ファウスト @ リキッドルーム恵比寿 (6th Sept. '08)
噂の検証!?

噂はたくさんあった。ステージ上でバルサン焚いた、ピアノを解体した、卓球をやった、いやピンボールだった、破壊したテレビの破片が目に入りそうになった、煙で視界ゼロになった、生きて帰れない思いをした……、ドイツのバンドであり廃校で共同生活を営みながら音楽活動をしているという伝説に包まれたライヴを観るために、ゴーグルとマスクを用意して恵比寿リキッドルームへ行ったのだ。
開演前、アンビエントなSEが流れ、ステージに目を遣ると、2つあるドラムセットのうち、ひとつの上に鉄板がぶら下がり、コンクリートミキサーが置かれ、上手に白いボードなど、何に使われるのか想像するだけでワクワクする。そして前説の人が登場し、「この日のライヴ冒頭を録音して、それを150枚のCDRにしてライヴ直後に販売します。そのジャケットはこれから描きます」とアナウンスする。バンドが現れる。工事用ヘルメットを被った主にヴォーカルとベースを担当するジャン・エルヴェ・ペロンや、190センチくらいありそうな大男のドラマーであるザッピー・ディアマイアー、もう一人のドラマー&ノートパソコンのジェームス・ホブソン、元ニック・ケイヴ・バッドシーズのギタリストであるジェームス・ジョンストン、ボーカルやキーボードを担当する女性メンバーのスウェインという編成だ。
そして、スウェインが演奏中に絵を描いたり(それが先のCDジャケットになった)、ザッピがグラインダーで火花上げたり、ペロンがチェーンソーでドラム缶を切断したり、とやりたい放題だった。
肝心の音は、いろんな要素があって表現に困るけど、「意外にまともなロック」だった。もっと曲の体を成さないアバンギャルドなノイズみたいなのかと思ったら、2ndアルバム、『so far』のように、ビートがあって踊れるのもあるし、ハードな展開もあるし、アコースティックもあるし、エレクトロも混じるときもある。男女の口論を再現した演劇的なところもあった。もちろん、いわゆるアバンギャルドなところもある。ソニックユースとか、トータスとか、ボアダムスとかに通じる……というかファウストがそれらのお父さんみたいな存在なんだが。
お客さんも、昔を懐かしむ40代ばかりでなく、現在のポストロックの源流であるバンドとして確かめに来ていた若者もいたりした。だけども伝説と実際のギャップに戸惑い、様子見のような空気も流れていた。火をつけたり、物を壊したり、ステージ上で過激なパフォーマンスをするバンドはパンク以降珍しくないし、グラインダーにしてもチェーンソーにしても、もっと徹底的にやってくれないと物足りない。噂の視界ゼロの煙幕とは何ぞや? と期待していたが、一向に煙が吹き出ない。
だけど、そんな空気を変えたのがステージ前で観ていた一般のお客さんである外国人だった「ボクハ、ニューヨークカラ来タケド、ミンナ盛リアガラナイノ? 7000エンモトラレテイルンダヨ!?」と騒ぎ始めた。そして周りの仲間と激しく暴れ始める。そして、どうやら大人しく観ていたお客さんと喧嘩になったらしく、「ボク首シメラレタケド、コイツちんぽチイサイト思ウヨ、デモ盛リアガッタカライイ…………ボクモちんぽチイサイケド」と会場は、失笑と爆笑が入り交じる妙なことに。バンドのメンバーにまで「OK シャラップ!」と言われてしまった。まあ周りにいて、真面目に聴いていた人にとっては迷惑かなと思いつつ、これをきっかけに俄然フロアが盛り上がったのも事実で、本編が終わり、アンコールを求める盛大な拍手が沸き起こって、プログレッシブ・ロックのライヴにありがちな「私は音楽を客観的に聴いているんです! あなたとは違うんです!」みたいなシラーッとした空気はなくなって、ライヴを体で楽しむような雰囲気になったのだ。
何とも不思議なライヴ。そういえばコンクリートミキサーは何のためにあったのだろうか? ラストあたりで缶やコップが投げ入れられたが何も出てこなかったし。
|
reort by nob and photos by izumikuma
|
mag files : Faust
噂の検証!? : (08/09/06 @ Liquidroom Ebisu) : review by nob, photos by izumikuma
photo report : (08/09/06 @ Liquidroom Ebisu) : photos by izumikuma
|
|
|