button リズMC
@ ザ・クロー・ボールルーム、
ロイヤル・フェスティバル・ホール、ロンドン
(11th Apr. '08)

週末の幕開けは

  60年近い歴史を持つロイヤル・フェスティバル・ホール。4、5年前に一度だけライブを見るために訪れたことがある。数年前には、老朽化が問題になっているなんていうことをテレビのニュースで見た記憶もあるが、約2年に及ぶ改装期間を経て、2007年夏に新しく生まれ変わっていた。この界隈はサウスバンク・センターと名を改めはしたものの、ロンドンにおける文化の発信拠点のひとつであることには変わりない。

  そんなサウスバンク・センターの活動の一環には、さまざまなジャンルの若手アーティストの支援も含まれている。ニティン・ソーニー(Nitin Sawhney)の監修で2008年度Emerging Artists in Residence(イマージング・アーティスツ・イン・レジデンス)のひとりに選ばれたリズMCのライブを見るために、私はここにやって来たのだ。実はこの日はすでに数ヶ月前から別のバンドのライブ・チケットを買っていた。今回の旅では私がロンドンにいるのはこの日だけ。偶然とは言え、2ヶ月毎に開かれているというこの無料イベントを選んだことを後悔はしていない。

  会場はメイン・ホールではなくThe Clore Ballroom(ザ・クロー・ボールルーム)。カフェなどもあるフロアーにあって仕切りのない開放的な空間だ。開演時間より早めに着いてしまったのだが、音が聞こえると思いステージを眺めてみたら、どうやらサウンド・チェックをしているらしい。その隣でみんなフツーに「お茶」していたり、ようやく歩けるようになったくらいのチビッ子なんてリズムが鳴りはじめるとそれに合わせてヨタヨタしながら踊りだしてしまったりとなんとものんびりとした穏やかな時間が流れていた。

  この日は金曜日。ライブ開始は午後8時半。終了したのは深夜0時ちょっと前。何組のアーティストが演奏したのかすら覚えていられないくらい多くの若手アーティストが次々と素晴らしいステージを見せてくれた。もちろんリズ以外は全て初めて聞く人たちばかり。名前も知らない。ジャンルもさまざま。ジャズもあればヒップ・ホップもある。アジアなものや、ポエトリー・リーディングかそれともピン芸人のひとりコントかのようなものもある。どこの国の民族楽器なのか私にはさっぱり分からない楽器がたくさん登場するバンドもいれば、ヒューマン・ビートボックスもあり。全く退屈しない。しかも、観客はというと「ここは野外フェスか」と錯覚してしまうくらいくつろいだ雰囲気で音を楽しんでいる。年齢も肌の色もさまざまな観客たちが互いに仲良くあいさつを交わしながら座り込んでいるフロアーには緑の芝が見え、照明のライトが太陽に見えた。これだけのいい音楽をこうして、しかも、タダで楽しめるのだから、本当にうらやましい環境だ。

  特に面白い存在だと感じたアーティストを少しご紹介。まずは、この日のトップ・バッターを務めたAyanna Witter-Johnson。私の耳には「エイヨナ」と聞こえた名前だが、チェロを弾きながら、時にはピアノを弾きながら歌う彼女の声は本当に素晴らしい。バンドを引き連れての演奏だったが、そのジャジーなサウンドに思わず聞き惚れてしまった。もうひとり印象に残っている女性がNila Raja。インド系の女の子らしいメイクも素敵だった。

  最も衝撃を受けたのは、ヒューマン・ビートボックスのReeps one。見た目にはやや挙動不審な感じの普通の少年。おまけに目もちょっと泳ぎ気味。だが、ひとたびその口から何らかの音が発せられれば、そりゃぁもう何がどうしてどこからそんなに音が同時にたくさん出てくるのか全く分からないが「すごい」としか表現できないくらい面白い。さすがは今年のThe UK Beatbox Championshipsのロンドン地区大会で2位になったという実力の持ち主。最後には大きなハーモニカを取り出し、それを吹きながら他のいくつかのビートも同時に出すという技に、このフロアー全体に拍手喝采が響き渡ったのは言うまでもないだろう。

  さて、肝心のリズMCだが、彼はこの日まさにマスター・オブ・セレモニーズ(MC)であった。このイベントの司会役だったのである。ある時はバルコニーにいたり、またある時は客席にいたりと、アーティストの紹介のセリフもさることながら、一味違うホスト役の彼の存在もまた、このイベントを楽しめた理由のひとつなのかもしれない。

  先月、サウス・バイ・サウス・ウエスト(SXSW)で彼のライブは経験済み。キラっと光るものを持っているアーティストのライブは何度でも見たくなってしまう性分なので、小さな機会でも逃したくはない。テキサスで購入した5月に発売予定の5曲入りEP『Confirm / Ignore』はあの日以来毎日ずっと自然と指が再生ボタンを押し続けてしまうのだ。

  そのEPにも収録されている"Sour Times"という曲。オースティンでは触れられることはなかったが、これは、昨年秋に英国の民放テレビ局チャンネル4で放送されたドラマ"Britz"への彼なりのアンサー・ソングなのだと私は思っている。このドラマは、先日発表されたBAFTA(英国映画テレビ芸術アカデミー)の「ドラマ・スぺシャル」部門を受賞。リズは主役のひとりを演じていた。さまざまな反響があって当然の内容のドラマだ。SXSWに出かける前に輸入DVDでこのドラマを見たのだが、英語の字幕のみなのでストーリーの全てを理解することは難しかった。それでも、それなりにかなりいろいろなことを考えさせられてしまったのである。先にも登場したAyanna Witter-Johnsonをチェロとコーラスに、そしてヴァイオリンとエレクトリック・ギターをバックにしての"Sour Times"はSXSWでのそれとは少しまた趣が違った聴き方ができたことをうれしく思う。

  最後に"Radar"という流れはSXSWと同じ。"Don't Sleep"では観客に歌わせることもしていた。わずが25分ほどのステージではあったが、ライブを重ねるごとに上手さを増していくのがハッキリと分かる。こういうアーティストだからこそ、きっと必ずまた見に行こうと思ってしまうものである。

  それにしても、ここは本当に懐の深い街であると今回改めて実感した。英語もロクに分からないただの東洋人観光客である私のような者でも何の違和感なく受け入れてくれる。「音楽好き」という共通点さえあればなおさらだろう。若いアーティストたちの真摯な姿と、温かいお客さんたちにすっかり癒されてしまったひと時だった。


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