ブリーチ @ 渋谷エッグマン (11th Jul. '08)
誇り高い轟音を
先日、ブリーチは新しいアルバム、『気炎』を発表した。このアルバムは以前からライヴで演奏していた"ジョヴォビッチ"を始め、彼女たちの初期のアルバムである『起爆剤』や『裸の女王』を思わせる激しく、ダークなトーンで貫かれている。この日は、アルバムの曲順に合わせて、"ジョヴォビッチ"、"月蝕"、"デス子"という順からスタートする。ブリーチ史上最も重金属的な重さを誇る"ジョヴォビッチ"の迫力を見せつけ、爆音の渦に巻き込んでいく。印象的なコーラスと爆音の対比が面白い"月蝕"、「死ぬんじゃないよ簡単に」とメッセージも含まれた"デス子"、とバンドが『気炎』のモードに入っていることが伝わってくる。
以前の曲である"雷光"や"サムライジャングル"も音の感触がさらに重くなっていて、新しいアルバムの曲と違和感なく同居するようになっていた。それでいて、ミヤのホンワカして笑いを誘うMCが相変わらずなので、ひと安心。アルバムを聴いていると、重く、激しく、暗い、ギリギリな音作りに、バンドが精神的に追い詰められているのではないかと心配してしまったからだ。長らく演奏されている"サンダンス"やマイケル・ジャクソンに捧げた曲で、ユーモラスなところも感じさせる"この頃ファンタジー"などは、バンドの芯は変わらないのだということがわかる。
「今日出るバンドはハードなバンドですよ。それに比べたら、ウチらはソフトですよ」と言ってミヤはお客さんを笑わせたのだけど、いや、ブリーチが一番ハードですから。この激しさはそこいらのバンドが真似できるレベルではないところまできてしまった。それは、彼女たちにその音を出す必然性があるに違いない。ただ単に、彼女たちの背景を語って納得できるものでもないだろう。解析する前にその音に圧倒されてしまうのだ。まさに「考えるな、感じろ」なのだ。何度でも、この轟音を浴びていくしかない。
ラストの"スカル裁判"まで駆け抜けた彼女たちの音は、「孤高」といってもいいくらい、他にはないインパクトと安易な共感を寄せ付けない気高さがある。その誇り高い音はライヴの場にのみ起こり得る奇跡のようなのだ。
-- setlist --
ジョヴォビッチ / 月蝕 / デス子 / 雷光 / サムライジャングル / パステルカラーの自分を殺せ / サンダンス / 悪魔は隣 / サイコキャラジー / げっちゅー人間 / スカル裁判
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mag files : Bleach
誇り高い轟音を : (08/07/11 @ Shibuya Eggman) : review by nob
photo report : (07/09/20 @ Shinjuku Loft) : photos by keco
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