buttonエイジアン・ダブ・ファウンデイション
@ 難波ハッチ (30th May '08)

混ざり合った先は


  パンクとバングラを掛け合わせて『パンカラ』と名付けられた6作目となる新作を引っさげてのジャパン・ツアーとなったエイジアン・ダブ・ファウンデイション。過去にどのくらい日本でライブを行っているのか正確な数字は知らないが「たくさん」ということだけは一目瞭然。非常に日本の観客の扱いに慣れているというか、盛り上げ方を心得ているというか、さすが15年のキャリアがあるバンドだなと感心してしまうライブ運びの上手さ。

  「モリアガレ〜」というサンJの威勢の良い日本語でのかけ声と共に鳴らされたビートに合わせて初めの数曲はひたすら元気よく飛び跳ねていたフロアーの若者たち。そのまま最後まで飛び跳ね続けられるわけではなかったが、そんな体力低下が明白な彼らの姿を目にすれば、大きなアクションで煽りまくるエイジアン・ダブ・ファウンデイション。ステージ上から「メイク・サム・ノイズって日本語でなんて言うの?」と尋ね、最前列の客にマイクを向ける。即答できない客。するとすかさず「モリアガレ〜」と叫ぶサンJ。「うるさい」とでも言わんばかりにメンバーたちに睨まれる。こんなやりとりも絶妙の間でやってのけてしまうのだから見ている側も疲れている暇はない(結局、客の答えは「騒げ」だった)。

  無責任かもしれないが、エイジアン・ダブ・ファウンデーションのライブを見るのは初めてで、過去の作品だけでなく『パンカラ』すらまだ聞いたことのない私には、この日彼らがどんな曲をどんな順番で演奏したのかを記すことはできない。

  ライブが始まるまでは、この日の難波ハッチはもっと空いているのではないかと思っていた。あれほど若いお客さんが多いというのも少し意外だった。だが、次第にライブが進んでいくうちに、彼らの音楽は政治的なメッセージ云々よりもダンス・ミュージック(あるいは暴れるための音楽?)として受け入れられている側面の方が強いのかなという印象を受けた。会場後方では音が割れていて聞こえにくい。それでも重くて激しいビートが鳴れば、自然に体も動く。ステージから煽られるままに皆が手を叩き、跳びはね、汗だくになって彼らの音楽に身を任せれば楽しくないはずはない。

  普通に日本で生活していれば頻繁に耳にすることは少ない南アジアの香りのするリズムにパンクやロック、ダブなど本当にさまざまな要素が一体となって爆音で鳴り響く。バングラとパンジャビの違いがよく分からなくてもそれらのリズムを叩き出すパーカッションをナマで見ていられるのも興味深い。

  世界の第一線でひとつのバンドを長く続けるというのはやはり相当大変なことなのだろう。爆音のさなかそんなことがふと脳裏をよぎった。現時点で『パンカラ』が発売されているのはなぜ日本だけなのか。本国やその他の地域での発売予定は秋頃という情報は目にしていても正式な発売日程は不明だ。今までにエイジアン・ダブ・ファウンデイションが果たしたその功績が大きいことは確かだろう。ジャンルを越えた音楽が混ざり合わさって奏でられるなんてことは今では当たり前のこととなっている。ダンス・ミュージックの世界だけ見てもその移り変わりは速く、それらの新しいビートと、より伝統的なバングラやパンジャビの音楽を融合させる若手もどんどん現れている。

  今回初めてエイジアン・ダブ・ファウンデイションのライブを見たわけだが、新曲とそうでない曲の区別がつく聞こえ方はしなかった。おそらくそれはあまりにもさまざまなものが混ざり合う彼らの音楽性ゆえのものなのだろうが、『パンカラ』が他の国々のファンたちにどんな風に受け入れられるのかちょっと気になるというのが正直なところだ。このアルバムのもっと先を見据えているであろうエイジアン・ダブ・ファウンデイションの今後の活躍に期待したいなと思う。

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