？　と、そう思う人もいるかもしれないんだが、それはとんでもない思い違いというもの。これまでいろいろなスカ・バンドを体験しているのだが、これほどまでにスカに対する愛情を感じさせたバンドもなかったように思う。ほのぼのとした暖かさ満載で迫る彼らのスカの素晴らしいこと。たまたま、サンセット・ライヴ取材中に彼らの存在を知って、この取材へとつながったんだが、このライヴに足を運んでよかったとつくづく思いました。

　そんな彼らを支えたのがこの日のオーディエンス。真性スカ・ファンがぎっしりと埋め尽くし、ウルトラ・ハッピーな気分で楽しんでくれていることがよほど嬉しかったんだろう、彼らの演奏のヴォルテージはあがりっぱなし。嬉しくて仕方がないという趣の彼らはオーディエンスと乾杯を繰り返し、予定調和ではないアンコールも披露してくれた。しかも、クラブ・スカの20周年イヴェントとしてザ・スキャタライツやトロージャンズがやってくることを知って、彼らがかなり悔しがっていたのも、どこかで嬉しかった。ここでも彼らとつながっていることを感じてしまうのだ。

「帰りたくないなぁ。みんな、ラッキーだよね。こんなイヴェントにいけるなんて。見逃すなよぉ」

　と、そんな台詞を残した彼らは、おそらく、後ろ髪を引かれるような思いで日本を離れたんだろうなぁと察します。いやぁ、本物のスカへの愛情を感じさせた彼ら、また、体験したいと切に願っております。