フォールズ / ミッドナイト・ジャガーノーツ @ 名古屋ボトムライン (16th May '08)
新しい風を求めて
今年のフジロックへの出演も決定した新進気鋭の2バンド、フォールズとミッドナイト・ジャガーノーツ。彼等のジョイントツアーが行われるというので期待を持って見に行くことにした。会場に入り程なく耳に飛び込んできたのが「フォールズ、フジロック決まったねえ!!」 という喜びの声。すでに日本でも評判になっているバンドなんだあと感心する。始まる前にこういう評判を耳にするとなおさら期待感が増す。
開場時間よりも10分ほど経ったところで先行のミッドナイト・ジャガーノーツが登場。簡単に紹介しておくと、バンドの舵を取るヴィンセントとアンディによる二人のジャガーノーツ兄弟にドラマーのダニエルを加えた、オーストラリア出身の3人組。日本でも4月に1stアルバム「ディストピア」がリリースされ、それを引っさげてのツアーとなった。
ステージに姿を現したと同時に、迫力あるダニエルの強烈なドラムが地鳴りのように鳴り響き、いきなり度肝を抜かれた。ギターやベースはシャープで無駄なく心地よいビートを刻み、シンセやキーボードは空間的広がりを見せ、煌びやかなサウンドを演出。そしてファルセットを使った浮遊感のあるヴォーカル。それぞれが渾然一体となって不思議な空間を創り上げていく。時には軽やかに頬を撫でる風のようでもあり、時には打ち付けるような冷たい風のようでもある。様々な表情をもつエレクトロニカという印象を強く受けた。そしてヴィンセントとアンディがギター、ベース、キーボードを曲によって入れ替わるという大胆なパートチェンジにも目を奪われた。目にも耳にも新鮮で刺激的な約50分間のステージにずっと魅了されっぱなしだった。
ライブに向けて音源も聴かず、何の先入観も持たずに彼等のステージを見たのだが、ただただ目の前に広がる感動的な音楽空間に酔いしれ、心を奪われた。フォールズのレポートもこの先にあってここで結論を言うことは恐縮ではあるが、ミッドナイト・ジャガーノーツの方に私の心の天秤は傾いてしまった。
30分のインターバルを挟み、いよいよフォールズが姿を現した。だが、前代未聞の光景に目を疑った。なんとギタリストのジミーが松葉杖を付いているではないか!? そして、そのまま用意された椅子に座りギターを構える。どうやら本日は座りながらの演奏になるようだ。本当に大丈夫なのかな、今日のライブは・・・。不安が脳裏を駆け巡ったままライブはスタートしていく。
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少し長めのインストナンバーを挨拶代わりに演奏し、MCを挟んで定石通りデビュー作の1曲目に収録されている「The French Open(ザ・フレンチ・オープン)」を披露する。興奮を掻き立てるように刻まれるビート、複雑に絡みあうツインギターに反射的に身体が動かされる。「踊れる要素を取り入れよう!」という発想がバンドとしての原点だというが、その言葉通りにライブも躍動感溢れるもので、会場は早くもダンス・フロアへと変貌を遂げる。先行シングル「Cassius(カシス)」が続けざまに演奏されると大きな歓声と共に一段と群集の波が大きくなる。異様なハイテンションに踊り出す人も多数出現し、もはやクラブで見るような光景ではないかという錯覚すら起きる。
ダンスミュージックとロックの接近と融合を図り、彼等なりの新感覚を表現したデビュー作「アンチドーツ」にはなかなか興奮させられた。だが、実際にライブでこうして見るとやっぱり湧き出る熱量が違う。曲を消化していくごとにどんどんと音が厚みを増し、バンドの動きも加速。前身のバンドで培ったマスロックの妙技を生かした知性的なサウンドを作り上げているが、根幹はやっぱり踊れるロックサウンド、そしてはちゃめちゃなパフォーマンスにある。だからこそ人々は我を忘れて踊り狂い、酔いしれてしまうのだろう。足を骨折しているはずのジミーも熱い観客の声に応えて、序盤の数曲を座って演奏しただけで、後はプロ根性を見せてラストまで立って演奏をして、ライブを盛り立ててくれた。彼のその必死な姿を見るだけで余計に胸が熱くなった。
1時間強、十分に彼等のライブを堪能することができた。けれどもジミーの骨折も無く、万全の体制であればどんなライブになるのだろう? という興味が湧いたのも事実。早くも2ヵ月後のフジロックで日本の地に戻ってくる彼等。その時は万全の体制で、きっと今日以上のライブを見せてくれるだろう事に期待したい。
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review by takuya and photos by yoshitaka
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