近藤智洋 & ザ・バンドファミリア @ 下北沢 クラブ・キュー (9th July. '08)
集大成、もしくは新たなスタートライン
「僕たちは魔法を使えないけれど、使えないからこそ祈ったり願ったりできるんじゃないかな」。MCで近藤がそう話していた。今日のライヴを観ながら、お客さんは何を願っただろう? 少しでも長くこの素敵な時間が続くように、だろうか。
トリプル・アンコールに応えて、ひとりステージに上がった近藤智洋は"Feel"という歌をうたった。ご存知の人もいるかと思うが、これは近藤智洋名義の曲ではない。2005年7月1日、このライヴが終わらなければいいと願ったあの日も、3回目のアンコールでこの曲をうたっていた。3年ぶりにピールアウトの曲がライヴ会場に鳴り響いた。
名古屋〜大阪と、いい雰囲気でライヴを重ねて東京に戻ってきた近藤智洋&ザ・バンドファミリア。『二つの鼓動』発売記念ツアーは、近藤のソロはまだまだ続くが、バンドではここ下北沢クラブ・キューがファイナル。さらに、今後発売予定のDVDの撮影も入っているということで、気合いは十二分だった。お馴染ザ・バンドの"ラスト・ワルツのテーマ"にのって、引き締まった表情のメンバーが現れ、それぞれの位置についた後、最後にステージに出てきた近藤智洋。満員のお客さんを前に嬉しそうな表情を見せ、SEの終わりを指揮者のような手振りでしめる。東京では2年ぶりのレコ発ワンマン。あの時と会場は同じだけれど、大きく変わっていることがある。2006年7月25日は近藤智洋とゲスト多数だったけれど、今回は不動の5人、近藤智洋&ザ・バンドファミリアとしてステージに立つ。この違いは見た目以上に大きい。「パーカッション、ピロ!」の声を合図に、軽快なコンガのリズムでライヴが流れ始めた。
大阪は小さいハコで、少々荒いくらいがちょうどいい雰囲気で高揚していったが、ここでは、きれいな照明と完璧に整えられた音できちんと聴けるライヴ。観客はバンドが出す一音、一句をかみ締めるようにじっと見つめている。そういう状況を「普通」だと感じてしまうのはぜいたくなのだろう。もしも、同じライヴを1年前に観ていたら、もっと手放して喜んでいたかもしれない。しかし、今はもう「普通にいい」ではものたりなくなっている。いいライヴを重ねることで、こちらもバンド側も求めるものが高くなっているのだ。ハイレベルな演奏をしているにもかかわらず、大満足! とはいかない表情を見せていたメンバーだけれど、それは、そのまま成長の証だといっていい。
6月に行ったインタビューで近藤は、この2年の活動で人とのつながりを強く感じるようになった、と話していた。その想いの代表作"二人の航海"は、この日一番説得力を持って響いてきた。ひとり、ふたりと集まり、ザ・バンドファミリアとして結束したメンバーに、周囲を固めるスタッフ、集まったお客さん、この場にはこられなかったけれど、どこかで応援してくれているファン。いままでつながった人たちみんなに届くような歌だった
その後は、ギターセット、ピアノセットとそれぞれで、体ごと揺さぶるナンバーを続ける。"バンビーノ・ステップ"では、恒例となっている客席との掛け合いを楽しみ(さすがワンマン、客席の反応がいい!)、「ツアーが終わるのがさみしいから、最初からやろうか(笑)」と1曲目の"A New Morning"のサビを繰り返し、本編は幕を閉じた。
1回目のアンコールは、大阪に続き、ピアノ=近藤、アコギ=城戸紘志、ドラム=ピロ、ギター=山田貴己、エッグシェーカー&ベース=工藤佳子のスペシャルアコースティックセットで"ここから"。「ドラム、ピロ!」と紹介されたときの、客席の「えっ!?」と、じっと座っていた佳子がシェーカーを振り始めた時の「おっ!」な反応はしてやったり。全員でこういうことも出来るバンドになったのだ、この5人は。たまにしか顔を合わせることはないけれど、音はしっかりつながっている。それを再確認できたシーンだった。そこから"小さな欲望"、アンコール2の"走る風のように、落ちる雨のように"と"近藤智洋"を象徴するような曲を演奏し、鳴りやまない拍手のなか、件の3回目のアンコールへ続くのである。
3年間封印してきた歌をここでうたった。
今日のライヴは、47都道府県を回り、「ある意味、自分のファースト・アルバム」という会心の作品をリリースし、それを一緒に作った仲間とツアーを行った「近藤智洋・第一章」の一区切りであり、ここからまた新しい歌をうたっていくスタートラインでもあったのかもしれない。
set list
1.A New Morning/2.Your Bike Ride/3.恋に落ちたままで/4.ローラーコースター/5.静かな世界へ/6.甘い果実/7.魔法/8.Baby Boo/9.水音/10.灯がともる頃/11.MONA/12.二人の航海/13.感触/14.Barefoot Diaries/15.草原/16.Rainbow Step/17.Bambino Step/18.A New Morning〜reprise〜
-en.1-
1.ここから/2.小さな欲望
-en.2-
1.My Sharona (The Knack)〜走る風のように、落ちる雨のように。
-en.3-
Feel (Pealout)
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近藤智洋 セカンド・アルバム『二つの鼓動』 発売中!
MySpaceで試聴ができます。
『二つの鼓動』発売記念ツアー
*弾き語り
7月19日 鹿児島バー・モジョ(ワンマン)
7月20日 熊本ブリック・ア・ブラック
7月21日 福岡トゥペロ(ワンマン)
7月24日 三軒茶屋グレープフルーツムーン(ワンマン)
*詳細はオフィシャルサイトでご確認下さい
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report by wacchy, photos by kenji kubo
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