ロドリゴ・イ・ガブリエラ
@ 渋谷デュオ・ミュージック・エクスチェンジ (30th Mar. '08)
指は世界を駆け巡る
先行に当たった/外れた〜、なんて言葉がネット上を飛び交ったのがずいぶん前。それは、メディアが広告をバンバン打ち「一応、知っておかなきゃいけない雰囲気」に飲まれたというような気持ち悪さはなかった。とにかく、個人がそのライブに圧倒されたり音源に腰を抜かしたりとあくまで口コミを中心としていて、マーケティングとは一切関わりのないところでプレミアチケットと化したのだ。今まで、情報に外堀を埋められて踊らされる役回りだったオーディエンスと、操っていたレーベルの立場がまるごと逆転していた。
もちろん、今回の来日は日本盤のプロモーションの一貫であるが、契約そのものは輸入盤がバカ売れしている状況に乗っかったというだけだと思う。あくまで聞いた話だが、06か07年ごろに音源をメジャーへと持ち込んだ時には対して大きな反応を得られなかったというが、今ではどうだ、『激情ギターラ!』という苛烈なタイトルとなって、大手のレーベルから世に出ている。しかし、まだまだ店のポップや、ネット上で活躍する無数のライターによってベタ褒めされた輸入盤の売れ行きには遠く及ばない。小さな力の集合体であるオーディエンスが、確実に利益を生むものにしか手をださないレーベルを出し抜き、マーケットを揺さぶったという事実そのものが爽快で、ハコから溢れる人だかりを見るたびにニヤニヤしてしまった。
「アーティストがヤバければそれでいいじゃないか」なんて声も聞こえてきそうだが、今後このような状況が続けば、かなり面白いことになる。世界には、ワケわからんけれども凄いアーティストがうじゃうじゃいるという事実を知るひとつのきっかけになったのではないだろうか。
ロドリゴ・イ・ガブリエラは、いわゆるバンド形態のアーティストではなく、ギター2本でのみ演奏するアコースティック・ユニットだが、そのパンチ力は、ただ人数をパートのぶんだけ揃えたバンドを一蹴するほどに凄まじい。
ロドリゴは5、6弦をミュートしながらベースラインを生み、ガブリエラは手のひらで弦を叩いてバスドラムのような音を生み出し、時にはボディを打ちつけてパーカスまで盛りつける。ガブリエラの手は、まるで映画『アダムス・ファミリー』のハンドくんのごとく軽やかに踊り、結んで開いて小気味良くタップする。目をつぶれば、2人で演奏しているとは到底思えないほどの手数で、様々なアプローチが入り乱れて迫ってくる。メタリカのカバーも歌を省いたインストになっているが、逆に言えば、楽器のポテンシャルを最大にまで高めて、ヴォーカルをまったく必要の無いものとしている。ジャズもラテンもメタルもハードロックもガレージも散りばめた、まさに激情という一枚布で包み込んだライブ。それでいて、ガブリエラのMCは「トーキョー ニ コイ シチャイマシタ!」……んまー、なんとカワイイ! コメントの落差もそうだが、彼らにはいたるところにギミックがあるから面白い。スチール弦でフラメンコのような指使い、アコギでメタルはもちろん、ロドリゴとガブリエルの間にあるライバル感覚などなど、他のライターさんがどう書いているか見てみたいくらいに盛りだくさんなのだ。
また、二人の上手(かみて)と下手(しもて)にそれぞれ小型カメラが設置され、手元がスクリーンに映し出されるのだが、演奏が激しくなればなるほど、足が刻むリズムの振動で画面にノイズが走る。それは偶然とはいえ、まるで弦の振動をあらわすかのように左右へ細く広がっていて、彼らが抱くギターの悲鳴が映り込んでいるかのようでもある。
彼らがおさえめに演奏すれば、細部まで聞き漏らすまい、見逃すまいとハコは静まりかえる。こちらは息をするのも遠慮したいほどに魅入り、唖然としすぎて動きは止まる。こころは弾んでいるくせに、前のめりの無呼吸状態に陥っている状況なんて今考えるとかなりおかしいが、あの時はそれが当たり前の反応だった。
以前、ボナルーで見た時はステージの上で展開される神業に飲まれたという、ただそれだけだったのだけれど、ここにきて彼らは新たな術を身につけていた。参加したいが、あまりに凄すぎて受け手にしかなれないオーディエンスを煽って、取り込むようになっていた。ピンク・フロイドの「歌わし」は成功しなかったが、フロアを三つに分けて、オーディエンスに手拍子によるリズム隊の役目を与えつつ、ロドリゴとガブリエラ、そして気心の知れたPAやVJたちスタッフのみで活動してきた彼らが視点を変え「数の力」で攻めた時に生まれたハコの一体感たるや……そらもう凄まじいもの。ウチらも嬉しいし、彼らも嬉しいはず。「フジ」そして「3日間」という期待通りのフレーズが飛び出したのだから、是非とも夏に「天にも昇るライブ」というものをその眼で体験して欲しいと思うのです。
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report by taiki and photos by hanasan
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