ソウル・フラワー・ユニオン @ 渋谷オーウエスト (29th Mar.'08)
表現者たちが見せる
面白い音楽には、何かを壊すという側面があるものだと思っている。音楽にどんな価値観を求めるのかは、人によって違うだろう。それでも、チャート・ミュージックが、今でも無くなっていないことを考えると、音楽には価値観を取りまとめる機能も持ち合わせているということだろう。サラリーマンは『リンダ・リンダ』で慰め合って、女子高生はカラオケ・ボックス中で仲間がいることを確認し合っているのだ。だけどだ、やっぱり無自覚にそんなものに巻き込まれたら面白くともなんともない。ソウル・フラワー・ユニオン(以下SFU)は、そんな価値観に巻き込まれずに荒地を突っ走ってきたバンドだ。昨年から始まった彼らが主催するイベント『闇鍋音楽祭』は、畑違いと言ってしまってもおかしくないようなバンド達と競演を果たしている。(昨年はサケ・ロック、ユア・ソング・イズ・グッドetc、今年は赤犬・ミドリなどと競演)それは、傍から見ていても、何が起きるのだと期待してしまうような尖がったイベントだったし、出来上がった囲いになど収まらないSFUの姿勢を感じるものだった。
会場に到着したのは、開演時間を10分ほど過ぎた頃だった。会場には入りきらないほど人が溢れかえっていた。この日の対バンは曽我部恵一。これが、意外に体育会系ノリの音で驚いた。しっかりとしたリズムと、時々見せる沸点をぶっち切ったような音。以前、目にした時は、大学のサークルみたいなノリが鼻についたが、そんな事はまったく感じさせない。赤裸々で、素直すぎる言葉で歌われる歌詞にも説得力を持たせるぐらいバンドの演奏は太かった。4人のメンバーが向かい合って演奏する姿は非常に微笑ましく、同時に力強いものだった。バンドというものを意識させてくれる確かなものの存在。それは、決して内向きで終わろうという雰囲気では無く、外側に向けて放出されるパワーをビンビンと感じさせるものだった。会場の熱気も申し分なく、彼が歌う「愛」とか、「ロック」という言葉に普遍的な力を感じる熱演だった。
そんな、曽我部の熱演を受けて登場したSFU。その影響があったせいなのか、いつにもまして熱量高めの演奏を聞かせてくれた。前半は新曲を中心に、後半は魂のアンセムとも呼べる名曲達をという流れも秀逸だった。特に新曲達はこれまでの彼らの音楽の先を聞かせてくれるような素晴らしい楽曲ばかりだった。言葉の一つ一つを噛み締めるような曲が多く、中川の音楽に対する重心が歌そのものに向かっている様子が窺えた。そんな言葉と歌がじわっと会場に広がって、後半からのどんちゃん騒ぎへ見事に繋がっていく。この日のイベントのタイトル同様に、SFUの音楽こそがまさに闇鍋だと思っている。世界中の様々な場所に出かけては、ご当地ソングをしっかりと咀嚼し、バンドの血肉と化してきた。それでいて、バンドとしての軸は全くぶれない。SFUの音がいつも鳴っていた。そのバンドの軸というものが、ついに姿を曝け出そうとしているのかもしれない。新曲達の端々から感じたのはそういうことだ。中川は決して大げさなことを言葉にするわけではないが、実に素直な言葉を紡ぎだすようになった。歌に対して最短距離を見つめているかのよう。より、受け皿が大きなものになってきているのは間違いない。6月にはシングル盤をリリース。そして、年内にドロップされるアルバムには希望を託しても良いぐらいの充実を聞くことができそうだ。
この日、曽我部恵一を聞いていて思ったのだが、彼は非常に素直に歌を作る人だ。SFUはそれに比べると、少なくとも素直とは言い切れないなとも思った。(彼らからすると素直なのかもしれないが)それは、彼らの思考するものの違いだろうし、置かれている環境も違うからだろう。それでも、感じるは、同じようなことだと。彼らぐらい長く表現者としてのキャリア重ねていれば、見てきたことも、見えてくるものも沢山あるだろう。だからこそ、本当に大切なことを言葉に、歌にできているのだと。それは曽我部にとっては「愛」という言葉なのだろうし、中川にとっては「フリー・チベット」という言葉なのだろう。キャリアを重ねようが、枯れない気持ちと、ますます研ぎ澄まされていく音楽への感性と攻撃性と包容力。とにかく、彼らのような表現者が、これからどんな表現を見せてくれるのか。そこに幸福が待っているだろうと確信をした一夜であった。ベテランなんて言葉は全く似合わない。
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report by sakamoto and photos by hanasan
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