エルボー @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン (15th Apr. '08)
縮めたい、この温度差を
ラジオから流れて来たその小鳥の囁きの様な歌声に心を奪われ、どれどれ一体どんな御姿をしているのかといそいそライヴへと足を運んでみたら、その辺のパブでガハガハ笑っていそうな恰幅の良いヴォーカリストにがっかり、いや、実際は彼らの凄まじく洗練された演奏力と、直に聴くと更に一層その楽曲の素晴らしさに感激したエルボー。2、3年の程良いスパンで彼らは常に期待を裏切らない上質の作品を我々リスナーに届けてくれている。先月に発売された4枚目のアルバムも、え、まだそんなもんだったけか、とこちらが拍子抜けするほど、もっと多くのレコードをリリースしていそうな感じで、ヴェテランと評するにぴったりな落ち着いた佇まいだ。とはいってもまあ演奏者としての活動期間は長く、メンバーも決して若手というわけではないけれど。出身地のマンチェスターを始めとして、ここ英国では長く深く支持されている彼らだのに、今一つ日本で開花する様子が見られないのは何とも寂しいところだ。
開演時刻を15分ばかり遅れて登場したメンバーは、相変わらず呼吸のぴったり合った演奏で、フロントマンのガイ・ガーヴィの高音も綺麗に伸びている。彼はこよなく煙草を愛している事を公言しているだけに、どうしてガラガラにならずして、こんなに天使のような歌声となるのだろう、と感嘆ものである。危うげな高めのキィでも、彼が外す事は滅多に無い。この辺りの安心感は、同じ様な声質を持つレディオヘッドのトム・ヨークにはちと望めない、まさに恵まれた才だ。トムはトムで外れるか外れないかの危うさがまた良かったりするのだけれど。バックに女性の弦楽及びコーラス隊を従え、広いステージの上を各メンバーが定位置からどっしりとエルボー節を奏でる。前述したガイの歌声は勿論エルボーの大きな魅力には違いないけれど、もっと、バンドが一体となった演奏力が彼らの味であり、それがバンドとしての象徴にも感じられる。音響の良いブリクストンは、そんな彼らの真骨頂を体験できる最高のヴェニューだ。大きな会場ながら、手を伸ばせば届くようなバンドの飾らない距離感も嬉しい。ガイのおしゃべりも聴き手の気持ちをほぐし、高め、一つにする温かい響きを持ち、会場は時に合唱が起こったり、爆音にも近いダイナミックなパフォーマンスに終始オーディエンスも沸いた。
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UKツアーの千秋楽となった今夜は、同じ北部はシェフィールド出身のリチャード・ホーリィと、前座を務めたトゥー・ギャランツを迎え、アンコールを締め括ったエルボー。この曲も良ければ、あの曲も胸に響く、とひとつひとつお進めするエルボーのナンバーを上げていたら枚挙に暇が無い。普遍に感ずる優しさや怒り、そして悲しみを叙情にのせて音に刻む。そんな真摯さが素敵なバンドなのだ。聴かずに通り過ぎるほど、勿体ないこんなバンド、そうそういるもんじゃない。
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report and photos by kaori
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2008
縮めたい、この温度差を : エルボー : (15th Apr. @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
我が道ゆくよ、のほほんと : アダム・グリーン : (8th Apr. @ ココ、ロンドン)
命燃え尽きるまで : ギャロウズ : (29th Feb. @ アストリア, ロンドン)
みんなの、ミーカ : ミーカ : (28th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア, ロンドン)
2007
一等星はかがやく : パトリック・ウルフ (21st Dec. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア, ロンドン)
年忘れ音頭でヨヨイ : カイザー・チーフス (15th Dec. @ アールズ・コート、ロンドン )
近未来の戦士達 : クラクソンズ (6th Dec. @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン )
ゴス壇場の帝王 : マリリン・マンソン (5th Dec. @ ウェムブリィ・アリーナ、ロンドン)
隠れ最強ロック : ザ・ハイヴズ(23rd Nov. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
身近なプリンセス : ケイト・ナッシュ(13th Nov. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
結束したバンド力 : ザ・ナショナル(8th Nov. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
秋の夜長はシンズがいい : ザ・シンズ(7th Nov. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
今を燃やし尽くせ : エンター・シカリ(6th Nov. @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン)
現役に勝る者無し : ザ・シャーラタンズ(5th Nov. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
醒めない夢のひとときよ : ルーファス・ウェインライト(31st Oct. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
飾り気無しの痛快ロック : ザ・クリブス(17th Oct. @ フォーラム、ロンドン)
四次元グルーヴ : バトルス(11th Oct. @ ココ、ロンドン)
グレイ・ゾーンを脱却して : エディターズ(8th Oct. @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン)
大所帯カントリィ : ザ・ニュー・ポルノグラファーズ(4th Oct. @ ココ、ロンドン)
現代版、グラム・ロック : ザ・ダンディ・ウォーホルズ(3rd Oct. @ エレクトリック・ボールルーム、ロンドン)
痙攣ギターの暴走は止まらない : フォールズ(2nd Oct. @ スカラ、ロンドン)
食らえ、ライオット : ギャロウズ(26th Sept. @ エレクトリック・ボールルーム、ロンドン)
おしゃべりさえも歌になる : ファイスト(24th Sept. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
マイノリティの救世主 : ザ・ゴシップ(14th Sept. @ フォーラム、ロンドン)
どうした!?ゴー!チーム : ザ・ゴー!チーム(12th Sept. @ エレクトリック・ボールルーム、ロンドン)
せつなさは、直立不動ロックと共にあり : ザ・ジーザス・アンド・メリー・チェイン(7th Sept. @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン)
健全・安全・好青年 : アスリート (5th Sept. @ HMV、ロンドン)
やんちゃな成犬、余裕のラスト : ザ・ストリーツ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
ロックンロールでいいじゃない : ダーティ・プリティ・シングス (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
乗らずにいられぬこの挑発 : エム・アイ・エイ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
ポジティヴは勝つ : ザ・ゴー!チーム (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
ブレーメンの音楽隊 : ザ・ランブル・ストリップス (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
一発屋の彷徨 : ジ・オートマティック (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
絡んでも、絡み足りない : フォーワード・ロシア (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
詩人がバンドを組んでみたら : アート・ブルート (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
燃える地球の裏側 : ボンヂ・ド・ロレ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
あまたのバンドと何が違う? : ザ・ウォンバッツ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
日向で爆発、陽のパワー : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
可愛いだけじゃあ、だめなのよ : ライロ・カイリィ (20th Aug. @ イズリントン・アカデミィ、ロンドン)
宵を彩るファンタジスタ : シザー・シスターズ (26th Jul. @ ジ・オートゥ、ロンドン)
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